「グローカル」とは、「グローバル×ローカル」で生まれた言葉で、国際的に考えて地域で行動することを意味する。最近、注目を集めるグローカル企業はどのような取り組みを行い、なぜいま求められているのか。その具体的事例とグローカル企業に必要とされる人材になるためのスキルや知識を紹介しよう。
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「グローカル」とは、「グローバル(global)」と「ローカル(local)」をかけ合わせた造語で、日本で生まれた。意味は「国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域の視点で、さまざまな問題を捉えていこうとする考え方。グローカリズム」(大辞林より)となる。
世界規模で事業を展開する「グローバル企業」と、地域に根差したサービスを提供する「ローカル企業」のいい点を取った新しいビジネス様式=「グローカル」ということになる。
地球規模の大きな視野を持ちながらも、それぞれの地域の風習や環境などにも配慮することから、都市開発や環境問題などの領域でも、概念として広く使わるようになってきている。
「グローカル企業」とは、グローカルな事業や取り組みを実践する企業を指す。海外展開するだけではなく、世界各地の文化や考えを事業のアイデアに取り入れ、商品開発等を行うといった取り組みを行っている。
グローバルな考えや経験を持ち、世界的な視点を大切にしながら、地域社会の発展に貢献する人材を「グローカル人材」という。世界規模で活躍する「グローバル人材」に対して、「グローカル人材」はグローバルな考えを持ちながら地域に貢献する点で異なる。
「グローバル化」は以前より指摘されてきたが、ではなぜ今「グローカル」が注目されているのか?それは、インターネットの普及により、人々が以前よりも容易に世界の情勢や文化に触れられるようになった一方で、今後はそのような多様性をより認める社会が求められている。そこで、世界的な視点を持ち合わせながら、地域社会に即して適切に貢献することがますます必要となっているのだ。
また、日本は少子高齢化が進み労働人口の減少が著しい。日本の経済やビジネスが発展していくためには、日本のみならず世界での事業展開も視野に入れなければならない。そこではグローカルな視点が求められるだろう。
グローカル企業の代表例として、スウェーデンの家具メーカー「IKEA」を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。
日本に進出する際、日本家屋の間取りなどを考慮して、いかに自社の製品が日本の暮らしにマッチするか試行錯誤を繰り返したという。それが功を奏し、国内で誰もが知る企業となったのはご承知のとおりだ。
一方、イオンは我が国を代表するグローカル企業のひとつ。2011年にグローカル経営を掲げ、中国やアセアン、日本にそれぞれ本社を構えたほか、2017年からは脱炭素や持続可能な調達方針を打ち出すなどしてサステナブルな経営に乗り出している(イオンレポート2018より)。
世界的アウトドアブランド「Patagonia」は、熱心なエコフレンドリー企業として知られる。自社ブランド製品へオーガニックやリサイクル素材を徹底して使用することで、世界規模の気候変動へのアクションを続け、多くのファンを獲得している。
同時に、公式サイトで世界各地でグローカルな活動をする団体や企業、個人を発信。そこで、東京都桧原村の林業会社「東京チェンソーズ」の企業理念や事業内容についても紹介している(※1)。
グローカルは、地域住民に受け入れられやすいというメリットがある。また企業にとっては、ビジネスを大きく発展させることにつながり、さらに現地の雇用を創出することにもつながる。地域社会にとっても、企業にとっても、双方にメリットがあるだろう。
一方で、グローバルな経験や考えを持ちながら地域社会に貢献できるグローカル人材は、決して多いとは言えず、そのような人材の確保がなかなか難しい。グローカル人材を育てていくためにも、時間とコストが必要だ。
地球規模で販路を拡大し成長したグローバリズムは、利益の追求と引き換えに環境や格差の問題などを浮き彫りにした。
これらの反省から、前述のイオンのようにグローカルな取り組みに踏み出す企業は増えているのは確かだ。そこで求められるのが、地球規模の視野を持ち、地域に根付いた活動ができる「グローカル人材」。各地で、人材を育成する取り組みも始まっている。
たとえば、魅力的な地域性や文化を持ち、世界各国との接点も多い京都。産学公民が手を繋ぎ、グローカル人材を育てるプラットフォームとなるNPO法人「グローカル人材開発センター」を設立。大学教育プログラムの開発や、セミナーなどを開催している(※2)。
また、「グローカルデザインスクール」では、農業を自然科学や人文学、科学技術、環境、経営を総合的に学べるリベラルアーツと捉え、不確実な時代を生き抜く人材育成プログラムを提供している(※3)。
広い視野を持つのはもちろん、エシカルかつサステナブルな感性も失わない「グローカル人材」は、これからますます求められていきそうだ。
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