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国や地域の経済状況や労働市場を反映する失業率。日本の失業率については、景気の動向と合わせてニュースなどで耳にする機会も多いが、世界各国と比べるとどのような特徴があるのだろうか。この記事では、世界の失業率ランキングとともに、主要国の失業率の比較や日本の失業率の特徴を解説する。
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失業者とは、一定年齢以上のすべての人において「就業者ではない」、「直近の特定の期間に仕事を探す活動を行っている」、「仕事があればすぐに就業できる」の3つを満たしている人のことを指す。(※1)
そして失業率は、労働力人口に占める失業者の割合を指し、国によって算出方法が異なる。主要国では、毎月実施しているILO(国際労働機関)基準に基づく労働力調査の結果から、失業者と労働力人口を把握して失業率を算出している。(※1)
完全失業率とは失業率と同じ意味で、労働力人口に占める完全失業者の割合のことだ。次の式で定義される。(※2)
完全失業率(%) = (完全失業者÷労働力人口) × 100
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世界の失業率はどうなっているのか。IOL統計の「世界の失業率 国別ランキング・推移」を参照し、ランキングを作成した。(※3)(単位:%)
順位 | 国名 | 失業率 |
---|---|---|
1位 | 南アフリカ | 28.84 |
2位 | ジブチ | 26.67 |
3位 | パレスチナ | 24.42 |
4位 | ボツワナ | 23.62 |
5位 | エスワティニ(スワジランド) | 22.64 |
6位 | ガボン | 20.61 |
7位 | コンゴ | 20.48 |
8位 | ナミビア | 19.99 |
9位 | セントビンセント・グレナディーン | 19.55 |
10位 | リビア | 19.30 |
11位 | ソマリア | 19.29 |
12位 | ヨルダン | 19.19 |
13位 | チュニジア | 17.76 |
14位 | イエメン | 17.61 |
15位 | スーダン | 17.59 |
16位 | レソト | 16.75 |
17位 | セントルシア | 15.77 |
18位 | イラク | 15.32 |
19位 | モンテネグロ | 15.25 |
20位 | ルワンダ | 15.08 |
21位 | ハイチ | 14.78 |
22位 | アンゴラ | 14.48 |
23位 | 北マケドニア | 14.43 |
24位 | サントメ・プリンシペ | 14.35 |
25位 | アフガニスタン | 14.10 |
26位 | シリア | 13.81 |
27位 | スペイン | 12.92 |
28位 | 米領ヴァージン諸島 | 12.86 |
29位 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 12.66 |
30位 | アルジェリア | 12.49 |
31位 | 南スーダン | 12.44 |
32位 | カーボヴェルデ | 12.44 |
33位 | ギリシャ | 12.43 |
34位 | ガイアナ | 12.30 |
35位 | 仏領ポリネシア | 11.80 |
36位 | レバノン | 11.75 |
37位 | ジョージア | 11.68 |
38位 | アルバニア | 11.63 |
39位 | コスタリカ | 11.32 |
40位 | ニューカレドニア | 11.03 |
41位 | ネパール | 10.92 |
42位 | モーリタニア | 10.79 |
43位 | コロンビア | 10.55 |
44位 | トルコ | 10.43 |
45位 | バハマ | 10.09 |
46位 | サモア | 10.04 |
47位 | モロッコ | 9.99 |
48位 | ジンバブエ | 9.26 |
49位 | ブラジル | 9.23 |
50位 | イラン | 8.82 |
51位 | セルビア | 8.68 |
52位 | ベリーズ | 8.67 |
53位 | アルメニア | 8.59 |
54位 | 赤道ギニア | 8.58 |
55位 | バルバドス | 8.50 |
56位 | チリ | 8.25 |
57位 | スリナム | 8.23 |
58位 | パナマ | 8.20 |
59位 | 西サハラ | 8.20 |
60位 | イタリア | 8.07 |
61位 | ウルグアイ | 7.87 |
62位 | スウェーデン | 7.39 |
63位 | フランス | 7.31 |
64位 | タジキスタン | 7.00 |
65位 | ホンジュラス | 7.00 |
66位 | クロアチア | 6.96 |
67位 | ラトビア | 6.81 |
68位 | アルゼンチン | 6.81 |
69位 | キプロス | 6.78 |
70位 | パラグアイ | 6.75 |
71位 | フィンランド | 6.72 |
72位 | エジプト | 6.40 |
73位 | 中央アフリカ | 6.34 |
74位 | モーリシャス | 6.32 |
75位 | モンゴル | 6.21 |
