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コーヒーやチョコレートなど、身近な飲食物にモノカルチャー経済が関わっているのをご存じだろうか。モノカルチャー経済にはメリットがある一方で、生産国が貧困に陥る問題点も指摘されている。この記事では、モノカルチャー経済の歴史的背景、具体例、メリット、問題点、解消法などを解説する。
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モノカルチャー経済とは、特定の作物の生産に依存する極端に偏った経済のこと。特定の作物とは、米や小麦、綿花、原油などの加工されていない一次産品を指す。モノ(mono)は単一、カルチャー(culture)は栽培という2つの言葉を組み合わせた言葉だ。
モノカルチャー経済は発展途上国に多く見られる経済の仕組みであり、ブラジルのコーヒー、インドの綿花、ガーナのカカオなどがよく知られている。
モノカルチャー経済が発展した過程には、歴史的背景が大きく関わっている。
16世紀のラテンアメリカでは、スペイン人やポルトガル人の進出により、サトウキビやコーヒー豆の大農園、いわゆるプランテーションが始まった。その後、植民地支配の影響により、アフリカではカカオやお茶などさまざまな商品作物を、東南アジアではマレーシアが天然ゴムやパームヤシを生産するなどのモノカルチャーの仕組みができていく。
こうした国々では、植民地ではなくなったいまもモノカルチャー経済が続いているのが現状だ。
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モノカルチャー経済の生産物にはさまざまなものがある。代表的なものと代表される国について見ていこう。
コーヒーに代表されるのはブラジルだ。コーヒー豆の栽培を18世紀から行っており、1850年には世界最大のコーヒー生産国となった。現在もその地位を維持している。
インドでは古くから綿花と綿織物が特産品であった。その後イギリスの植民地支配の影響により綿花のモノカルチャー経済が拡大していった。現在は、中国と並び綿花の最大の生産国となっている。
砂糖の原料となるサトウキビのモノカルチャー経済は、植民地支配の影響を受けたカリブ海域の島やブラジル、ジャマイカなど多数の地域で発展した。その代表的な国のひとつがキューバだ。16世紀からサトウキビの栽培が盛んになり、西インド諸島の中心として発展。現在も重要な輸出品目として生産が続けられているが、過去に比べて生産量は減少している。
紅茶のモノカルチャーで代表されるのはスリランカだ。紅茶の栽培は、19世紀のイギリスの植民地時代に始まった。現在でも紅茶の生産量、輸出量では、インドやケニヤとともに世界の主要国となっている。
モノカルチャー経済を語る上で代表的なもののひとつがチョコレートの原料となるカカオ。その主な生産国は、西アフリカに位置するコートジボワールとガーナだ。いずれも植民地時代にプランテーション形式で生産されたことに由来する。2019年時点においても、世界のカカオ豆の生産量は1位がコートジボワール、第2位がガーナだ。(※1)
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モノカルチャー経済のメリットのうち、3つのポイントを確認していこう。
1つ目のメリットは、特定の生産物を扱うことで、専門的な栽培技術が向上することである。
例えば、コーヒー豆は寒さや乾燥に弱く、水はけのいい土壌を好む。他にもさまざまな栽培条件が求められるため、生産量と質をともに高めるには専門的な知識と技術が必要となる。モノカルチャー経済は、ひとつの生産品に特化することで、そうした栽培技術を高めることができる。
2つ目は、生産コストを下げて生産量を上げることで、生産効率を高められることである。
特定の生産物のみを作れば、生産量に対して開発・研究、品種改良などにかかる生産コストを抑えられる。また栽培に必要な肥料や設備などをまとめて購入することで、コストの削減につなげることが可能だ。
3つ目は、需要が一定数ある作物については、国際競争力の強化につながりうることである。
小麦やトウモロコシなどの消費量は、年々増えている(※2)。安定した需要のある生産品は、利益も出やすい。加えてコーヒーやカカオ豆などの嗜好品は、国際市場の動向を見極めタイミングよく高値で売ることができれば、効率良く収益を上げることが可能だ。
