ワークシェアリングの仕組みと4つの種類 アフターコロナの雇用環境改善にどう役立つのか

講演w聴きながらノートに目を通す人々

コロナ禍のいま、失業者の急増が社会問題となっている。対策として注目されるワークシェアリングについて、仕組みや効果をまとめる。ワークシェアリングのメリットとデメリット、コロナ禍で必要とされる理由を知ろう。アフターコロナ時代についても解説する。

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2021.06.23
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ワークシェアリングとは

机の上に置かれたパソコンやマウスなどの仕事道具

Photo by ian dooley on Unsplash

ワークシェアリングとは、仕事を複数人で分け合うことを指す。これまで1人の従業員が行ってきた業務を複数人で分け合うことで、働き方改革への対応や、仕事効率の上昇を目指す仕組みである。近年では、仕事を失った人の雇用先を確保するための対策としても、注目されているものだ。

ワークシェアリングという仕組みが世界的に注目されるようになったのは、1980年代のことだ。長引く不況で失業率が上昇していたヨーロッパ各国において、失業者対策の一環としてワークシェアリングを実施。その結果、新たな雇用が生み出され、危機的状況を回避できた。

その後1990年代に入り、日本でも徐々にワークシェアリングが浸透していく。当時の日本で問題視されていたのは、慢性化する長時間労働である。長時間労働によって疲労がたまれば、生産性は低下し、さらに労働者の心身の健康も損なわれてしまう。こうした状況を改善するための対策として、ワークシェアリングが注目されたのだ。(※1)

労働政策研究・研修機構が発表している「データブック国際労働比較2020」によると、日本の平均年間総実労働時間は1,680時間であった。1988年時点では、2,092時間であったことを踏まえると、ワークシェアリングを含む働き方改革の実践によって、ある程度の成果が出ていると言えるだろう。

とはいえ、この時間数は、ヨーロッパ各国と比較すると、まだまだ多い。スウェーデンでは1,400時間台であり、さらにドイツでは1,300時間台を達成している。こうした国々と比較すると、日本のワークシェアリング導入実態は、十分ではないと考えられる。(※2)

ワークシェアリングの仕組みと種類

ワークシェアリングは、その仕組みや目的によって、4つの種類に分けられる。一言でワークシェアリングといっても、その目的や状況によって、選ぶべき形態はさまざまだ。ワークシェアリングで目的を達成するために、まずは4つの種類それぞれについての正しい知識を身につけておこう。

雇用維持型(中高年対策型)

主に中高年世代の雇用を維持する目的で行われるのが、雇用維持型のワークシェアリングである。中高年層の従業員に対して、1人あたりの仕事量を減らすことで、雇用数を確保する仕組みだ。

雇用維持型(緊急避難型)

一時的かつ急速に景気が悪化してしまった場合に、従業員の雇用を確保するために実施されるワークシェアリング。従業員1人当たりの労働時間を短縮し、従業員を解雇しなくてもいい環境をつくり出す。この場合の労働時間短縮は、あくまでも緊急避難措置である。

雇用創出型

さまざまな問題によって失業者が増えた場合に、働き口を増やす目的で行われるのが雇用創出型のワークシェアリングだ。この場合、労働時間の短縮は国や企業の主導によって行われる。より多くの人に仕事を確保することで、社会の安定を目指す。

多様就業型

従来の「フルタイム」にこだわらず、働きやすい環境の実現を目指すのが、多様就業型のワークシェアリングだ。多様な勤務スタイルで働きたいと願う人に向けて、短時間勤務を導入。この仕組みが広がれば、女性や高齢者など、より多くの人に雇用の機会が生まれる。

ワークシェアリングのメリットとは

シェアオフィスで働く人々

Photo by Shridhar Gupta on Unsplash

ワークシェアリングは、雇用主と労働者の両方にメリットが発生する仕組みである。まずは雇用主にとってのメリットをチェックしてみよう。

・多様な働き方の実現により、有能な社員の流出を阻止できる
・効率重視の業務プロセスを実現できる
・複数人で業務を回していくことで、臨機応変な対応が可能になる

仕事に対する意欲はあっても、長時間労働が難しい従業員は多い。ワークシェアリングを導入すれば、こうした従業員にとっても働きやすい環境を実現できるだろう。従業員の長期雇用につながれば、人材採用・育成にかかるコストや手間も軽減できる。

また、これまで1人で担当していた業務を複数人で回すようになれば、効率化は必須である。これまで以上に業務プロセスにおける効率化を意識することで、無駄な仕事の削減にもつながっていくだろう。業務に携わる従業員の1人が急に現場を離れたとしても、その影響は最小限で済むはずだ。

