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フランスでは、6〜11歳の子どもに自転車の乗り方を教えるプログラムが行われている。子どもたちの自転車利用を当たり前にし、より健康的で環境にもやさしいライフスタイルを築くことが目標。また自転車教育を通した社会格差の是正も目指す。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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「Savoir Rouler à Vélo(自転車の乗り方を知る、以下SRAV)」は、フランス政府が2019年に開始した、「自転車の乗り方」を教育する10週間のプログラムだ。対象は6歳から11歳の小学生。
これまでに50万人以上の子どもたちがこのプログラムを受けており、2023年には17万5000人以上と前年より43%増加。政府は2027年までに年間約85万人の生徒に自転車教育を行うことを目指している。
このプログラムは、フランス政府が2023年から2027年にかけて毎年2億5000万ユーロ(約405億円)を自転車関連の取り組みに投じる国家計画「Plan Vélo(自転車計画)」の一環。その多くは、安全な駐輪場や自転車専用レーンの設置といったインフラ整備に充てられており、全国に8万kmの自転車専用道路を整備することがひとつの目標だ。
さらにSRAVのような教育プログラムへの投資も含まれており、SRAVのために2022年から2024年にかけて2100万ユーロ(約34億円)が投じられてきた。
レッスンは通常3月から7月にかけて、週1時間行われる。レッスンは3つの段階で進められる。
1つ目の「ペダルの踏み方を知る」では、バランス、旋回、ブレーキなどの基本を練習する。2つ目の「走り方を知る」では、グループでのサイクリング、道路上での他の人とのコミュニケーション、一般的な道路標識を学ぶ。そして3つ目の「自転車の乗り方を知る」は、学校敷地外の公道をグループでサイクリングする最終ステップで、これを経て子どもたちに修了証が授与される。
多くの子どもたちが自転車通学を始めるようになれば、通学時の交通安全の向上、二酸化炭素排出量の削減などが期待できる。そして子どもたちの運動を促進し、健康にも
役立つ。
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このプログラムではさらに、自転車の平等性を推進するという重要な意義もある。
ある調査によると、サイクリングは裕福な地域でより一般的な傾向がある。例えば、ロンドン交通局が2011年に発表した報告書によると、ロンドンの典型的なサイクリストは「白人の40歳未満の男性で中・高世帯所得者」であるという。
また国連によると、世界的に女性で自転車に乗る人の割合が著しく低く、安全上の懸念や不十分なインフラもあって、自転車を利用する人のうち男性は女性の3~4倍多い。
2019年に行われたアメリカの22の大都市を対象にした調査では、低所得者やマイノリティのコミュニティは自転車専用レーンへのアクセスが「著しく低い」ことがわかった。現在フランスで行われているプログラムでも、訓練を受けている生徒のおよそ20%は、フランスのいわゆる「優先地区」と呼ばれる貧困層の出身だ。
そのため、フランス政府による自転車政策は、社会正義とインクルージョンについても重要な利点であるといえる。
ここまで社会に浸透している自転車においてさえも、不平等が存在するということはあまり知られていないのではないだろうか。環境対策のみならず、そうした点にフランス政府が目を向け、ソーシャル・インクルージョンを目指した政策が行われることには大きな意味があるだろう。
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