企業によるリサイクルの取り組み事例 必要性やメリット、リサイクルの種類も

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いまや多くの企業で取り組まれているリサイクル。その必要性と企業がリサイクルに取り組むメリット、企業によるリサイクルの種類と具体的な事例を紹介。

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2024.08.23

企業によるリサイクルへの取り組みの基礎知識

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企業におけるリサイクルとはなにか、その基礎知識について説明する。

そもそもリサイクルとは

環境問題への取り組みとして、多くの人に浸透している「3R」。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字をとったものだ。

そのなかのひとつ、Recycle(リサイクル)は、日本語で「再資源化」という意味をもつ。不要になったものや廃棄物などを、原材料やエネルギー源として有効利用することである。消費者ができることには、資源ごみ(古紙や布、ペットボトルなど)の分別、回収への協力、リサイクル製品の積極的な利用などがある。

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企業の社会的責任「CSR」とは

環境問題に取り組む企業が使う言葉に「CSR」がある。CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳される。

具体的には、企業活動において、社会的公正や環境、次世代への配慮などに取り組み、利害関係者である従業員、株主、地域社会などに対して責任ある行動をとること、そして説明責任を果たしていくことを求める考え方である。

SDGsが注目されているなかで、企業の環境問題に対する活動や行動はCSRの観点からも重要視されている。

なぜ企業のリサイクルへの取り組みが必要なのか

気候変動や環境保護対策の必要性

気候変動や海洋汚染、水質汚濁、大気汚染といった環境問題は、深刻な課題となっている。これらの原因は、温室効果ガスやプラスチックごみなどの排出によるもので、企業による活動が原因の大部分を占めている。

こうした気候変動や環境問題を解決するために重要となるのが、企業によるリサイクルへの取り組みだ。企業がリサイクルに積極的に取り組むことで、温室効果ガスの排出削減や資源の有効利用、そして環境保護対策につながる。カーボンニュートラルな社会を実現させるためにも、企業のリサイクルへの取り組みが必要なのだ。

進む法規制

多くの国や地域でリサイクルに関する法規制がしかれており、日本も例外ではない。日本では2001年4月に「資源有効利用促進法」が、2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行された。

プラスチック資源循環促進法とは、3R+Renewable(再生可能な資源へ代替)を基本原則として、製品の設計からリサイクルまでのライフサイクル全般に関わる事業者、自治体、消費者が相互に連携し、資源循環の取り組みを促進するための法律だ。この法律には、プラスチック製造・販売事業者が、使用済みプラスチック製品を積極的に自主回収し、リサイクルして再資源化する「自主回収・再資源化事業計画認定」の制度が設けられている。(※1、※2)

資源有効利用促進法とは、循環型社会を形成していくために必要な3Rの取り組みを総合的に推進するための法律だ。この法律では、事業者に対して、使用済物品および副産物の発生抑制のための原材料の使用の合理化、再生資源および再生部品を利用、使用済物品や副産物の再生資源・再生部品としての利用の促進に努めることを責務としている。(※3)

今後は、こうした法規制が厳しくなることが予想され、企業は適切な対応が求められる。

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企業がリサイクルに取り組むメリット

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企業がリサイクルに取り組むメリットを解説する。

地球環境への貢献

企業がリサイクルに取り組むことは、地球環境保護への貢献につながる。リサイクルによって限りある資源を有効活用できるだけでなく、新たに製造する際のエネルギー消費を削減することができる。また、廃棄物の量も抑えられ、焼却や埋め立てによる環境への負荷を軽減できる。

企業イメージの向上

環境に配慮した取り組みを行う企業は、消費者や取引先・投資家からの評価が高まり、企業イメージの向上につながる。これにより、顧客の信頼を獲得しやすくなるのもメリットだ。

コスト削減

リサイクルされた材料を使用することで、製造コストを抑えられるのもメリットだ。廃棄物処理費用や新しい原材料の調達・購入費用を削減でき、経営効率アップが期待できる。

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企業によるリサイクルの主な種類

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企業によるリサイクルには、いくつか種類がある。どのようなリサイクル方法があるのかみていこう。

製品リサイクル

製品リサイクルは、不要になった製品を回収し、再利用可能な材料や部品に分解して新たな製品に再利用するリサイクル方法だ。たとえば、使用済みのスマートフォンや小型家電から金、銀、銅、パラジウムなどの希少金属を回収することや、ダウンジャケットからダウンやフェザーなどを回収して新しい服の原料として使うことなど。材料ごとに分別され、金属の場合は溶かして再成形される。