一方で、労働者にとってのメリットは以下のとおりだ。

・仕事とプライベートの両立が可能
・モチベーションの向上につながる
・女性や高齢者も、働き口を見つけやすい

1人あたりの労働時間が削減されれば、仕事以外の人生を充実させることが可能となる。育児や介護との両立も、無理なく実践できるかもしれない。短時間労働だからこそ、集中力が途切れず、モチベーションも低下しづらいというメリットもある。

問題点は生産性と給料

一方で、ワークシェアリングには問題点もある。雇用主にとっては「従業員同士の連携が難しい」という点が挙げられるだろう。

チームのコミュニケーションをうまく図れなければ、1人で業務を行っていたときよりも、生産性が低下してしまう恐れがある。また、雇用する正社員の数が増えれば増えるほど、社会保険料の負担増は避けられない。

労働者にとっての問題は、労働時間減少による給料の削減だ。自由な時間が増える分、現在の仕事だけにこだわるのではなく、スキルアップによる昇給や、副業による収入の多角化を目指す必要が出てくるだろう。

コロナ禍における雇用環境の深刻な現状

カフェの店内でパソコンを操作する男性

Photo by Hannah Wei on Unsplash

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、日本の雇用環境は急速に悪化している。2020年以降、「勤め先や事業の都合」による完全失業者数は、大幅に増加。2021年4月の完全失業者数は194万人と、200万人に迫る勢いだ。仕事をしたくても、できない人が増えていることがわかる。(※3)

雇用主や労働者に対して、政府もさまざまな対策を行っているが、スピーディーかつ抜本的解決につながる対策は難しいのが現状だ。今後の情勢によっては、失業者数はさらに増加する恐れがあるだろう。

ワークシェアリングが解決策のひとつに

コロナ禍のいま、雇用環境が悪化するなかで注目されているのが、ワークシェアリングである。緊急対応型のワークシェアリングを導入すれば、従業員の雇用の維持につながるだろう。これから先、受注が増えた際にも、従業員を確保していれば即対応可能だ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって非常に大きな打撃を受けたのは、飲食業界やレジャー業界、アパレル業界、鉄道・航空業界などである。これらの業界では、若い世代も多く働いており、業績悪化による人材への影響は避けられていない。

ワークシェアリングが広まれば、たとえ給料額は低下しても、働き口は確保できる。副業への取り組みも柔軟に進めていく必要はあるが、生活の安定につなげられるだろう。

ワークシェアリングとアフターコロナの働き方

机を挟んで会話するビジネスパーソン

Photo by Annie Spratt on Unsplash

ウィズコロナの時代に、ワークシェアリングはより一層身近なものとなった。政府は、失業予防を目的として「雇用調整助成金」を支給。また新たに制度を導入し、実際に労働者を雇い入れた場合は、雇用主に対して「ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金」という制度を設けている。

休業の場合に支給される雇用調整助成金は、「厚生労働大臣が定める式の算定額2分の1(中小企業の場合は3分の2)」。「ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金」では、制度導入後の最初の雇い入れに対して「120万円(※300人以下の事業所の場合は50万円)」が支給される。こうした取り組みによって、「雇用を守るために仕事をシェアする」という考え方は、徐々に浸透してきている。(※4)

コロナ禍を抜けたからといって、経済がすぐに回復するとは限らない。またリモートワークや時短勤務が浸透したいま、「自身の働き方」について、見つめ直す人が増えてきている。アフターコロナ時代を迎えても、ワークシェアリングの実践は継続していくだろう。

経済が回復したあとも、ワークシェアリングには多くのメリットがある。短時間勤務が可能になれば、より多くの人が、自分らしく活躍できる社会を実現しやすくなるだろう。また、ワークシェアリングをきっかけに、働き始める人も増えるはずだ。

アフターコロナでの働き方を考える上で、ワークシェアリングは欠かせないものである。新たな働き方として柔軟に受け入れ、デメリットを最小限にするための準備を進めていこう。

※1 平成13年度 年次経済財政報告書 第2章 ワークシェアリングの成果 (2ページ目)
https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh02-01/pdf/sh02-01-02-02.pdf
概要:第4回旧・JIL労働政策フォーラム 日本のワークシェアリングのあり方を探る
https://www.jil.go.jp/event/jil/ro_forum/20011221/gaiyou.html
※2 6-1 一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/06/d2019_G6-1.pdf
※3 新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:完全失業者数
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c03.html
※4 第4章 施策の推進に活用できる各種助成制度
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0630-2e.html

※掲載している情報は、2021年6月23日時点のものです。

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