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外来種は環境問題を引き起こすとされている。果たして外来種の何が問題なのだろうか。この記事では、日本で問題とされている外来種の代表例を紹介しつつ、外来種の危険性と対策について解説する。
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外来種とは、もともとその地域にいなかったが、人間の活動によって他地域から持ち込まれた生物を指す。外来種について外来生物法では、明治時代以降に海外から持ち込まれた生物に焦点を当てている。日本には約2000種の外国起源の生物が存在し、その多くは人間の活動によって意図的または非意図的に持ち込まれた。(※1)
外来生物は、外国から日本に運ばれるだけでなく、日本国内で自然分布域外に運ばれる場合も含まれる。一例として、本州から北海道に持ち込まれたニホンイタチやカブトムシ、異なる地域に放流されたメダカも外来生物としてみなされる。また、広く運ばれて元の生息地が不明なセアカゴケグモやホオグロヤモリも外来種である。
外来生物には、ヤギなどの大型動物やギンネムなどの木本植物、病原体などの微小生物も含まれる。国外・国内問わず外来種は、地域の在来生物に影響を与える可能性がある。
ここからは国外から持ち込まれた外来種についてみていこう。「特定外来生物」や「侵略的外来種」と呼ばれるものはどういった外来生物なのか。それぞれ該当する動植物を例に挙げ、解説する。
特定外来生物は、生態系や人の生命、農林水産業に被害を及ぼす恐れがある外来種を指す。特定外来生物の輸入や放出、飼養、譲渡は、外来生物法によって厳しく規制されている。特定外来生物には、生物個体だけでなく卵や種子も含まれる。
とくに深刻な影響を与える可能性がある特定外来生物は、要緊急対処特定外来生物として早期発見や拡散防止策が取られている。2023年4月時点で要緊急対処特定外来生物は、ヒアリなど23種が指定されている。また、アカミミガメとアメリカザリガニは一部規制が適用除外となっている。具体的に、どのような生物が特定外来生物として指定されているのだろうか。
カミツキガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科に属する大型のカメである。カナダからエクアドルにかけて分布している。背甲長は最大49cmで、3本の隆条とぎざぎざの後端、長い尾が特徴だ。
温度耐性が高いカミツキガメは水辺に生息しており、日本のほとんどの地域で越冬・繁殖可能である。繁殖期は4〜11月、産卵は5〜9月で、一度に11〜83個の卵を産む。雑食性で、幼体はとくに肉食傾向が強い。(※2)
セアカゴケグモは、節足動物門クモ綱ヒメグモ科に属する生物だ。オーストラリア原産とされている。成熟した雌の体長は約0.7〜1cmで、黒色の体に赤い縦条がある。雄は体長約4〜5mmで、灰白色の腹部に白い斑紋がある。卵嚢は乳白色で直径が1〜1.5cmだ。(※3)
セアカゴケグモは冬季に枯れ草や紙屑で完全な閉鎖巣をつくり、真夏に繁殖する。一生で7〜8の卵塊を産むセアカゴケグモの一卵塊には、数十から200個の卵が含まれる。
ブラックバスは、北アメリカ原産の温帯性魚食性淡水魚だ。スズキ目サンフィッシュ科オオクチバス属に属する9種の総称である。日本には、1925年にルアー釣り用に導入されたオオクチバスとコクチバスが分布している。ブラックバスは現在、全国各地の湖沼や河川で生息している。強い捕食圧で生物群集に影響を与え、水産業にも被害を及ぼしている。同じくサンフィッシュ科のブルーギルも1960年に導入され、全国で定着している。(※4)
ウシガエル(アカガエル)は、アメリカ合衆国東部・中部およびカナダ南東部に自然分布する大型のカエルである。体長が111〜183mm、体重は139〜183gである。水生傾向が強く、池沼や穏やかな流れの周辺に生息する。繁殖期は5〜9月上旬で、雄は「ウオー、ウオー」と鳴きながら繁殖のなわばりを守る。(※5)
卵塊は水草の多い所で浮かび、オタマジャクシは越冬する。肉食性で、昆虫や他のカエル、魚、小型哺乳類や小鳥を食べる。
