Photo by Brewgooder
スコットランドのビールメーカー「ブリューグッダー」は、サステナブルな作物「フォニオ」を使ったビールの販売を開始した。アフリカ・ギニアのフォニオ栽培農家と農協、周辺コミュニティの成長を持続的に支えるため、サプライチェーンを構築。ビールを通じた社会貢献活動を続けている。
Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。
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Photo by Brewgooder
2024年8月、英スコットランドのビールメーカー「ブリューグッダー(Brewgooder)」は、「フォニオ」と呼ばれる古代穀物を原料に使用したビール「フォニオ・セッション・IPA*」を定番商品としてリリースした。
フォニオを使用したビールはこれまで期間限定で販売されたことはあったが、通年展開されるのはこれが世界初となる。同社はこれにより、産地であるアフリカでの持続可能な農業とフェアトレードへの貢献を目指す。
「ビールでよりよい世界をつくる」というビジョンを掲げ、2016年にアラン・マホン氏が創業したブリューグッダー。きっかけは大学卒業後にネパールを訪れていたマホン氏が、現地で口にした不衛生な水から寄生虫に感染したことだった。
きれいな飲み水に誰もがアクセスできる世界を目指し、ビールの売上の一部を充てた「ブリューグッダー基金(Brewgooder Foundation)」を通じて、世界各地で飲み水の提供を行ってきた同社。2018年にはスコットランドのビールメーカーとして初めてB Corp認証を取得し、環境や社会貢献を重視する企業としての地位を確立している。
*IPA:インディア・ペール・エールの略。ホップを多く使っているスタイルのビール。
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ブリューグッダーは、フォニオを使ったビール醸造を通して、フェアトレードでアフリカを支援したい考えだ。というのも、フォニオを使用したビールを安定生産するためには、アフリカでのサプライチェーンの構築が必要不可欠。
そこでブリューグッダーは、ギニアを拠点とするフォニオ農協と連携し6カ月かけて新たなサプライチェーンを構築。これによってフォニオの生産量を現在の10倍まで引き上げ、フェアトレードで農協に属する農家だけでなく、彼らのコミュニティ全体にも利益をもたらすことが期待されている。
サプライチェーンの今後の成長しだいでは、将来的には数百の農家と周辺の地域社会にも影響を与えることが予測される。
特筆すべきは、今回新しく整備されたこのフォニオのサプライチェーンは「オープン・グレイン」と名付けられ、フォニオの使用を検討している世界中のビールメーカーや企業であれば誰でも利用することができるという点にある。業界全体でフォニオの生産・活用を促進し、アフリカの農家や地域により大きなインパクトを与えることが狙いだ。
Photo by Brewgooder
古代エジプトで栽培されており、その歴史は5000年以上遡るとも言われる穀物・フォニオ。
乾燥に強いため砂地や酸性の土壌でも育ち、根には砂漠化の拡大を防ぐ効果もあるとされる。さらにはグルテンフリーかつ栄養価が高く、鉄分や亜鉛、マグネシウムなどのミネラル、植物性の栄養素を含むスーパーフードで、WWF(世界自然保護基金)が2019年に発表した『未来の食材50』に選ばれている注目のサステナブル食材でもある。
世界で最も成長スピードが早い穀物のひとつで、2か月ほどあれば収穫が可能。干ばつに強く、“怠け者の農作物”と呼ばれるほど栽培も簡単なのだという。
「フォニオ・セッション・IPA」では、原料の約10%にフォニオを使用。できあがったビールには、砂糖漬けにしたオレンジ、チェリー、ゲヴュルツトラミネール種のブドウのような風味がするという。マホン氏は「このビールが消費者にとってフォニオを知るきっかけになれば」と話す。
英国のスーパー各社で販売されているほか、航空会社ブリティッシュ・エアウェイズの機内でも楽しめる。
※参考
Brewgooder
Scotland’s Brewgooder Releases Full-Time Fonio Beer|Forbes
50 foods for healthier people and a healthier planet, 2019|WWF & Knorr
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