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「#MeToo(ミートゥー)運動」とは、これまで沈黙してきた被害者がセクハラや性的暴力の経験を告白・共有し、声を上げる運動。アメリカで広まり世界に影響を与えたこの運動がもたらしたものとは何か。問題点や社会の変化、日本への影響も含めて解説。
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#MeToo(ミートゥー)運動とは、セクハラや性虐待、性的暴行の被害者が自身の経験を告白・共有する国際的な運動のこと。これまで沈黙されてきた問題に目を向けてもらおうと、性的被害を受けた人たちがSNSのハッシュタグ機能を利用して被害を告白、拡散するという動きだ。著名人も#MeToo運動に参加したことで話題を集めた。
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「#MeToo」というは言葉は、2006年に性暴力根絶のために戦う市民活動家、タラナ・バークが生み出したとされる。そして「#MeToo運動」が活発になったのは2017年のアメリカだ。どのようなできごとがきっかけで#MeToo運動は広まったのだろうか。
ワインスタイン事件とは、2017年に映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン氏による長年の性暴力とセクシャルハラスメントの疑惑が報道された事件だ。ニューヨーク・タイムズ紙が、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の悪質な行為を暴露した。この告発が契機となり、#MeToo運動が急速に拡大したとされている。
俳優のアリッサ・ミラノ氏が、SNSのTwitter(現X)に「性的嫌がらせや性的暴力を受けた人は、このツイートに『Me too』と返信して」と投稿し、性暴力やセクハラの経験を共有するよう呼びかけた。この投稿に対し多くの歌手や俳優が応じたことで拡散していった。2018年10月までに「#MeToo」のハッシュタグを使ったツイートは、1900万件に達している。このようにハッシュタグの登場やインフルエンサーの行動により、世界中で性暴力とハラスメントに対する声が上がった。
日本で#MeToo運動が認知されるきっかけになったのは、2015年にフリージャーナリストの伊藤詩織氏が性的暴行の被害を受けた事件。ワインスタイン事件と同時期の2017年に実名を公表し、訴えた。このことにより共感の輪が広がり、日本での#MeToo運動の機運を高めたとされる。
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#MeToo運動などの社会運動はどのような効果があり、社会に何をもたらすのだろうか。
#MeToo運動により性暴力やハラスメントの被害者が声を上げやすくなり、これまで黙殺されていた問題が広く認識されるようになる。これにより社会全体での意識改革が進み、被害者がより尊重され、安全な環境が確保される。また加害者への抑止力となり、問題解決のための法制度や教育の改善にもつながることが期待される。
#MeToo運動によって性暴力やハラスメントの被害者が自らの体験を共有することで、社会全体がその深刻さを認識し、被害者に対する理解が深まる。これにより被害者が孤立せず、共感を得られる環境が整い、支援の輪が広がるだろう。また問題に対する意識が高まり、予防策や対策の強化にもつながる。
#MeToo運動により性暴力やハラスメントの被害者が声を上げることで、加害者がその行為を公にされ、社会的に非難されるリスクが高まる。これにより加害者は行動の結果としての重大な社会的制裁を恐れるようになり、犯罪行為に対する抑止力が働く。
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一方、#MeToo運動の課題や問題点も存在する。一例として、虚偽の告発が行われるリスクである。SNSは匿名性が高いため、無実の人が社会的に制裁を受ける可能性がある。また被害者が声を上げることで、再びトラウマを受ける二次被害も懸念される。
さらに運動が過熱することで、すべての男性が疑われる風潮が生まれ、性別間の対立が深まることも考えられる。企業や組織内での適切な対応が求められるなかで、具体的なガイドラインや支援体制を整備する必要がうまれる。
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#MeToo運動は、社会にどのような変化をもたらしているのだろうか。
