ODA(政府開発援助)とは? ODA拠出額ランキングや成功事例も紹介

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先進国が、発展途上国に対して行う支援のひとつが「ODA(政府開発援助)」である。この記事ではODAについて解説し、ODA拠出額ランキングやODAの成功事例なども紹介する。

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2024.11.17

ODA(政府開発援助)とは

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ODAは政府開発援助(Official Development Assistance)の略称で、主に先進国が発展途上国の経済・社会開発を支援するための公的な資金援助、技術提供を行うことを指す。

ODAは、OECD(経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)によって以下のように定義されている。
・政府または政府機関によって供与されるものであること
・開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たる目的としていること
・資金協力は、その供与条件のグラント・エレメントが国・機関別の設定基準を満たしていること(※1、※2)

日本におけるODAの歴史と背景

戦後、日本は太平洋戦争の戦争賠償としてフィリピン、インドネシア、ビルマ(現在のミャンマー)などに支払いを行い、各国との関係改善を図った。この賠償を通じた協力が、日本のODAの原型となる。

1954年に、1950年に提案されたアジア太平洋地域の国々の経済社会の発展を支援する協力機構「コロンボ・プラン」に加盟したことが、日本のODAのはじまりだ。このプランでアジア諸国への技術協力を開始した。

1960〜1980年代には青年海外協力隊が発足しJICAが設立され、日本のODAの拡充と多様化が進むこととなった。1990年代に入ると冷戦が終結、環境などの地球規模の課題に焦点があたるようになり、1992年にODA大綱が策定。

21世紀に入り、ODAは国連が掲げた「ミレニアム開発目標」の達成に向けた支援へと重点が移っていった。2015年には持続可能な開発のための2030アジェンダが採択され、日本もこれに沿った支援を行っている。(※3、※4)

ODAの目的

ODAの目的は、開発途上国の経済や社会の発展、国民の福祉向上、民生の安定に協力することである。また日本におけるODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、我が国の安全と繁栄を確保することと「政府開発援助大綱」に記されている。(※5)

主な支援分野と対象国

主な支援分野には、保健・医療、質の高いインフラ、人間の安全保障、質の高い教育などがある。(※6)

ODAの対象となる受取国は、OECD・DACが定期的に公表するDACリストに掲載された国である。DACリストに掲載されている国には、アフガニスタン、コンゴ、ラオス、ネパール、ルワンダ、南スーダン、タンザニアなどがある。(※7)

発展途上国への援助の重要性

発展途上国の多くは、貧困状態に陥っている。こうした国では十分な食料や飲み水を確保できず、医療や教育を受けることができていない。このような問題を解決するために、ODAによる発展途上国への援助が必要である。

また、ODAは日本と発展途上国との良好な関係構築に寄与する。支援を通じて築かれた信頼関係は、将来的な貿易や投資関係の強化につながるほか、国際的な影響力を高めることからODAは重要であるといえる。(※8)

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ODAの主な種類と形態

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ODAの支援形態は大きく2つに分けられる。それぞれを解説しよう。

二国間援助

二国間援助は、援助拠出国が援助受取国との契約にもとづき拠出する援助のことだ。二国間援助には、技術協力や無償資金協力を行う「贈与」と、有償で資金協力を行う「借款(有償資金協力)」がある。(※9)

多国間援助

多国間援助は、援助拠出国が国際機関に拠出・出資する資金のうち、開発途上国・地域の経済開発や福祉の向上に向けられる援助方法だ。国際機関には、国連児童基金(UNICEF)や国連開発計画(UNDP)への拠出や世界銀行などがある。(※10)

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ODAの運営・実施の仕組み

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ここでは、ODAの仕組みと実施体制について説明する。

ODA実施のプロセスと関係機関

二国間援助の実施のプロセスを紹介する。まず、開発途上国からの要請を踏まえ、現地の大使館やJICA等の関係者での検討が行われる。

無償資金協力、有償資金協力の場合、調査案件の選定、外部有識者から構成される開発協力適正会議における協議、協力準備調査の実施、財務当局との議論等のプロセスを経て閣議決定される。その後、受取国政府と国際約束を締結して実施する。

技術協力の場合は、採択案件の選定後、受取国政府と国際約束を締結する。その後、JICAが事業の詳細計画を策定するための調査を行い実施する。(※11)

JICAの役割と具体的な活動内容

JICAは開発援助機関であり、日本の二国間援助の中核を担っている。世界の約150の国と地域で、技術協力、有償資金協力、無償資金協力、国際緊急援助といった支援を行う。

技術協力では、専門家の派遣や日本での研修などを行い、開発途上国の社会・経済開発の担い手となる人材育成や制度づくり、問題解決能力の向上を支援している。無償資金協力では返済義務を課さずに資金を提供し、社会・経済開発のために必要な施設の整備や資機材の調達を支援している。(※11)