材料のリサイクル

材料のリサイクルは、廃棄物を原材料として再利用する方法だ。「マテリアルリサイクル」や「再生利用」とも呼ばれる。たとえば回収した缶を溶かして、新しいスチール缶やアルミ缶をつくったり、古紙を溶解して再生紙にしたり、びんをガラスくずにして再びびんを製造したり、木くずを粉砕してチップにしてパティクルボードやマルチング材に再生させたりする。材料リサイクルは同じ材質のものを大量に集める必要があるが、資源循環に直接貢献できるのがメリットだ。

産業廃棄物リサイクル

木くずや石膏ボード、がれきなどの産業廃棄物をリサイクルして利用する。たとえば木くずは、エタノールやリグニンペレットという石油の代わりの燃料となる。また石膏ボードは固形燃料や建築材に生まれ変わって活用されている。

エネルギーリサイクル

エネルギーリサイクルは、エネルギーを回収してエネルギーとして再利用するリサイクル方法である。たとえば廃棄物を燃やすときに発生する熱エネルギーを回収し、それを発電や温水プールなどに活用する。これは「サーマルリサイクル」とも呼ばれている。

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企業のリサイクルの具体例

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企業によるリサイクルの具体例を紹介していこう。

マクドナルド

マクドナルドでは、不要になったハッピーセットのプラスチックおもちゃを回収し、リサイクルを行っている。回収したおもちゃは、店舗で使用するトレーや店舗に設置されるリサイクルボックスとして生まれ変わり活用されている。(※4)

ユニクロ

ユニクロでは、「RE.UNIQLO」という取り組みを展開。不要になったユニクロ、ジーユー、プラステの服を回収し、リユースできるものは世界中の服を必要としている人たちに届ける。リサイクルされるものは、新しい服の原料や断熱材、防音材などの素材として活用されている。(※5)

セブン‐イレブン

セブン‐イレブン・ジャパンは、ペットボトルを資源を回収し、再びペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」という循環型リサイクルに取り組んでいる。また、日本コカ・コーラ株式会社とともに、リサイクルペットボトルを使用した商品販売も行っている。(※6)

スターバックス

スターバックス コーヒー ジャパンが2014年から取り組んでいるのが、「コーヒー豆かすリサイクルループ」だ。この取り組みは、店舗からで出るコーヒー抽出後の豆かすを肥料や飼料にリサイクルするというもの。野菜や牛を育てる際に使われ、そうして育てられた食材は店舗で提供されるフードやドリンクに使われる。

また、回収した豆かすを酪農家へ有価で提供し、堆肥として活用する取り組みも行っている。(※7)

サントリー

サントリーグループでは「ボトルtoボトル」という水平リサイクルに取り組んでいる。水平リサイクルとは、リサイクル前とリサイクル後で用途を変えない資源循環の方法のことだ。サントリーでは、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせている。(※8)

ミスタードーナツ

ミスタードーナツでは、店舗で使用したドーナツ調理用オイルを工業用の原料やショップで使用する液体洗剤としてリサイクルしている。またマットやモップを洗浄・再生する工場の、ボイラー燃料としても活用。そのほか、売れ残ったドーナツを飼料としてリサイクルする取り組みも行っている。(※9)

ソフトバンク

ソフトバンクでは、ソフトバンクショップとワイモバイルショップで不要になった携帯電話の本体、電池パック、USIMカード、充電器を無償で回収する「ケータイリサイクル」を実施。回収した携帯電話などは、再び携帯電話やパソコンといった電子機器などの部品の原料として再利用される。

携帯電話や周辺機器には、産出量が少ないレアメタル(パラジウム、コバルトなど)や金、銀、銅など、貴重な資源が使われている。リサイクルを進めることで、採掘に伴う森林伐採や汚染などの環境負荷を軽減することができる。また鉱物資源の乏しい日本では資源の有効活用にもつながる。(※10)

イオン

イオンは「完結型食品リサイクルループ」という取り組みを行っている。自社農場で野菜をつくって店舗で販売し、店舗で出た食品残渣を堆肥に加工。その堆肥を使って再び農場で野菜をつくるという試みだ。また、2025年までに食品廃棄物を半減させる目標を掲げている。(※11)

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3R+Renewableに取り組もう

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企業によるリサイクルの取り組みには、私たち消費者も貢献することが可能だ。たとえば、少しめんどうに感じても家庭ごみとして捨ててしまうのではなく、回収ボックスに入れる、再生資源を使用した商品を積極的に選ぶ、お店での食事で食べ残しをしないなど。企業とともに、3R+Renewableに取り組もう。

※掲載している情報は、2024年8月23日時点のものです。

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