「生ごみを養分にキノコを育てる」スタートアップ NYのレストランで提供

生ごみからつくったキノコ

Photo by Afterlife

食品廃棄物が大きな問題となっているニューヨーク。レストランから出た生ごみを養分にしてキノコを栽培し、販売するユニークな事業が、あるスタートアップによって行われている。

Kojiro N

編集者・ライター

東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。現在はイギリス北東部で暮らす。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。

2024.06.03
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レストランから集めた生ごみが20種類以上のキノコに

チェスナッツマッシュルーム

Photo by Afterlife

チェスナッツマッシュルーム。

アメリカ・ニューヨーク市クイーンズ区のとある工業ビルの一室が、キノコ栽培のスタートアップ「Afterlife」の室内農場だ。広さ約325平方メートルの部屋では、主にマンハッタンのレストラン向けに20種以上のキノコを育てている。そして驚くことに、栽培に使用するのは、キノコの販売先であるレストランから出た食品廃棄物だ。

レストランから届けられた食品廃棄物の中身は日によって異なるが、最初の作業は生ごみを細かく砕くこと。機械で小さな断片になるまで粉砕された食品廃棄物は木材チップと一緒に袋詰めされ、高温の蒸気と圧力によって殺菌される。これは、後の工程で注入する菌糸(キノコを形成する真菌のネットワーク)の成長を阻害しないため。

菌糸が注入された菌床の袋は棚に並べられ、真菌が食品廃棄物を分解吸収することで成長し、数週間後にはキノコが袋から顔を出す。

レストランから出る生ごみの8割は調理過程のもの

室内農場に並ぶ菌床

Photo by Afterlife

棚には菌床がぎっしりと置かれている。

Afterlifeの設立者の一人、シエラ・アレア氏は、「埋立地から食品廃棄物をなくす方法だ」と話す。分別されずに埋立地へと送られた食材廃棄物は、腐敗する過程でメタンガスを発生させるため、食品廃棄物を減らすことの意義は大きいと言える。メタンガスは二酸化炭素に次ぐ気候変動の要因として問題視されている。

同社のもう一人の共同設立者であるウィンソン・ウォン氏によれば、レストランで捨てられるごみの80〜85%は調理の工程で出たもの。たとえば卵の殻やレモンの切れ端など、人が通常口にしないものだ。食材廃棄物の削減に取り組む非営利団体「ReFED」によると、2022年に食品サービス業界で出て廃棄場に送られた食品廃棄物は1,300万トンにも及ぶという。

Afterlifeがキノコ栽培に使う食品廃棄物も、客が皿に残した食事ではなく、調理過程で料理人が出したものだけ。料理人の立場からすれば、自分が出した生ごみがキノコになって戻ってくるユニークな仕組みだ。

食品廃棄物の削減に取り組むニューヨーク

Afterlifeでは毎日キノコを収穫し、それを5ポンド(2.27kg)の箱に詰めて取引先のレストランに届けている。ほかにも学校や病院にも卸しているが、いまのところ一般の消費者向けには販売していないという。

家庭や飲食店から出る食品廃棄物が大きな問題となっているニューヨーク市。2024年10月までに市内全域でごみ出し時の食品廃棄物の分別を義務付け、回収した生ごみをコンポストなどに役立てるプログラム「ゼロウェイスト法」が可決されたことでも話題になったが、Afterlifeのような取り組みにも大きな期待が寄せられている。スーパーマーケットに食品廃棄物から生まれたキノコが並ぶ日もそう遠くはないのかもしれない。

※参考
Afterlife
Growing Mushrooms From Food Waste | The New York Times

※掲載している情報は、2024年6月3日時点のものです。

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