「ラベルの色」で鮮度がわかる 食品ロスを減らすスマートラベルがスペインで誕生

食品ロスを減らすスペイン発のスマートラベルを手にする3人の若手起業家

Photo by The EPO

スペインの若手起業家が、食品の鮮度をリアルタイムで知らせるスマートラベルを開発した。細菌の増殖を検知すると色が変化する仕組みで、食品ロスの削減に期待が寄せられている。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2025.09.29

賞味期限に頼らないスマートラベル 鮮度を可視化

食品ロスを減らすスペイン発のスマートラベルを手にする3人の若手起業家

Photo by The EPO

世界では毎年、膨大な量の食品が廃棄されている。EUだけでも年間5,900万トン、1人あたりでは132キロにものぼる。その原因の一つが、「まだ食べられるかどうかわからない」という判断の難しさだ。本来なら食べられる食品が早々に廃棄され、環境負荷や経済的損失につながっている。

この課題に挑んだのが、ピラール・グラナド、パブロ・ソサ・ドミンゲス、ルイス・チメノのスペインの若手起業家3人。彼らは、食品の鮮度をリアルタイムで可視化する「スマートラベル」を共同で開発した。

スマートラベルは、生分解性のポリマーに特殊なバイオセンサーを組み込んでいる。細菌の増殖で放出される化合物に反応する仕組みだ。ラベルは、透明なら安全、黒なら腐敗という具合に鮮度に応じて色が変化し、消費者にリアルタイムで表示する。従来の消費期限や賞味期限とは異なるため、食品の安全性をより正確に把握できる。

また、スマートラベルは、肉、魚、野菜、果物など幅広い食品に対応。青果では熟れ具合も表示される。そのため、まだ食べられるものが早々に廃棄されるのを防ぎ、もっともおいしく食べられるタイミングを知ることもできるのだ。

【最新】食品ロス世界ランキング 日本の順位と世界各国の現状とは

関連記事

きっかけは実体験から 食品の安全性を自ら判断するために

食品ロスを減らすスペイン発のスマートラベルを手にする3人の若手起業家

Photo by The EPO

3人がこのアイデアを思いついたきっかけは、大学時代の出来事だった。冷蔵庫に入っていた肉の見た目と匂いが怪しかったものの、仲間の一人が食べてみたところ何事もなかった。そこから「誰でも直感的に安全性を判断できる仕組みがあれば、食品ロスを防げるのではないか」と考えた。

2019年には、自らの会社「Oscillum(オスシルム)」を設立。以降、イノベーションセンターなどからの資金援助を受けて成長してきた。

さらに彼らは、スマートラベルによって食品廃棄や環境負荷を減らすとともに、インフラが整っていない地域での食中毒防止にもつなげたいと考えている。この技術によって、より安全で持続可能なサプライチェーンを実現する考えだ。

人と環境に利益をもたらす解決策へ

食品ロスを減らすスペイン発スマートラベルの「Oscillum(オスシルム)」

「ヤング・インベンターズ賞」を受賞。

彼らの取り組みは高く評価され、2025年6月には欧州特許庁(EPO)主催の「ヤング・インベンターズ賞」でピープルズチョイス賞を受賞した。彼らが開発したスマートラベルは、食品廃棄という世界的な課題に対して、誰もが使える現実的な解決策を提示している。将来的には、人にも環境にも利益をもたらすツールになるかもしれない。

現在Oscillumは、食品の鮮度を可視化するだけでなく、食品そのものに働きかけて鮮度を長持ちさせる「アクティブパッケージング」の研究にも取り組んでいる。パッケージ自体が食品の鮮度を保つ働きをすれば、食品ロスの削減効果はさらに大きくなるだろう。小売業者にとっては損失削減につながり、消費者にとっては購入した食品に対する安心感を得ることができる。

「もったいない」を解決する道具として期待されるスマートラベル。スペイン発の挑戦は、私たちの食生活をより安心で持続可能なものに変えるヒントになり得る。

※参考
The Spanish innovators fighting food waste – and food-poisoning – with smart labels|euro news
Spanish inventors Granado, Sosa and Chimeno named People’s Choice winners at the Young Inventors Prize 2025 for smart labels reducing food waste|European Patent Office

※掲載している情報は、2025年9月29日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends