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近年は日本でも、ブラックアウトに関するリスクが指摘されるようになってきた。ブラックアウト(全域停電)が起こることで、私たちの生活に与える影響は計り知れない。この記事では、日本で起こった事例を踏まえながら、ブラックアウトの原因や起こることによるリスクについて解説する。
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ブラックアウトとは、大手電力会社の管轄する地域全体で同時に発生する大規模な停電(全域停電)のことである。この現象が発生すると、数時間から数日間にわたって広範囲の電力が完全に失われる。日本では2018年の北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトが初めての事例であり、最大約295万戸が停電した。(※1)
通常の停電と違うのは、ブラックアウトは電力システム全体の崩壊を指しており、早急な復旧が難しい点だ。私たちの生活は電力への依存度が高く、電力供給が完全に止まることの影響は甚大である。
一般的な停電は、限られた地域や一部の家庭、企業のみで発生する。原因も電線の損傷や建物の設備故障など、物理的で比較的早めに復旧可能なものが中心だ。
一方のブラックアウトは電力供給システム全体が崩壊し、広範囲にわたって停電が発生する。そのため、復旧には高度な技術と時間を要する。復旧までに数日以上かかることがあり、ブラックアウトは社会インフラ全体に甚大な影響を与える。
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ブラックアウトには、以下のとおりさまざまな原因がある。
ブラックアウトの主な原因として、自然災害が挙げられる。地震や台風、洪水などの大規模な災害の発生によって、送電網や発電施設に致命的なダメージが加わることがある。
2018年の北海道胆振東部地震では、震源地近くにある火力発電所が停止し、連鎖的に他の発電所も停止、全域停電につながった。自然災害が発生すると、複数の設備が同時に機能を失い、広範囲で電力供給が途絶える可能性が高くなる。
送電網や発電所を制御するシステムに障害が発生した場合、電力の需給バランスが崩れ、システム全体が停止するおそれがある。とくに制御機器の故障は、電力の供給を自動的に停止させる安全装置の誤作動を引き起こし、大規模な停電を招くことがある。こうした技術的な問題は、システムの複雑化や、過去の設備の老朽化が進む現代において増加することが予想されている。
テロ攻撃や人為的なミスも、ブラックアウトの原因となり得る。例えばサイバー攻撃によって電力供給システムが狙われた場合、制御機器が機能不全に陥り、大規模な停電が発生する可能性がある。2015年にウクライナの発電所がサイバー攻撃を受け、大規模なブラックアウトが人為的に引き起こされた。(※2)
また人的ミスによる操作誤りや設備の損傷が、連鎖的にシステム全体を停止させることも考えられる。
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ブラックアウトが発生すると、社会全体に多大な被害と影響を与える。その範囲は計り知れないが、ここではいくつかの代表的な影響について見ていく。
ブラックアウトにより、電力を必要とする社会インフラがすべて停止する。交通機関がストップし、鉄道や信号機が機能しなくなるため、交通渋滞や事故が多発する可能性が高い。加えて通信インフラが停止し、携帯電話やインターネットが使えなくなることで、情報伝達が困難になり避難や復旧をさらに困難なものにする。
ブラックアウトは経済にも深刻な影響を与える。工場や商業施設が停止し、生産活動が中断されるだけでなく、小売店や飲食店もふだんどおりの営業はできなくなる。移動に必要な公共施設も停止するため、物流や人の流れも滞るだろう。
医療機関において、ブラックアウトの影響は致命的だ。電力が途絶えると、生命維持装置や診療機器が停止する可能性があるため、患者の命に関わる重大な事態が発生するおそれがある。多くの病院は非常用電源を備えているが、長時間の停電が続けばその対応にも限界がある。また、救急搬送や薬の運搬にも支障が生じる。
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2018年9月6日未明、北海道胆振東部で発生した最大震度7の地震により、北海道全域で大規模な停電が発生した。日本国内で初めてのブラックアウトとなったこの事態は、私たちの社会の抱える多くの課題を浮き彫りにした。ここでは北海道胆振東部地震に伴うブラックアウトの発生から、影響、復旧に至るまでどのようなことが起こったのか見ていく。(※3、※4、※5)
北海道胆振東部地震は2018年9月6日午前3時7分に発生し、厚真町を中心に大規模な被害をもたらした。震源地に近い地域では、土砂崩れや家屋倒壊が相次ぎ、多くの住民が犠牲となった。さらにブラックアウトが起こることで電力インフラに依存する現代社会の脆弱性が示され、その後の復旧作業にも大きな影響を及ぼした。
このブラックアウトの直接的な原因は、地震発生直後に苫東厚真火力発電所が停止したことにある。さらに設備損傷や送電線の切断が相次ぎ、他の発電所も次々と停止した結果、供給力が急速に低下して全域停電に至ったのである。
地震発生後、北海道全域で約295万戸が停電したが、その99%は48時間以内に復旧した。北海道電力はブラックアウトに備えた復旧手順を設けており、段階的な復旧作業を実施。さらに住民の協力によって節電も実施され、早急な復旧へとつながった。しかし災害前の最大電力から1割程度不足した状況が続き、苫東厚真火力発電所の復旧が進むまでの間、計画的な節電が継続された。
日本で初めて起こったブラックアウトは、私たちの電力インフラ依存に対する大きな警鐘となった。とくに問題となったのは、広域電力供給の脆弱性である。周囲の供給状況が苫東厚真火力発電所に過度に依存していたことや、発電所間の連携不足も浮き彫りとなった。また比較的早急に復旧されたものの、災害時における復旧手順や住民への情報伝達の改善も今後の課題である。
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このような大規模停電が再び発生した場合に備え、個人や家庭でできる対策を考えておくことが必要だ。
まず必要なのは、非常用電源の確保である。ポータブル電源や蓄電池の準備により、停電時にも最低限の電力を確保できる。また手回し発電機や車のシガーソケットを活用するなど、複数の手段を持つことが望ましい。
停電が長引いた場合、生活必需品が手に入りにくくなる可能性が高い。そのため飲料水、非常食、医薬品などの備蓄を行い、少なくとも1週間分は確保しておくことが推奨される。
ブラックアウトが起こると、情報収集や連絡手段も限られてくる。携帯ラジオや充電式のランタンは、停電時でも情報を得るために役立つ。また、スマートフォンのバッテリー管理も重要だ。さらに電波が停止したときのことを考え、家族で非常時の行動を決めておくことも大切だ。
太陽光発電システムの導入は、停電時でも安定した電力を確保する手段として有効だ。蓄電池を併用すれば、夜間や曇りの日でも電力を利用できるため、非常時の備えとしても心強い。自治体によっては補助金制度もあるため、導入を検討してみる価値がある。
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北海道胆振東部地震で発生した日本初の全域停電、ブラックアウトは、現代社会の電力供給システムが持つ脆弱性を浮き彫りにした。この経験から、災害時の電力インフラの強化を進めるとともに、個人や家庭での備えも重要性が増している。非常用電源や備蓄品、情報収集手段の確保は、次の災害に備えるための必須事項である。
また電波が使えなくなることも考えられるため、家族や大切な人と災害時の行動について改めて話してみてもいいだろう。これを機に、停電への備えを見直してみたい。
※1 ブラックアウト(系統崩壊)(Blackout)とは|一般社団法人エネルギー情報センター
※2 サイバー空間における脅威の概況|法務省
※3 通信・放送の被害状況|総務省
※4 北海道胆振東部地震の大停電(ブラックアウト)はなぜ起きた?原因と対策とは|gooddo株式会社
※5平成30年に発生した災害による 大規模停電発生時における政府の対応について|経済産業省
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