Photo by CARBIOS
裁断くずや繊維廃棄物を再生したリサイクルポリエステル100%のTシャツが生まれた。ペットボトルを原料にするのではなく、「繊維から繊維」のリサイクルを実現。フランスのカルビオス社が開発し、パタゴニア、プーマなどの複数の企業によるコンソーシアムが発表した。
Ouchi_Seiko
ライター
フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。
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フランスのバイオテクノロジー企業であるカルビオス社は、酵素分解技術を活用した「繊維to繊維」のリサイクル技術を開発。石油由来のポリエステルと同等の強度と耐久性を持つ、繊維を原料としたリサイクルポリエステル100%のTシャツの製造に成功した。
この取り組みは、ペットボトルのリサイクルではなく、ポリエステル繊維をリサイクルして再び新たな衣料品に再生する「繊維to繊維」と呼ばれるもの。「繊維to繊維」のリサイクルは非常に難しく、世界では現在、リサイクル繊維のうち古着を原料に再生したものはわずか1%未満と言われている。
カルビオス社の今回の技術はこの状況を打開し、不要になった衣類を資源として再利用する革新的な技術としても注目されている。
今回カルビオス社が製造したTシャツには、工場で出た余剰生地のほか、アウトドアウェアブランドのパタゴニア、スポーツ用品大手のプーマ、フランスのスキー用品メーカーのサロモンなどの提携企業から提供された裁断くずが使用されている。
リサイクルポリエステルは普及しているが、ほとんどがペットボトルをリサイクルしたものだ。しかし、世界のペットボトルのリサイクル率は約30%にとどまっているうえ、製品の品質を保つためには、バージンプラスチックを一部混ぜる必要があった。
さらに、回収された繊維くずの多くは、綿やポリウレタンなどの混紡素材や、防水加工、染料などが多く使用されており、従来のリサイクル方法では再利用が難しいとされていた。
カルビオス社のバイオリサイクル技術では、ポリエステルを酵素でモノマー(最小単位)まで分解し、石油由来のポリエステルと同等の品質を持つリサイクルポリエステルとして利用できるという。
今回の原料には、混紡素材やさまざまな加工が施された素材、染料が含まれていたが、白い無地のTシャツが完成した。混合色や色物の繊維廃棄物からもリサイクル可能であるということだ。
また、石油を原料としないため、二酸化炭素の排出量削減や、繊維廃棄物の焼却・埋め立て処分の回避といった環境面でのメリットもある。
カルビオス社は現在、2026年の本格稼働を目指して、世界初となる大規模工場の建設をフランス国内ですすめている。当初はペットボトルや食品トレイのリサイクルに重点をおくというが、近いうちにポリエステル繊維にも拡大したい考えで、繊維の循環システムには提携企業も賛同している。
そんなカルビオス社は、繊維にとどまらず、リサイクルが困難とされてきた他素材への応用も模索中だという。とくに力を入れているのは、船舶や航空機に使用されているガラス繊維のリサイクル。現時点では、ガラス繊維廃棄物のほとんどが焼却処分されており、有効な再利用手段は確立されていない。この分野においても、カルビオス社の技術が新たな可能性を切り開くことが期待されている。
主に先進国を中心に、次々と新しい衣類がつくられ、不要になると処分されているいま。繊維の循環を目指す「Fiber to Fiber」が、持続可能な未来に向けた力強い一歩となることは間違いない。そして、私たちは「本当に必要なものだけを買う」という選択肢をいつも忘れてはならないだろう。
※参考
French ‘revolution’: first T-shirt from 100% recycled polyester|Euro Weekly News
The world’s first 100% “fiber-to-fiber” biorecycled clothing unveiled by multi-brand consortium: CARBIOS, On, Patagonia, PUMA, PVH Corp. and Salomon|CARBIOS
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