76位 | スリランカ | 6.18 |
77位 | スロバキア | 6.14 |
78位 | チャンネル諸島 | 6.03 |
79位 | ポルトガル | 6.01 |
80位 | プエルトリコ | 6.00 |
81位 | エリトリア | 5.97 |
82位 | リトアニア | 5.96 |
83位 | ブータン | 5.95 |
84位 | コモロ | 5.75 |
85位 | アゼルバイジャン | 5.65 |
86位 | ケニア | 5.64 |
87位 | ベネズエラ | 5.62 |
88位 | ルーマニア | 5.61 |
89位 | パキスタン | 5.60 |
90位 | サウジアラビア | 5.59 |
91位 | エストニア | 5.57 |
92位 | グアム | 5.57 |
93位 | ベルギー | 5.56 |
94位 | ギニア | 5.53 |
95位 | ドミニカ共和国 | 5.50 |
96位 | ジャマイカ | 5.50 |
97位 | カナダ | 5.28 |
98位 | バヌアツ | 5.22 |
99位 | マラウイ | 5.11 |
100位 | ブルキナファソ | 5.07 |
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前述した失業率ランキングに基づき、国や地域別にみて特筆すべきポイントを解説する。
失業率上位を占めるのが、南アフリカやジブチ、ボツワナといったアフリカ諸国だ。失業率が高い理由は、若年人口の多さ、不十分な政策、包括的な雇用計画の欠如といわれている。(※4)
ヨーロッパでは、スペインの失業率が高く12.92%で27位となっている。スペインは2009年以降失業率が大幅に上昇しており、なかでも25歳未満の若年層の失業率が急激に上昇している。(※5)
スペインの失業率が高い背景として、労働市場における構造的要因が挙げられる。(※6)
G7のなかではイタリアが最上位で、失業率は8.07%、60位となっている。ただし、イタリアの失業率は2014年を境に減少傾向にある。(※7)
日本の失業率は、2.60%で167位となっている。G7のなかで失業率はいちばん低い。(※3)
南アフリカの失業率は、28.84%と極めて高い。その理由のひとつが、黒人の失業率の高さだ。長年続いていた人種差別政策の影響で十分な教育を受けることができず、雇用者側が求める知識や技能の水準に達していないという指摘がある。(※8)
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失業率に影響を与える要素であり、失業が生まれる原因となるものは「需要不足失業」「摩擦的失業」「構造的失業」の3つに分類される。
需要不足失業は、景気の悪化により需要が減り、その結果生産量も減ることで起こる失業だ。生産量が減れば、企業は人員整理や採用を縮小させる。そうすると、失業者が増える。
摩擦的失業は、求職者が新たに仕事を探す期間に生じる失業である。仕事を探すときには一定の期間がかかるものであり、その間は失業した状態になる。よって、摩擦的失業はどうしても発生してしまう失業といえる。
構造的失業とは、雇用主と求職者の雇用のミスマッチによって生じる失業だ。雇用主は、技能や学歴、年齢、性別、勤務地といった特性を労働者に求めるのに対し、求職者は雇用主が求める特性をもちあわせていないというケースである。
これらの3つの原因により失業が生まれるが、いずれか1つの原因で起こることもあれば、原因が複合して起こることもある。(※9)
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主要国の失業率はどうなっているのか見ていこう。
アメリカの失業率は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した2020年には8.1%であったものの、2022年には3.6%と低下した。アメリカの失業率の特徴としては、若年層の失業率が高く、高齢層の失業率が低い。これは、若年人口の増加率の低下によるものだと考えられている。(※10、※11)
雇用・失業対策として、全国職業サービス制度や、求職者が1か所で職業紹介、失業保険、教育・職業訓練情報、貧困家庭一時扶助などのサービスを受けられるワンストップ・センターが全国に設けられている。(※10)
フランスの失業率は2018年には9.0%であったものの、2022年には7.3%に低下した。(※12)
これは、政府が力を入れている若者の交互訓練契約支援が功を奏した結果とみられる。政府はさらに失業保険改革や労働市場に即した求職者支援を行い、失業率低下を目指している。(※13)
中国の2022年の失業率は4.98%であった。(※3)中国の失業率の特徴は若年失業者が多いことで、大きな社会問題となっている。若年失業者が多い原因は、大卒者と採用企業の希望職種のミスマッチによるものだ。政府は、企業による採用促進や職業教育機関への進学誘導といった対策を講じたものの、抜本的な解決にはなっていないのが現状だ。(※14)
韓国の失業率はピークの2020年には4.0%であったが、2022年には2.9%に低下している。韓国では、若年層(15歳から24歳まで)の失業率が2020年までは10%を超えていたが、2021年には8.5%、2022年には7.1%となり、低下傾向にある。
