シンガポールが食品寄付法を提案 世界と日本の食品ロス削減対策は?

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シンガポールの国会に食品寄付法案が提出された。これにより、アメリカ、フランス、イタリアなどの先進国と同じく、世界の課題である食品ロス削減に向けて基盤づくりができる可能性が高まった。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2024.08.01
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年間75万トンの食品ロスを無駄にしないための法整備

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まだ食べられる食品が大量に世界で廃棄され、その処分によって排出される温室効果ガスが地球温暖化に影響を与えている一方で、飢えに苦しむ人の数も増加傾向にある。食品ロスと飢餓。この矛盾を解決する重要な手段として食品の寄付が注目されるなか、2024年7月2日、シンガポールで食品寄付法案が4人の国会議員によって国会に提出された。

シンガポールの国家環境庁(NEA)の統計によると、2023年に1年間で出た食品廃棄物はおよそ75万トン、そのうちリサイクルされたのはわずか18%。

『The Straits times』の記事によると、「善きサマリア人のための食品寄付法(Good Samaritan Food Donation Bill)」の起草に尽力した議員の一人であるルイス・ウン氏は「この法案は、食品廃棄を減らし、食糧難の地域社会へ再配分する食糧を増やすのに役立つ」と下院で語ったという。

万が一のリスクを恐れず 食品を寄付できる社会をつくる

食品寄付の障壁となっているのが、食品事故のリスクだ。そこで今回提出された法案では、「特定の条件下で寄付された調理済み食品について、死亡事故や健康被害が発生した場合に、特定の寄付者の責任を免除」している。対象となるのは、包装済の食品、調理品、パンやケーキなどの菓子、飲料、果物、野菜など。

同法案は、アメリカ、イタリアといった他国の食品寄付法と類似しているが、例えばフランスの場合は、スーパーマーケットで売れ残った食べられる食品を廃棄することを禁止する内容だ。

だが、今回のシンガポールの法案は、寄付した食品によって食中毒などが起きた場合について、提供者の責任を免除するもの。これにより、多くの企業・小売店からの余剰食品の寄付を目指している。

日本のフードバンクでは提供者に責任?

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例えば、米国をはじめとしたいくつかの国では、責任を免れる「免責制度」を採用しているが、現在の日本の「食品ロスの削減の推進に関する法律」(通称 食品ロス削減推進法)に免責の措置は講じられていない。

そのため、食品寄付法のないシンガポールと同じように、日本のフードバンクも万が一に備えて合意書を準備して食品の授受を行なっているのが現状だ。

しかし、2023年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」で、フードバンクへの事業者の食品提供の促進とフードバンク団体の体制強化、食べ残しの持ち帰りの促進、賞味期限のあり方の検討などが示された。

今後の法改正で、日本にも事業者の責任が免除される仕組みを導入することが期待される。

アメリカが食品寄付法を改正 食品ロス・飢餓の削減に向けて

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世界の動きに注目 知ることからはじめる食品ロス削減

食品寄付の法律は国ごとに制定されていて、食品安全性の管理についての政策もさまざま。そんな世界の食品寄付の法律や政策が地図から一目でわかるウェブサイト「The Global Food Donation Policy Atlas」(グローバル・フード・ドネーション・ポリシー・アトラス)がある。

世界40か国以上に存在するフードバンクをつなぐネットワーク「グローバル・フードバンキング・ネットワーク(GFN/Global Foodbanking Network)」とハーバード・ロースクールの「フード・ロー&ポリシー・クリニック(The Food Law and Policy Clinic)」が食品寄付の拡大を目的にサイトを運営している。※日本はGFNに参加していないため対象外

食品ロスは、世界各国の政府と国民が協働して取り組むべき問題である。これからの食品ロス削減に向けた取り組みやフードバンクの推進に期待したい。

※掲載している情報は、2024年8月1日時点のものです。

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