賞味期限が近い商品を無料に 食品ロス削減を目指す英大手スーパー・テスコが開始

テスコ店内の割引品コーナー

Photo by Tesco

イギリスのスーパーでは、賞味期限が迫った食品を値引き販売したり、チャリティ団体に提供したりするなど、可能な限り廃棄しないための取り組みが行われてきた。しかし食品廃棄量の削減は思うように進んでいない現状にあった。そこで「Tesco(テスコ)」では、賞味期限が近い商品を無料にする。

Kojiro Nishida

編集者・ライター

イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。

2025.03.26
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夜9時30分以降、対象商品が無料に

テスコで働く従業員

Photo by Tesco

イギリスの大手スーパーマーケット「テスコ」は、食品ロスを削減するため、賞味期限が近い食品を無料で消費者に提供する新たな取り組みを開始する。

テスコでは現在、賞味期限が近くなった商品には値引きの印である「黄色いステッカー」を貼り付け、最大で90%オフまで価格を下げて販売しているが、今回発表された新たな取り組みでは、閉店間際の午後9時30分以降、対象商品が完全に無料になるという。

2025年中に食品廃棄量50%削減を目指す

テスコの食料寄付

Photo by Tesco

2050年までにネットゼロ(温室効果ガス排出ゼロ)達成を目標に掲げるテスコは、まず2025年までに食品廃棄を50%削減することを目指してきた。しかし、2017年から2023年の間に削減された食品廃棄量は18%にとどまっており、この時点での目標45%には大きく届いていない。

地域のフードバンクやチャリティ団体と連携し、​2016年以降だけでも1億6千万食分もの食料を地域社会に提供しているが、それでも2023年には3万5千トン以上の食品が廃棄されていたことも報告されている。そのため、2025年中に食品廃棄量50%削減の目標を達成するために、この取り組みに期待が高まっているのだ。

食品の無料提供は、少しでも出費を抑えたい消費者にとっても嬉しいニュースだ。イギリスでは近年、物価高の影響から値引きされた食品の需要が急増している。バークレイズ銀行が2023年に行った調査によれば、イギリスの約3分の2の世帯が値引き商品を購入していることが明らかになっている。

一部店舗でスタート 全国展開も視野に

テスコエクスプレスの店舗外観

Photo by Tesco

賞味期限が迫り無料になる食品は、店で働くスタッフが優先的に手に入れられる。そしてその次にチャリティ団体などに提供され、最終的に残ったものが、閉店前の午後9時30分以降に、店先で一般客に提供される仕組みだ。

まずは一部の「テスコ・エクスプレス」(同社が都市部に展開するコンビニエンスストアのような小型の店舗)にて試験的に実施され、いずれ全国的に広がっていく可能性があるという。

消費者に商品を“完全無料”で提供するという革新的なこの取り組み。物価高が続くイギリスにおいては消費者にも大きなメリットをもたらすことで注目され、他社のスーパーマーケットも類似の施策を打ち出してくることが期待される。

※参考
Tesco to give shoppers free food to meet net zero targets|The Telegraph
Food Waste Report 2024|Tesco
Tesco fires contractor as food waste scandal sparks investigation|The Grocer

※掲載している情報は、2025年3月26日時点のものです。

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