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フランス・パリの名門校、パリ政治学院(Sciences Po)が、気候変動を専門に学ぶ大学院「パリ・クライメート・スクール」を新設した。持続可能な社会を目指し、社会や経済の構造変革を体系的に学び、ニーズが高まるこの分野のプロフェッショナルを育成する。
Ouchi_Seiko
ライター
フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。
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フランスの名門校、パリ政治学院(Sciences Po)が、気候変動分野に特化した新たな大学院課程「パリ・クライメイト・スクール(Paris Climate School)」を立ち上げた。これは、人文・社会科学の視点から環境問題に取り組む、ヨーロッパでも初めての学位だ。気候変動問題に対応できる、次世代のリーダーを育てることを目的としている。
1878年に設立されたパリ政治学院は、パリの人文・社会科学分野ではもっとも入学が難しい学校の一つとされている。そんな中で新設されるパリ・クライメイト・スクールは、気候変動の進行とともに高まる社会や経済の構造変革に関する学際的知識のニーズに応える取り組みだという。
カリキュラムの設計には、同校の学長であり欧州気候財団のCEOでもある、ローレンス・テュビアナ氏ら30名以上の専門家が参加。学びと交流の拠点として、政治・経済・法律・社会の観点から、環境問題を分析する能力を育んでいく。
パリ・クライメイト・スクールの代表的なカリキュラムである「エコロジカル・トランジション・リスク・ガバナンス修士課程」では、2年間すべての講義が英語で行われる。学生たちはここで、気候変動や生態リスクを体系的に学ぶとともに、複雑な環境に対応する意思決定力も身につける。
さらにカリキュラムには講義だけでなく、政策・危機管理ワークショップや現地調査、外部機関との連携といった実践的学習も含まれる。2026年の第一期生は100人が入学し、2028年に修了する予定だ。
今回の新設にあたり、ローレンス・テュビアナ学長は「地球と社会の未来にとって極めて重要な時期に、この新プログラムを立ち上げられることを光栄に思う」とメッセージ。同校のパンフレットで「環境危機に直面するいま、異なる視点で考え行動できる新世代のリーダーを育成することが不可欠だ」と伝えている。
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2024年は観測史上もっとも暑い年で、地球の平均気温はパリ協定の目標である1.5℃を超えた。こうした危機に対して、技術的な対策だけでなく、社会や政治の仕組みそのものを見直す視点が欠かせない。しかし、環境分野の研究のうち、人文・社会科学が担う割合はわずか0.18%にとどまっているのが現実だという。
このような課題に正面から向き合うパリ・クライメイト・スクール。今後はパリを起点に、気候変動のプロフェッショナルを育てる場、そしてそのような人々が集まる交流の場として位置づけられるだろう。
環境問題を一部の専門領域に閉じ込めず、社会全体の課題としてとらえる姿勢が注目される。
※参考
Sciences Po Launches the Paris Climate School, the First European School Dedicated to Ecological Transition|Sciences Po
Sciences Po – Paris Climate School|Lafayette Fellowship
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