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近年SDGsという言葉が広がっており、持続可能な社会の必要性が叫ばれている。しかし、SDGsが広がるより以前、「MDGs(ミレニアム開発目標)」という類似した概念があったことは知っているだろうか。この記事では、MFGsとは何なのか、SDGsとの関係や違いについて解説する。
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2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで、189の国によって「国連ミレニアム宣言」が採択された。MDGsは、このときの「ミレニアム開発目標」のことで、「Millennium Development Goals」の略称。
MDGsは、2000年から2015年までの15年間に世界各国が達成すべき具体的な目標を提供し、開発の進捗状況を監視するための枠組みを提供した。これらの目標は、各国政府や国際機関、NGOなどが協力して貧困削減と持続可能な開発を達成するための取り組みを推進し、一定の成果をもたらし、SDGsに役割を引き継いだ形となる。
8つの具体的な開発目標が定められ、2015年までの間に世界中で取り組むべき国際社会共通の目標として掲げられた。
1 極度の貧困と飢餓の撲滅
1日1.25米ドル未満で生活する人々の割合を半減させ、飢餓に苦しむ人々の割合も半減させる。
2 普遍的な初等教育の達成
すべての子どもが初等教育の全課程を修了できるようにする。
3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
男女格差を解消し、女性に対する教育機会の平等を達成する。
4 幼児死亡率の削減
5歳未満の幼児の死亡率を3分の2引き下げる。
5 妊産婦の健康状態の改善
妊産婦の死亡率を4分の3引き下げ、リプロダクティブ・ヘルスの普及を達成する。
6 HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延防止
HIV/エイズのまん延を阻止し、マラリアなどの主要な疾病の発生を防止する。
7 環境の持続可能性の確保
持続可能な開発の原則を反映させ、環境資源の喪失を防止し、安全な飲料水と衛生施設の普及を促進する。
8 開発のためのグローバル・パートナーシップの構築
開放的で予測可能な貿易と金融システムの構築、後発開発途上国や内陸開発途上国の特別なニーズへの対応、債務処理、必須医薬品の提供、情報通信技術の普及など、国際的な協力を推進する。
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MDGsがSDGsに引き継がれた背景には、一定の成果と課題がある。ここでは、MDGsが残したものについて解説する。
MDGsでは、各目標においてそれぞれ一定の成果を獲得している。例をあげると、目標1の極度の貧困を解決する目標において、1日1.25米ドル未満で生活する人々は1990年の19億人から2015年の8億3,600万人と、半数以下に減少した。(※1)
また初等教育の就学率は増加し、学校に通っていない子どもの数も減少した。幼児死亡率や妊産婦の死亡率も大幅に減少し、HIV感染率やマラリア発生率の減少、安全な飲料水と衛生施設の確保などが達成されている。
都市開発に関しては、インターネットの普及も進んだが、先進国と途上国の間には依然として格差がある。
成果の一方で、MDGsには目標が達成できなかった部分や、今後の課題もある。
初等教育の完全普及が目標だったが、開発途上地域の就学率は91%(2015年)に留まり、目標達成に至らなかった。また、母子に関する保健分野では、5歳未満児死亡率は53%減少したものの、目標の3分の1までの削減には至らず、妊産婦死亡率も目標の4分の1までの削減に達しなかった。
さらに衛生分野では改良された衛生施設へのアクセスが半減に至らず、割合が32%にとどまっている。地域ごとの達成状況の差異も課題であり、とくにサハラ以南のアフリカや南アジア、オセアニア諸島など経済的に困窮しているエリアでは目標達成の遅れが顕著である。(※2)
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SDGsは、MDGsでやり残したことや達成できなかった目標に関して、今度こそ確実な成果を果たすために制定された。
SDGsはMDGsで定められていた母子の健康や教育とジェンダー平等などの社会的側面だけでなく、気候変動、持続可能なエネルギー、生物多様性保護などの環境的側面も盛り込んでいる。
より包括的に地球環境を後世に持続可能な形で残すための具体的な目標が制定されており、発展途上国の開発においても経済成長だけでなく、環境保護や社会のこれからのあり方を含めた持続可能な開発を目指している。
