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デンマークのコペンハーゲンにあるノードヘブン地区は、世界初の「5分都市」とされ、生活に必要な施設やレジャースポットが400メートル圏内にある。また建設されるすべての建物は、社会的、経済的、環境的影響を考慮しなければならないという。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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デンマークの首都コペンハーゲン中央駅から、地下鉄でわずか15分のところにあるノードヘブン地区。かつては貨物船やコンテナが並ぶ工業地区だったが、現在、世界初の「5分都市」として注目されている。
ノードヘブン・プロジェクトが完成するのは2060年だが、主要エリアはすでに完成し、地元の人々や観光客でにぎわっている。
「5分都市」という名前の通り、ノードヘブン地区では、学校や遊び場、企業や娯楽スポットなど、生活に必要なものがすべて徒歩400メートル圏内に配置され、あらゆるところに5分以内でアクセスできるように設計されている。
通勤にかかる時間を最小限に抑え、オフィスへ散歩に行く前に朝のワークアウトをしたり、お昼にカフェでランチをしたり、港でひと泳ぎしたり、子どもを遊び場に連れて行ったり。遠出する必要がないため、自宅での時間をしっかり確保できるのだ。サイクリングロードや地下鉄もあり、ほとんど車を使わないライフスタイルが推奨されているという。
ノードヘブン地区にとって、持続可能性とはエネルギー消費を削減することだけではない。この地区に建てられる建物は、社会的、経済的、環境的影響についても考慮されている。たとえば、この街でもっとも新しい劇場Big Bio Cinemaは、万が一建物を取り壊す必要が生じた場合に備えて、アルミニウムなどのリサイクル可能な材料で建てられている。
さらに、古い建物を積極的に再利用している。たとえば1918年に建てられた倉庫のAudo Houseは現在、ブティックホテル、コンセプトストア、カフェになっている。道路を挟んで向かい側にある食品スーパーマーケットMENYは 、かつては銃を製造する工場だった。この建物は保護指定されているため、MENYの壁や窓、天井は、第二次世界大戦時の銃工場と同じものになっている。
2023年にノードヘブン地区に引っ越してきたある女性は、「40年間都心に住んでいたので、車の音が聞こえないのは新鮮です。どの住宅地からも海辺が近く、平和で新鮮な空気が感じられます。甥っ子は、港で泳いだら歩いて家に戻り、シャワーを浴びてからウォーターフロントに戻り、涼しいカフェでコーヒーを楽しむことができることに驚いています。すごいでしょう?」と語る。
韓国のソウルをはじめ、世界には「10分都市」がいくつか開発されているが、ノードヘブン地区が掲げる「5分都市」は唯一無二の野心的なプロジェクトであるといえる。2060年にノードヘブンのプロジェクトが完成するころには、新たな「5分都市」が世界中で増えているかもしれない。
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