【最新】2023年世界の都市総合力ランキング

シカゴの街並み

Photo by Pedro Lastra on Unsplash

世界の都市総合ランキングをご存じだろうか?世界各国の主要都市を、さまざまな視点から客観的に評価したもので、住みやすさや経済、そのほかあらゆる人間活動の指標となっている。この記事では2023年度の世界の都市ランキングを一覧にし、それぞれの都市がもつ魅力と課題を紹介する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2024.10.31

世界の都市総合力ランキングとは

朝日に照らされる高層ビル

Photo by ben o'bro on Unsplash

「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index, GPCI)」は、国際的な都市間競争において、都市が持つ総合力を評価するランキングである。(※1)

このランキングは、民間のシンクタンク「都市戦略研究所」が2008年から毎年発表している。評価の対象となるのは世界の主要48都市で、経済や文化、居住環境など、さまざまな視点から都市を分析している。GPCIの主な目的は、各都市がどのような強みを持ち、どの分野に課題があるかを明確にすることだ。(※2)

ランキングは6分野、計70の指標で集計

世界の都市総合力ランキングは、以下の6つの分野に基づいて評価される。(※2)

経済:GDPや雇用率、ビジネスのしやすさなど、都市の経済的な活力を測る指標。
研究・開発:研究施設の充実度や技術革新の推進力、大学のレベルなどが評価される。
文化・交流:観光や国際イベントの開催数、文化施設の数など、国際的な交流のしやすさを示す。
居住:住宅の質や生活コスト、治安、住みやすさが評価の基準となる。
環境:都市の緑化や大気の質、環境保護の取り組みが評価される。
交通・アクセス:公共交通の充実度や交通インフラ、国内外へのアクセスのしやすさが評価される。

さらにこれらの指標には合計で70の内訳となる評価項目があり、それぞれに基づき評価された48都市がランク付けされている。

世界の都市総合力ランキング

夜の東京

Photo by Andre Benz on Unsplash

2023年の世界の都市総合ランキングは以下の通りだ。(※2)

順位都市名前年の順番
ロンドン1
ニューヨーク2
東京3
パリ4
シンガポール5
アムステルダム6
ソウル7
ドバイ11
メルボルン9
10ベルリン8
11コペンハーゲン14
12シドニー13
13ウィーン15
14マドリード12
15上海10
16ストックホルム19
17北京17
18香港23
19チューリッヒ18
20フランクフルト21
21ロサンゼルス16
22バルセロナ20
23トロント22
24ブリュッセル26
25シカゴ25
26ジュネーブ31
27サンフランシスコ24
28ダブリン30
29ボストン27
30イスタンブール32
31ヘルシンキ28
32バンクーバー34
33ミラノ29
34モスクワ33
35台北36
36ワシントン35
37大阪37
38バンコク40
39サンパウロ38
40テルアビブ39
41クアラルンプール41
42福岡42
43メキシコ44
44ブエノアイレス43
45ジャカルタ45
46ヨハネスブルグ47
47カイロ46
48ムンバイ48

都市問題とは何? 日本や世界の都市の現状と問題を解説

関連記事

上位7都市は順位変えず、ドバイがトップ10入り

ドバイの街並み

Photo by David Rodrigo on Unsplash

1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位東京、4位パリ、5位シンガポールの上位5都市は2016年から8年連続で順位の変動がない。また、2023年版の世界の都市総合力ランキングでは、前年から上位7都市の順位に変動はなかったが、8位以下にいくつかの注目すべき動きが見られた。

とくにドバイは年々順位を上げており、前年の11位から8位に順位を上げ初めてトップ10入りを果たしている。ドバイは経済的な成長や国際博覧会の開催、コロナ禍による渡航規制の早期解除などで国際的な存在感を強めており、今後もその勢いが期待される。(※3)

またベルリンは前年の8位から10位に、上海は前年10位から15位にランクダウンした。これは他の都市が持つ強みが伸びた一方で、ベルリンと上海の評価が停滞したためである。

ドバイの成長が示すトレンド

ドバイの成長は、とくに「経済」と「文化・交流」の分野で顕著である。近年、国際イベントや観光業の拡大に加えて投資家や企業の誘致に力を入れており、これが世界中からの注目を集めている。(※3)

観光業においては、豪華なリゾートやショッピングモール、国際的なイベントの開催によってさらに魅力を増している。また経済分野では多くの国際企業がドバイに拠点を置くようになり、金融センターとしての地位も向上している。さらに都市インフラの整備も進み、交通・アクセスの面でも高い評価を得ている。これにより、ドバイはビジネス、観光、文化交流の中心地としての確かな地位を築きつつある。

経済分野での強さが際立つニューヨーク

ニューヨークは「経済」と「研究・開発」の分野で圧倒的な力を誇っている。世界中の金融機関や企業の本拠地が集まるウォール街に加え、多くのスタートアップやテクノロジー企業が急成長を遂げている。またニューヨークには多くの研究機関や大学が集まっており、これが「研究・開発」分野での強みにつながっている。