韓国では雇用創出につながる経済成長力の低下や、人々が頻繁に転職するようになったことをうけて、人材サービスの高度化に注力している。(※15)
イギリスの2022年の失業率は3.7%であった。この数値は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前の水準まで改善している。またイギリスにおいても若年層の失業率は問題となっており、10%台が続いている。政府は若年者雇用対策として、若年雇用プログラムや学校支援サービスなどの支援を行っている。(※16)
カナダの2022年の12月の失業率は5.0%であった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時の2020年5月には13.4%となっていたことから、かなり減少している。カナダの失業率の特徴は、地域によって失業率に差があることだ。大西洋沿岸の各州では6~10%前後の高い失業率であるのに対し、ほかの州では4〜5%となっている。(※17)大西洋沿岸の各州で失業率が高いのは、漁業従事者を中心に失業率が高いことが挙げられる。(※18)
政府は雇用・失業対策として、失業者の所得保障や職業訓練などを盛り込んだ「雇用保険法」を制定している。(※17)
では、日本の失業率はどうなっているのか。推移と特徴を解説しよう。
日本の失業率は、リーマンショック後の2009年7月は5.5%であった。この年の完全失業者数は、過去最高水準の364万人を記録する。しかしそれ以降は減少傾向で推移し、2019年12月には2.2%まで低下した。2020年に入ると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の影響により同年8月に3.0%を超えた。コロナ禍からの経済の回復に伴い、2021年には2.8%、2022年には2.6%、2023年2月は2.6%と低下傾向で推移している、(※19)
日本は主要先進国のなかでも失業率が低い水準で推移している。その理由は、大企業を中心にみられる長期雇用(終身雇用)や年功賃金といった雇用慣行によるものだといわれている。(※20)
また日本の失業率は高年齢層で増加し、相対的に若い年齢層では減少しているのも特徴だ。(※21)海外では若年層の失業が問題となっているが、日本は若年失業率は国際的に低い水準となっている。これは長期雇用を前提とした新規学卒者の一括採用や、スキルのない新規学卒者が卒業後に失業を経ずに就職できることなどが要因だと考えられる。(※20)
日本では失業率改善のために、雇用調整助成金や雇用創出の基金による事業、ハロートレーニングといった対策を取っている。
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対し、雇用の維持を図るための休業、教育訓練、出向に要した費用を国が助成する制度だ。(※22)
雇用創出の基金による事業は、雇用失業情勢が厳しい地域において、離職した失業者等の雇用機会を創出するために、各都道府県に基金を造成する事業である。(※23)
ハロートレーニングは、ハローワークの求職者を対象に、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的制度だ。(※24)
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失業率は、国や地域の経済状況や労働市場を反映している。日本の失業率は他国にくらべ低い水準にあるが、景気や社会情勢の影響により、失業率が上昇する可能性もある。今後、失業率の動向や雇用・失業対策に注目する必要があるだろう。
※1 労働力調査 参考(国際比較)|統計局
※2 第3章 基本的諸概念と用語|統計局
※3 世界の失業率 国別ランキング・推移(ILO)|GLOBAL NOTE
※4 アフリカ、起業家に期待を寄せる|国際連合広報センター
※5 海外情勢報告|厚生労働省
※6 スペイン、イギリスから見た欧州マクロ経済|財務省
※7 失業率 データブック国際労働比較2024|労働政策研究・研修機構
※8 新興国通貨の基礎知識〜南アフリカ|金融先物取引業協会
※9 第2回 失業、原因別に3分類|経済産業研究所
※10 第1章 第2節 アメリカ合衆国(United States of America)労働施策|厚生労働省
※11 第3章 第1節 アメリカの労働市場の特徴と課題|内閣府
※12 失業率 欧米の動向|労働政策研究・研修機構
※13 第2章 第1節 フランス共和国(French Republic)労働施策|厚生労働省
※14 深刻化する中国の若年失業問題 ─大卒者の急増と雇用ミスマッチの拡大が主因─|日本総研
※15 第3章 第2節 大韓民国 労働施策|厚生労働省
※16 第2章 第4節 英国 労働施策|厚生労働省
※17 第1章 第1節 カナダ 労働施策|厚生労働省
※18 定例報告|厚生労働省
※19 就業動向と人材確保・育成|経済産業省
※20 日本的雇用システムと今後の課題|厚生労働省
※21 第1章 マクロ経済の動向(第1節)|内閣府
※22 雇用調整助成金|厚生労働省
※23 雇用創出の基金による事業|厚生労働省
※24 ハロートレーニング|厚生労働省
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