#MeToo運動は、職場での行動や意識に大きな変化をもたらした。シカゴ大学の調査によると、アメリカの労働者の3人に1人が#MeToo運動をきっかけにオフィスでの振る舞いを変え、管理職の38%が従業員との接し方を改善したとされている。また10人に4人の労働者は、運動後に新たなハラスメント防止トレーニングを受けたと回答した。(※1)
一方で一部の男性は運動を好ましく思っておらず、ダイバーシティ&インクルージョンの進展も依然として課題となっている。
アメリカでは2022年、#MeToo運動がきっかけとなり、職場でセクシュアルハラスメントや性的暴力の被害を受けた人に加害者を裁判で訴える権利を保証する法案が上院で可決された。(※2)また、スウェーデンでは2018年の法改正により、相手が明確な合意を示さないまま行った性行為はすべて違法となった。有罪となった場合、2年以上6年以下の拘禁刑に処される。(※3)
#MeToo運動を受けて、被害者の視点に即した法改正や制度見直しが進められ、性犯罪の不処罰問題への対策が強化された国がある。
#MeToo運動により、以前は見過ごされがちだったセクハラや性暴力の問題がメディアで広く取り上げられるようになった。メディアの報道姿勢が変化したことで、被害者の声を積極的に伝え、加害者の行動を厳しく追及できるようになった。また性犯罪やハラスメントに関する議論が活発化し、社会全体での意識向上や法改正の動きが促進された。
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#MeToo運動は、日本にどのような影響をもたらしたのだろうか。
フラワーデモとは、2019年4月11日に始まった、花を身につけて性暴力根絶を訴えるデモ運動。毎月11日に日本各地で実施されている。(※4)
フラワーデモは、性暴力事件に対する無罪判決が続いたことをきっかけに作家の北原みのり氏とエトセトラブックス社長の松尾亜紀子氏が呼びかけて始まった。東京駅での初回デモには、450人以上が参加した。その後、福岡、大阪、名古屋、仙台、札幌など全国に広がっている。
2019年には女性がヒールのあるパンプス着用を強いられることに異を唱える「#KuToo(クートゥー)」運動が広がりをみせた。「KuToo」とは「靴」「苦痛」と、#MeToo運動をひっかけた造語。2019年6月には19,000人ほどのネット署名を集め、厚生労働省に提出された。(※5)
航空やホテル、百貨店など制服での接客がある業界において、ヒールの高さを指定し、該当する靴を半ば強制的にはかせる行為に対して女性たちが声をあげたものだ。女性のみに命じる性差別の観点と足の痛みなどの健康被害の観点を理由としている。
海外では、性別による服装規定の違いを禁止する国・地域もある。ニューヨークでは、市の人権条例に「性別によって違った服装規定や制服、身だしなみのルールを設けることは許されない」と定められており、「そのような規定を強要すること自体が十分な差別とみなされる」としている。(※6)
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#MeToo運動は、これまで沈黙してきた被害者が勇気を出して告白し、「わたしも」と他者が声を上げてくれることでさらなる勇気が生まれ、また別の者が声をあげることができる運動だ。被害者たちは団結することで勇気を得て、戦うことができる。こういった動きはSNSやインターネットの普及によって可能となった。これからは、社会的に弱い者、声が小さい者の声も発信されやすい社会になる。
しかし一方で、こういった行為に対して誹謗中傷を投げかける人も存在する。弱者の声は、受け入れられる社会でなければ発信されず、発信しても届かない。多くの人が多様な声を受け入れられる社会の実現が求められる。
※1 「#MeToo」から2年…アメリカの職場では何が変わったのか|Business Insider Japan
※2 米上院が「#MeToo」法案可決、大統領に送付-被害者支援で前進|bloomberg
※3 刑法を知っていますか① YES以外はすべてNO ~スウェーデン“希望の法”~|NHK
※4 フラワーデモ
※5 働く女性「美」の苦痛 #KuToo運動を提唱 石川優実さん(俳優)|東京新聞
※6 「#KuToo」改めてどう考える? 強制の実態も暴露|朝日新聞
参考
・性的加害行為をツイッターで告発 ハッシュタグ「私も」に賛同広がる|BBC NEWS
・「性暴力の温床となる権力や特権のシステムを解体せよ」──#MeTooの創始者タラナ・バークの希望。|VOGUE JAPAN
・日本と韓国は「#MeToo」運動でどう変わった? 女性の権利が向上、一方で激しい「バックラッシュ」も|Yahoo ニュース
・日本における「#MeToo」運動について考える|文化放送
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