ヒアリは、南米中部原産のアリである。働きアリは体長2.5〜6mmで女王アリは体長7〜8mm、雄アリは体長5〜6mmだ。1940年代から船や飛行機の貨物に紛れ込み、アメリカやカリブ諸島、オーストラリアなどに分布するようになった。日本では、2017年6月に初めて確認された。(※6)ニュージーランドのみ根絶に成功し、日本では主要港湾での調査や緊急駆除で定着を防いでいる。
キョンは、中国南部と台湾原産の小型シカである。体色は茶褐色で、雄は短い角と発達した犬歯を持つ。キョンの体長は1m以下で、主に森林やヤブで単独またはペアで行動し、朝と夕方に活動が活発になる。通年で繁殖しており、妊娠期間は約210日で一度に1匹の子を産む。(※7)キョンは木の葉や果実を食べ、危険を感じるとイヌのような警戒音を発する。
侵略的外来種とは、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かす外来種を指す。侵略的外来種は本来の生息地では普通の生物だが、新しい環境で大きな影響を与える。侵略的外来種の存在を危惧した環境省と農林水産省は、平成27年に「生態系被害防止外来種リスト」を作成した。(※8)
どのような生物が侵略的外来種にあてはまるのだろうか。
マングース(フイリマングース)は、南アジアから中東にかけて自然分布する小型の食肉類だ。体長は250〜370mmで体重は600〜1,000gである。一般的にマングースはオスがメスより大きい。昼行性で単独生活を営み、森林や農地など多様な環境に生息する。年1回繁殖し、交尾期は1〜8月、妊娠期間は6〜7週間、産仔数は平均2.08である。(※9)雑食性で、昆虫や小動物、果実などを食べる。とくに、アマミノクロウサギの巣穴を利用して餌を探すことがある。
2021年に世界自然遺産に登録された奄美大島では、在来の野生生物を保全する取り組みがなされてきた。その一環として、これまでマングースの防除が進められてきたが、2024年9月にも根絶宣言が出される見通しだ。正式に根絶されたと判断されれば、世界的にも例のない規模での外来種根絶の成功事例になるという。(※10)
グリーンアノールは、アメリカ南東部に自然分布する樹上性のトカゲである。雄は全長180〜200mm、雌は120〜180mmとされている。鮮やかな緑色の体色を持ち、指下薄板で垂直面を登る。視覚が発達しており、数メートル離れた昆虫を捕らえる。繁殖期は3〜9月である。雌は地上に1卵ずつ産み続け、孵化まで約40日かかる。(※11)低温耐性があり、本州中部以南で定着可能である。食性は肉食性で主に昆虫を捕食する。
アメリカザリガニは、米国南部やミシシッピ川河口周辺の湿地に分布している生物だ。体長は最大15cmで、成長とともに赤色に変わる。湿地や水田などに生息しており、1回の産卵数は200〜1000個で、水温が18〜25℃の時期に産卵する。寿命は4〜5年だが、野外での平均寿命は12ヶ月未満である。(※12)高水温や低酸素、水質汚染に強く、劣悪な環境でも定着・増殖する。
ミシシッピアカミミガメは、アメリカ合衆国南部からメキシコ北東部に自然分布する中型種のカメである。雌の方が大型で、背甲長は最大28cmに達する。水域の多様な環境に生息し、寒冷地や山地を除く国内全域で越冬・繁殖可能である。繁殖期は春と秋、産卵は4~7月に行われ、一度に2〜25個の卵を産む。(※13)昼行性で日光浴を好み、雑食性で藻類や水草、水生昆虫などを食べる。
アライグマは、北米から中米に分布する哺乳類だ。頭胴長40〜60cm、尾長20〜40cm、体重4〜10kgである。灰色から明るい茶褐色の毛色で、尾に黒い輪があり、目を覆う黒い帯が特徴だ。都市部から森林・湿地帯の水辺に生息し、巣は木のうろや岩穴、人家などにつくられる。1〜3月に交尾し、4〜6月に3〜6匹の子を産む。夜行性かつ木登りや泳ぎが得意で、雑食性で幅広い食物を摂取する。(※14)
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外来種はどのような問題を引き起こすのだろうか。
外来種は、新しい環境で急速に繁殖し、在来種の生息地や食物資源を奪う。これにより在来種の減少や絶滅が進み、生物多様性が失われる。さらに外来種が持ち込む病原菌や寄生虫が在来種を脅かし、生態系全体のバランスを崩す。
外来種は、農作物を食害し、農業に大きな損失をもたらす。また外来種が拡大することで在来生態系が崩壊し、観光業や漁業に悪影響を与える。さらに一部の外来種は人間に有害な病原菌や寄生虫を運び、健康被害を引き起こす可能性がある。
外来種は、農作物を食害し、収穫量の減少や品質の低下をもたらす。林業においては、樹木の実や皮を食べ木を枯らせる、または病害虫となり森林資源を損なう恐れがある。また水産業では、外来種が在来の魚介類を捕食することで漁獲量が減少し、生態系のバランスが崩れる。
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日本政府(環境省)は、外来種についてどのような対策を講じているのだろうか。
外来生物法は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防ぐために、これらの生物の飼養や輸入を規制し、防除する法律だ。生物多様性の確保と国民生活の安定向上を目指して施行された。日本政府(環境省)は、外来生物法を施行することで外来種を規制している。
特定外来生物は、日本政府(環境省)によってリスト化されている。生息環境や繁殖生態、生態的特徴などもまとめているため、該当する外来種が確認されてもすぐに対策を講じられる。
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外来種を増やさないために、私たちは何ができるだろうか。
海外から動植物を持ち帰る際は、法律や規制を遵守し、無許可での輸入を避けることが大切だ。また観賞用やペットとして飼育される外来種も、適切に管理し逃がさないよう注意することが求められる。さらに旅行者や輸入業者が外来種の危険性を理解し、予防策を講じることで生態系への影響を最小限に抑えられる。
ペットや観賞用の植物が不要になった場合、決して自然環境に放置せず、適切に処理することが大切だ。野外に捨てられた外来種は、在来種と競合し生態系に深刻な影響を与える可能性がある。とくに繁殖力が強い外来種は急速に広がり、在来の生物を脅かすことがある。外来種の適切な管理と処分を徹底し、環境保護に努めてほしい。
不要なペットや植物を他の場所に持ち込むと、自然環境に新たな外来種を広める原因になる。とくに繁殖力の強い外来種は、新しい場所で急速に定着し生態系を崩壊させる可能性がある。外来種の持ち込みや移動は厳禁で、適切に処分して環境保護に努めてほしい。
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外来種を減らすことは、生態系のバランスを保ち、生物多様性の保護や在来種の絶滅を防ぐ。外来種による問題が発生してしまう原因のほとんどに、私たち人間が関係している。ひとりひとりが外来種について意識し、行動を改めることが地域の環境、さらには地球を守ることにつながるだろう。ささいなことでも、外来種を減らすために行動してほしい。
※1 侵略的な外来種|日本の外来種対策
※2カミツキガメ|国立環境研究所 侵入生物DB
※3 セアカゴケグモ|国立環境研究所 侵入生物DB
※4 ブラックバス|全国ブラックバス防除市民ネットワーク
※5 ウシガエル|国立環境研究所 侵入生物DB
※6 ヒアリの基礎情報|環境省
※7 キョン|国立環境研究所 侵入生物DB
※8 生態系被害防止外来種リスト|環境省
※9 フイリマングース|国立環境研究所 侵入生物DB
※10 奄美大島の外来マングース、9月にも「根絶宣言」 5年以上捕獲ゼロ|朝日新聞
※11 グリーンアノール|国立環境研究所 侵入生物DB
※12 アメリカザリガニ|国立環境研究所 侵入生物DB
※13 ミシシッピアカミミガメ|国立環境研究所 侵入生物DB
※14 アライグマ|国立環境研究所 侵入生物DB
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