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モノカルチャー経済にメリットがある一方で、問題点もある。4つのポイントを紹介しよう。
1つ目の問題点は、販売価格が不安定なことである。例えばチョコレートの原料であるカカオ豆は、この数十年での価格変動が大きいモノカルチャーの1つだ。近年は生産地の天候不順による不作で大幅に高騰している。単一作物のみを栽培する農家にとっては国際取引価格の不安定さは、そのまま収入の不安定さにつながる。
また嗜好品の場合、買い手である輸入国の景気に左右されるという側面もある。
2つ目は、不作時の影響と被害が大きいことである。特定の作物しか生産していなければ、不作の場合にその年の収入が大幅に落ち込んでしまう。その結果、国全体の経済状態が不安定になる可能性がある。
こうして国が貧困に陥れば、教育や他の産業に十分な支援が行き届かない事態も起きる。その影響は国全体に広がるだろう。
3つ目は、環境破壊の原因になることである。特定の作物のみを栽培すると、同じ資源を多く消費することになる。
例えば東南アジア諸国のプランテーションでは、アブラヤシから採れるヤシの実からパーム油を生産している。こうした農園は、広大な熱帯雨林を伐採して開発されているのが現状だ。森林が失われると生態系も破壊され、環境への影響も大きくなる。
4つ目は、長期的な国の発展を阻害することである。先に取り上げた、販売価格が不安定であること、不作時の影響と被害が大きいことと関連して、モノカルチャー経済は、国全体の経済が不安定になりかねない。
国が貧困に陥れば、教育を十分に行うことができない。その他経済活動への投資も難しくなる。その結果産業の振興も期待できなくなるなど、長期的な国の発展が見込めなくなるのが問題だ。
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最後に、モノカルチャー経済の問題点を解消するためには、何が必要かを考えてみる。
新しい産業を開発することは、モノカルチャー経済から脱却する1つの方法である。これまで見てきたとおり、国の財源を特定の生産品に頼ることは経済的リスクになる。多角的な産業を創り出すことでリスクを分散させ、より強力な産業構造を構築することが必要だ。
モノカルチャーは、経済だけでなく環境の面からもさまざまな障害があることは、これまで述べてきたとおりだ。環境リスクも軽減するためには、農産業を多様化することが重要だろう。健全な生態系を取り戻すことは、好循環の農産業の実現にもつながる。
新しい産業の開発と農産業の多様化、この2つを実現するためには、充実した教育とスキルの向上が必要である。新しい産業を開発できる人材を育てるのだ。ただし経済が安定しないと、これを実現することは難しい。将来にわたって教育に取り組むことが重要となる。
上記の3つは、モノカルチャー経済である国が主体だが、輸入している国にもできることがある。それは、生産者や労働者の生活を改善するために適正な価格で取引を行うフェアトレードだ。フェアトレードにより生産者や組合、国が適性な収入を確保できることで、先に述べた新しい産業の開発、農産業の多様化、教育やスキルの向上などに資金を投入することができる。
フェアトレードの認証を受けた製品には、コーヒーや紅茶、チョコレート、ワイン、果物などがある。これらの製品を購入することで、モノカルチャー経済の問題解決の一助になるだろう。消費者である私たちができる、身近な取り組みである。
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モノカルチャー経済は、現在も発展途上国に多く見られる経済の仕組みである。植民地時代に行われたプランテーションが背景にあり、メリットがある一方で、さまざまな問題が指摘されながらこれまで続いてきた。
モノカルチャー経済の問題を解決するためには、生産国だけでなく輸入国の努力も必要だ。私たちにできることを続けながら、生産国とともに問題を解決していく必要がある。
※13. カカオの持続可能性に関する調査|農林水産省
※2「資料1 穀物の生産量、消費量、期末在庫率の推移」|農林水産省
参考・参照
・Food and Agriculture Organization of the United Nations
・歴史は暮らしにどう影響している?〜歴史と生活〜|NHK高校講座
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