二国間援助と多国間援助の違い

二国間援助と多国間援助には違いがある。二国間援助では開発途上国や地域を技術協力や資金協力によって直接支援するが、多国間援助の場合は国際機関を通して援助が行われる。(※10)

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日本におけるODAの現状

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日本が行うODAの特性や戦略、政府の方針、日本が重点を置いている支援分野について解説する。

ODA実績と現状

2023年の日本のODA実績は、米ドルベースで196億84万ドル、円ベースでは2兆7,540億円であった。これは前年比で米ドルベースでは12.0%増、円ベースでは19.7%増となっている。内訳は、二国間援助が全体の約8割、国際機関に対するODAが約2割弱であった。(※12、※13)

主な支援対象国と分野

主な支援対象国には、アジアの国々、アフリカや中東などがある。具体的にはインド、ベトナム、イラク、バングラデシュ、ミャンマーなどだ。

日本が重点を置いている支援分野には、質の高いインフラ、万人のための質の高い教育、人道支援、地球環境・気候変動などがある。(※6、※14)

世界におけるODA拠出額ランキングとその傾向

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世界におけるODA拠出額ランキングと、その傾向について解説する。

ODA拠出額ランキング

以下では、外務省による政府開発援助(ODA)総額の多い国ランキングを紹介する。ランキングは、2023年の実績贈与相当額で暫定値となっている。(※15)

なお、2017年までは純額方式で計上していたが、 2018年から、贈与相当額計上方式で計上している。(※16)

順位国名2023年(暫定値)
米国660億4,000万ドル
ドイツ366億8,000万ドル
日本196億0,000万ドル
英国191億1,000万ドル
フランス154億3,000万ドル
カナダ80億7,000万ドル
オランダ73億6,000万ドル
イタリア60億1,000万ドル
スウェーデン56億1,000万ドル
10ノルウェー55億5,000万ドル

世界のODA傾向

アジアでは日本が唯一3位にランクインしており、1位の米国、6位のカナダのほかはヨーロッパ諸国が並んでいる。また、ほとんどの国で年々拠出額が増加傾向にある。(※16)

ODAの成功事例

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ODAが効果を発揮した具体的な成功事例を紹介する。

インフラ整備|タイ

日本政府は、タイの東部臨海地域に、資金協力によるインフラ建設と技術協力などを組み合わせた支援をおこなった。これにより港湾、工業団地、水源開発などのインフラ整備が進み、多くの日本企業がタイに進出。同地域は一大工業団地に成長し、タイ経済を牽引している。(※17)

ポリオ撲滅事業|パキスタン

ポリオ未撲滅国2か国のひとつであるパキスタンに対する、ポリオ対策のためのワクチンの調達や、円滑に接種が受けられるようポリオワクチン接種キャンペーン実施を強化したプロジェクトだ。2023年の報告症例数は2022年に比べて少なくなっており、ポリオを根絶させるべく事業を継続している。(※18)

「みんなの学校」プロジェクト|アフリカ

アフリカをはじめとする途上国では、学齢期の多くの子どもが最低限の読解力や算数スキルを習得できていない現状があった。この状況を、学校、保護者、地域社会と協働して子どもの学習環境を改善するプロジェクトが「みんなの学校」である。2004年にニジェールではじまったこのプロジェクトはアフリカ9か国・約7万校の小中学校に広がり、各国の就学率向上、子どもの読み書き・計算スキルの向上に貢献している。(※19)

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ODAの課題

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ODAは素晴らしい援助であるが、課題もいくつかある。その課題について解説する。

効果の持続性

ODAの課題のひとつが、効果の持続性だ。援助が一時的な成果に終わらず、発展途上国が自立して持続的な発展を遂げるための長期的な効果が維持されなければならない。これには、現地人材の教育や技術継承が不可欠だ。

現地ニーズとのズレ

ODAプロジェクトが現地のニーズに合っていない場合、たとえプロジェクトが成功しても、住民にとって利用しにくい施設やサービスとなる。そうならないためにも、プロジェクトを計画する段階から現地の人々と協力し、ニーズに基づく支援内容を設定することが重要である。(※20)

援助への依存の問題

ODAが長期間にわたって実施されることで、受取国が援助に依存し、自立した経済成長が困難になるリスクがある。(※21)

これからのODAの展望

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2030年の達成を目指すSDGsに沿った支援が、ODAの中心的なテーマとなっている。とくに貧困削減、教育、医療、環境保護など多岐にわたる課題への対応が求められる。ODAを通じて、これらの分野で発展途上国が持続可能な成長を実現できるよう、長期的な支援体制が期待される。

平和構築に貢献するODA

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ODAは、発展途上国のインフラ整備や生活改善などに資金や技術を提供し、地域の安定や国際社会全体の平和構築に貢献している。日本にとっても、ODAは国際的な信頼を高める手段であり、相手国の発展を支援することで長期的な関係構築にもつながる。よって、ODAは発展途上国と支援国の双方にとって重要な制度といえるだろう。

※掲載している情報は、2024年11月17日時点のものです。

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