ここで改めて、SDGsとは何か振り返ろう。SDGsとは「Sustainable Development Goals」を略した言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」という意味になる。国連で2015年に採択され、地球上で起きているあらゆる課題を17に分類し、2030年までにの解決を目指している。
SDGsは一部の国が取り組むものではなく、民間企業や民間団体、さらには我々一人ひとりのライフスタイルを変容させることで取り組んでいくものとされている。地球上の誰もが豊かで健康的かつ、持続可能な生活を送れるようにすることを目指している。
2015年までに行われていたMDGsと、現在の目標であるSDGsの違いを改めて紹介しよう。
MDGs | SDGs | |
---|---|---|
達成期限 | 2015年 | 2030年 |
目標数 | 8の目標 | 17の目標 |
ターゲット数 | 21 | 169 |
対象地域 | 主に開発途上国 | すべての国々 |
視点 | 主に貧困削減や基本的な人間のニーズの達成に焦点を当てている | 経済、社会、環境の3つの側面をバランスよく取り込んでおり、より包括的な持続可能な社会を目指している |
目標 | 極度の貧困の削減、教育の普及、性差の解消、母子保健改善など | 貧困の根絶、飢餓の撲滅、健康と福祉の促進、教育の普及、ジェンダー平等の達成、清潔な水と衛生の提供、持続可能なエネルギーの普及など、より広範な目標が含まれている |
主体 | 国連や開発援助機関 | 国連や政府だけでなく、民間企業や一般の人々も含めた幅広い利害関係者が参加し推進される |
SDGsとMDGsの違いの一つは、より多くの人々が持続可能な社会を目指して参加する点にある。ここでは、個人でできるSDGsに関する取り組みを紹介していく。
一人ひとりが食品ロスに関する意識をもつことで、SDGsの目標である飢餓と貧困の撲滅や持続可能な消費と生産の達成を目指すことにつながる。具体的には、食材の購入時に適切な量を計画し、保存方法を工夫することで賞味期限切れなどで起こる食品ロスを減らせるだろう。また自宅での賞味期限の管理や、残り物のリメイク調理も有効な方法だ。
リサイクルやリユースは、現在ある資源の効率的な利用につながり、気候変動の緩和にも貢献する。リサイクルやリユースについては、ふだんのごみの扱い方を変えるだけでも参加できる。分別収集に積極的に参加し、リサイクル可能な素材を正しく分別して回収することが大切だ。また、リサイクル素材が使われている製品の購入も貢献につながる。
環境に配慮した製品やサービスを選ぶことで、持続可能な消費と生産や地球温暖化の防止につながる。環境に配慮した製品やサービスとは、例えば再生可能エネルギーを利用したサービスなどが挙げられる。家を建てる際には太陽光発電など、再生可能な自然エネルギーを導入することで持続可能な社会の実現につながる。また、そこまで大掛かりではなくとも、エコラベルや環境に関する認証を得ている商品を日常的に選択することでも貢献可能だ。
ふだんの移動手段においても、SDGsに貢献可能だ。公共交通機関や自転車の利用は、持続可能な都市とコミュニティの構築や気候変動の緩和につながる。車の利用を減らし、公共交通機関や自転車を積極的に利用することで、交通渋滞や二酸化炭素排出量の削減につながる。
節水や節電は清潔な水と衛生設備の維持につながり、クリーンエネルギーの普及にも貢献する。日頃から、水道や電気など当たり前のように使っているエネルギーの節約意識を持ち、使わない時は蛇口や電源を切っておくことが大切である。また、省エネ家電の利用や自然エネルギーを選択することも効果的だろう。
寄付は、貧困や教育に課題を抱えている発展途上国に直接的に関わる手段だ。SDGsでは貧困の撲滅や質の高い教育の提供などを目標に掲げており、これらの平等の達成はMDGsでは成し遂げられなかったことである。少額の寄付でも構わない。自身の経済状況に合わせ慈善団体や国際機関に寄付することで、発展途上国が抱える格差の問題に大きな影響を与えるだろう。
ボランティアなど社会的活動への参加は、SDGsに取り組む人々の輪を広げ、平和と公正の推進や持続可能なコミュニティの実現に貢献する。SDGsに関連するボランティア活動や地域のイベントはインターネットを検索すればすぐに見つかる。自らの行動で、地域社会や国際社会の課題に関心を向け行動することが、より大きな輪となってSDGsの達成につながるだろう。
MDGsでの成果を引き継ぎ、社会的な問題だけではなく環境や資源も対象として広げたものがSDGsである。またSDGsでは、一部の発展途上国だけではなく地球に住む多くの人々の参加が呼びかけられており、一人ひとりの行動を見直すことで持続可能な社会の実現を目指している。SDGsを通して多くの人が社会への参加意識をもち、よりよい社会をつくっていくことが求められている。
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