ホテル業界が抱える課題のひとつに、アメニティの大量廃棄がある。その問題に一石を投じるべく、「circuRE act(サキュレアクト)」と「KAMAKURA HOTEL」による共同企画が2024年8月1日より実施された。ホテルビジネスからみるアメニティの現状や今回のキャンペーン結果についてお届けする。
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結果はというと、なんと開始より2週間足らずのうちにプレゼントの限定数を配布し終え、好評のうちに終了となった。全宿泊者271名のうち105人がキャンペーンに参加しアンケートに回答した。小林氏によると反応は上々だったという。「チェックイン時にご案内するのですが、『やりたいです!』とおっしゃってくださる方が多くいらっしゃいました」。
今回のキャンペーン参加者の年代別割合。回答者数105名。期間2024年8月1日~8月4日/8月6日~8月10日。
回答者の年代をみてみると、66.7%と圧倒的に20代が多く、次いで30代の19.0%、40代の8.6%とつづく。「KAMAKURA HOTEL」の客層を反映した結果か。日常での環境問題への取り組み率は82.9%にも上り、20〜30代ほど環境意識が高いという塩原氏の読みが的中した形だ。
日常的に環境問題に取り組んでいるという回答者が多数だった。
ホテルのアメニティ問題解決の一端を担う「ホテルで不要と思うアメニティは?」という項目については、必要なものと不必要なものがはっきりと分かれる結果となった。
かみそりについては、70.5%もの人が不要と回答したのに対し、歯ブラシについて不要と答えた人は5.7%にとどまった。歯ブラシは必要と感じる人が多いということになる。同じくスキンケア、ボディケア、ヘアケアについても不要と答えた人の数値は、8.6%、3.8%、12.4%と低く、ホテルでの設置を望む声は大きい。
ボディータオル、ヘアブラシ/コーム、綿棒/コットンについては、25.7%、36.2%、21.9%となり、こちらも半数以上が必要だと感じている。
取り組みについての感想には、「素晴らしい取り組みだと思う」と答えた人が81.0%と、参加者の意識の高さがうかがえた。ともすればサービスを減らすことになる取り組みだが、今回のキャンペーンについて、宿泊客は好意的に受け取ったようだ。
サステナブルな石けんと、アメニティ問題に取り組むホテルのキャンペーンは好評だった。
アンケート結果について、予想以上の反響だったと小林氏は驚きを隠せない様子。「ホテルとしてはお客さまが不便を感じることがないよう、アメニティすべてを揃えるのがおもてなしだと思っていました。おそらくお客さまが考える以上に過剰にサービスをしていた可能性もある。アンケートによって率直なご意見をうかがうことができてよかったです」と感想を述べた。
塩原氏は、このキャンペーンがホテル側にとって一歩を踏み出す勇気になればと話す。「サービスを受ける側と提供する側は対等です。私たちはホテルにお金を支払うことで、宿泊することができ、楽しい時間を得ています。対価交換をしているはずなんです。お客さまの要望すべてに応える必要はなく、『これはできませんが、よろしいですか?』と聞く勇気も、これからのサービス業には必要だと思います」。
また、アメニティを減らしたくても勇気がでず、実行できていないホテルもあるのではと推測する。「このアンケート結果が、アメニティ問題に取り組むホテルの参考になれば」と塩原氏は期待を込めた。
最上階の客室は専用のリビングテラス付き。鎌倉の景色を独り占めできる。
ホテルとして、今後どのようにアメニティ廃棄・使い捨てを減らしていくのか。小林氏は「ホテルにとってアメニティの概念の転換期が来たと感じた」と話す。
まだ原価シミュレーションの段階と前置きしつつ、「毎回残った状態で廃棄しているシャンプーなどのバスアメニティについては、ミニボトルでの提供から据え置き型への変更を考えています。ポンプ式なら補充もできるためプラスチックごみの削減につながります」。さらに、「多くの方が不要に感じているひげ剃りは、お部屋には設置せず必要な方にのみフロントでお渡しする方式に切り替えたい」とアメニティ削減の次のステップについて語った。
今回のキャンペーン結果をみても、アメニティを減らすことでサステナブルな取り組みに賛同する宿泊客がリピーターとなる可能性もあると推察できる。「これからの時代、サステナブルなホテルを目指すというのも意味があることだと思います」と、塩原氏は締めくくった。
プラスチックの使用や廃棄の削減は、社会全体で取り組むべき課題だ。企業のみに任せるのではなく、私たち一人ひとりの協力の必要性を感じる。レジ袋の有料化やマイボトルの携帯が浸透しつつあるように、ホテルのアメニティについてもマイトラベルグッズを持参することを意識していきたい。
撮影/森本修大 取材・執筆/村田理江 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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