一方で「環境」や「居住」の分野では課題が残っており、居住分野では38位と他の分野と比べて大きく遅れを取っている。このギャップがニューヨークの総合評価に影響を与えているが、それでも経済分野での強さが同都市の魅力を維持している。(※1)

東京の強みと課題

東京は「居住」と「交通・アクセス」の分野での評価が高く、総合3位を維持している。居住コストの安さや利便性の高さが大きな強みとなっており、とくに円安の影響で住宅賃料や物価が他の都市に比べて低いことが評価を上げた。また公共交通機関が整備されており、交通・アクセスの利便性でも高いスコアを得ている。

ただし「経済」分野では10位に順位を下げており、これが今後の東京の成長に影響を与える可能性がある。(※1)GDP成長率や賃金水準の低さが課題となっており、優秀な人材の確保やスタートアップ支援の強化が必要とされている。

【最新】超富裕層が多い国・都市ランキング 日本は世界4位

関連記事

ランキングからみる東京の都市力とは

道路

Photo by Javier Esteban on Unsplash

東京の総合力はバランスが取れており、とくに「住居」と「交通・アクセス」分野での評価が高い。しかし「経済」と「環境」分野では順位を落としており、今後の課題が浮き彫りになっている。(※1)

「住居」と「交通・アクセス」でランクアップ

東京が高く評価されている分野の一つが「住居」である。2022年には11位だったが、2023年には3位まで順位を上げている。この背景には、円安の影響で生活コストが他の主要都市に比べて低くなっていることがある。とくに住宅賃料や物価が相対的に安く、生活利便性が高いと評価された。

また東京は小売店や飲食店が多く、生活環境が整っている点も強みとなっている。「交通・アクセス」も東京の強みの一つで、公共交通機関の利用率が高く、国内への移動が便利だ。とくに鉄道網が発達しており、国内の移動がスムーズに行える。国際空港や高速道路網も整備されているため、ビジネスや観光の観点からもアクセスの良さが評価され、順位が向上した。

「経済」と「環境」は順位を落とす

一方で、東京は「経済」と「環境」分野で順位を落としている。とくに「経済」では10位にまで下落した。原因としてはGDP成長率の低さが指摘されており、東京は世界的な都市競争において経済力の維持に課題を抱えている。賃金水準の低さやスタートアップ支援の不足が弱点となっており、これが優秀な人材の確保に支障をきたしている。

「環境」分野では、都市空間の清潔さやエネルギー効率の向上が求められている。東京は都市の規模が大きく交通量も多いため、環境への負荷が高い。これに対し、都市のエネルギー管理や環境政策が十分に機能していない点が評価を下げる要因となった。

ナイトライフが低評価

東京は、文化・交流の内訳の一つであるナイトライフに関してとくに課題が大きい。実際に世界の都市総合力ランキングでは、ナイトライフの充実度で30位という低い評価を受けている。ロンドンやニューヨークが上位にランクインする中で、東京の夜のエンターテインメントや文化的な活動は、国際的な都市と比較して大きく遅れている。東京の文化・交流を高めるためには、ナイトライフの充実が今後の重要な課題となるだろう。(※4)

持続可能な都市モデル「コンパクトシティ」とは 概要や成功都市を紹介

関連記事

大阪と福岡の結果は

道頓堀

Photo by Glenn Lim on Unsplash

ランキングにおいて、東京以外の日本の都市も注目される。大阪は総合37位、福岡は42位にランクインしている。大阪はとくに「居住」分野で順位を上げており、都市空間の清潔さや交通インフラが評価された。一方で、「経済」と「環境」分野では順位を落としており、GDP成長率の低迷や環境政策の遅れが問題視されている。

福岡は「環境」分野での評価が上昇し、20位にランクインしている。とくに「都市空間の清潔さ」が評価されており、福岡の街並みや住環境が改善されている。しかし「経済」分野では評価が下がり、地域経済の発展には引き続き課題が残っている。(※5)

スマートシティはどのように発展するのか? 期待される効果や国内外の取り組み事例を紹介

関連記事

都市の魅力と課題を発見する世界の都市総合力ランキング

ミラノ

Photo by David Pupăză on Unsplash

2023年の世界の都市総合力ランキングでは、上位の都市に大きな変動はなかったものの、ドバイのように急成長を遂げている都市も見られる。ロンドンやニューヨーク、東京などの大都市は依然として強力な総合力を持っているが、それぞれの都市が抱える課題がわかるのもこのランキングの面白い点だ。今後も都市間の競争が起こるなか、各都市がどのように強みを伸ばし、弱点を克服するかにぜひ注目していきたい。

※掲載している情報は、2024年10月31日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends