クライメイト・ニュートラル(気候中立)とは 類義語の解説と世界の動き

青いソーラーパネル

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人や企業、団体などが生活や製造の活動により排出する温室効果ガスの総排出量を規定に沿って算出し、実質ゼロにする取り組みがクライメイト・ニュートラル(気候中立)。カーボン・ニュートラルなど類義語との違い、2050年までに気候中立の実現を推進するEUや日本の対応を解説する。

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2024.03.08
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

クライメイト・ニュートラル(気候中立)とは

ゴールデンアワーの芝生の上の風車

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クライメイト・ニュートラル(気候中立)とは、人々、企業、団体などが日常生活や製造工程などの活動によって排出する温室効果ガスを、吸収量やそのほかの削減量を差し引いて総排出量を算出し、実質(ネット)ゼロにするという環境保護への取り組みだ。

京都議定書で定義されている温室効果ガス=メタンやN2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどをすべて対象とする。温室効果ガスの排出をゼロにすることが難しい分野や活動においては、残りの排出分を代替措置やそのほかの活動で削減・吸収することで、その排出量のすべてを実質(ネット)ゼロにすることを目指す。(※1)

クライメイト・ニュートラルとカーボン・ニュートラルの違い

クライメイト・ニュートラルとカーボン・ニュートラルは、ほぼ同義であり、ともに環境保護の観点から重要な概念だが、やや違いがある。

カーボン・ニュートラルは、主に二酸化炭素(CO2)に焦点を当て、その排出量を吸収や削減で相殺し、実質的にゼロにすることを目指す取り組み。

一方、クライメイト・ニュートラルはメタンやフロンなども含む温室効果ガス全般を対象とする。「クライメート(Climate)」は英語で「気候」を意味し、温室効果ガスを積極的に除去し、地球環境にポジティブなインパクトをもたらすような取り組みを指す。

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クライメイト・ポジティブとは

クライメイト・ポジティブとは、温室効果ガスの排出量より、削減する量を多くすること。メタンやフロンなども含む温室効果ガスを、拮抗にとどまらず「排出<吸収」となる状態を目指す概念だ。

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カーボン・ポジティブとは

カーボン・ポジティブとは、二酸化炭素の吸収量が排出量を上回ることを意味する。カーボン・ネガティブも同様の意味だが、一般的にはカーボン・ポジティブと呼ばれることが多い。もともとは環境科学分野の専門用語で、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを削減し、排出量よりも吸収量が多くなった状態を指す言葉であった。

カーボン・オフセットとは

カーボン・オフセットとは、温室効果ガスの排出削減に取り組むものの、削減が難しい部分について別の方法で埋め合わせること。たとえば再生可能エネルギープロジェクトへの投資、森林保護プロジェクトへの資金提供など、二酸化炭素排出を相殺するための活動を指す。

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「クライメイト・ニュートラル認証」とは

"クライメイト・ニュートラル"という言葉は、「クライメイト・ニュートラル認証」で知る人も多いのでは。この認証はアメリカのアウトドアブランド「BioLite」とプロダクトデザイン会社「Peak Design」のCEOが2019年に共同で立ち上げた非営利団体「クライメイト・ニュートラル(CLIMATE NEUTRAL)」が付与するもの。(※2)

同団体は低炭素社会の実現するため、企業の二酸化炭素排出量の測定や削減、オフセットについて、ガイドラインを策定・認証し、温室効果ガス排出実質ゼロを目指している。

認証取得の基準と3つのステップは次のとおり。

1.測定

前年における製品やサービスの製造から納品までに発生した二酸化炭素排出量を測定。測定は、スコープ1(直接排出)、スコープ2(間接排出)、スコープ3(サプライチェーンの排出)のカテゴリーに基づいて行われる。

2.オフセット

前年に排出した二酸化炭素量と同等のカーボンクレジットを購入。カーボンクレジットは、温室効果ガスを削減・吸収するプロジェクトを価値化したもので、企業活動で排出した二酸化炭素をオフセット(相殺)する。

3. 削減

今後1~2年以内に二酸化炭素排出量を減らすため、「クライメイト・ニュートラル」が作成したガイドに基づいて削減行動計画を作成し、実行。年に一度、進捗状況を報告する必要があり、その内容は「クライメイト・ニュートラル」のWebサイトに掲載される。

認証のメリットとしては、消費者は認証ラベルを目印に、気候変動対策にコミットしている商品・サービスを選択できる。また、企業は持続可能なビジネス展開とESG投資対策に有利となる。

世界中で300以上のブランドが「クライメイト・ニュートラル認証」を受けており、気候変動問題に対する取り組みが進んでいる。

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クライメイト・ニュートラルに関する世界と日本の動き

惑星Bnoポスターを掲げる人々

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クライメイト・ニュートラルについては、世界中で取り組みが進んでいる。2050年までに「気候中立(温室効果ガスの排出=ゼロ)」を目指すための政策「欧州グリーン・ディール」を発表したEUや、「エネルギー戦略2050」に基づいてエネルギー転換を実施するスイス、そして日本の取り組みを紹介する。

EU

EUは2050年までに、「温室効果ガスの排出ゼロの初の大陸になる」という目標を掲げ、政策「欧州グリーン・ディール」や、法的拘束力を持つ「欧州気候法案」を掲げている。

内容は、EUの温室効果ガス排出量の75%以上を占めるエネルギー部門を脱炭素化する、エネルギー効率の低い建物を改修し、エネルギー料金・使用量の削減を促進する、再生材使用率12%のEU内産業のイノベーションを促進し、グリーン経済で世界のリーダーになることを支援する、EUの温室効果ガス排出量の25%を占める輸送において、よりクリーンで低コストかつ健康的な私的移動手段や公共交通形態を普及させる(持続可能なスマート・モビリティへの移行)、など。(※3)

そのほか、2050年までの気候中立への移行に向け、再生可能エネルギーの十分な供給量と競争力のある価格設定、国の制度との二重負担にならない、機能的なEU内排出量取引制度なども目標に盛り込んでいる。

スイス

スイスは「エネルギー戦略 2050」に基づいて、クライメイト・ニュートラルを達成し石油エネルギーへの依存を減らすために、エネルギー転換を実施。スイスで生産される再生可能エネルギーは約60%を占める水力発電がもっとも多く、次いで20%弱が木材、そして廃棄物の利用、環境熱、太陽エネルギー、バイオ燃料、バイオガス、風力エネルギーが続く。(※4)

再生可能エネルギーの割合は2020年にはエネルギー消費量全体の約27%に上昇し、EU平均の19%弱を上回った。気候変動問題に対する国際的なリーダーとして、持続可能な未来のためにさまざまな取り組みを推進している。

一例として、スイスの企業「クライムワークス(Climeworks)」は、大気中のCO2を分離・回収して永久に貯留する世界最大の設備をアイスランドに設置。この回収技術は、「直接空気回収技術(DAC)」と呼ばれ、大気中のCO2を取り出して地中に永久的に貯留する仕組みだ。同施設は年間最大4000トンのCO2を抽出できる。(※5)

日本

日本では2020年10月に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。これにより、2050年までに日本の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指している。

これを踏まえ、経済産業省を中心に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定。産業政策とエネルギー政策の両面から、成長が期待される「洋上風力・太陽光・地熱産業」や「水素・燃料アンモニア産業」、「自動車・蓄電池産業」、「カーボンリサイクル・マテリアル産業」、「住宅・建築物・次世代電力マネジメント産業」などの14の重要分野について実行計画を策定し、目標を掲げている。(※6)

また、2021年4月に、日本政府は2030年度までに温室効果ガス排出量を46%削減する目標を公表。さらに、50%削減にもチャレンジすることを明らかにしている。(※7)

企業の取り組み事例

木の壁の前に停められた白い車

Photo by Zaptec on unsplash

クライメイト・ニュートラルに向けた海外と日本の企業の取り組み事例をいくつか紹介しよう。

LANXESS(ランクセス)

「ランクセス」は、ドイツのケルンに本社を構える特殊化学品メーカーで、ポリマーや特殊化学品、合成ゴムやプラスチックなどを製造。日本法人「ランクセス株式会社」では、自動車、タイヤ、IT、電機・電子、農業、医薬、水処理業界などの化学品を販売する。ランクセスは、気候変動対策に向けて積極的な目標を自らに課している。

2004年の設立以来、ランクセスは自社の温室効果ガス排出量を約650万トンから約320万トン(ともにCO2換算)へと半減。極めて低排出なエネルギーまたはクライメイト・ニュートラルなエネルギーのみを購入。2040年までに排出量を320万トンから30万トン未満に削減し、残りの排出分は、代替措置により相殺する。(※8)

2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)の実現を目指して、さらなる取り組みを進めている。

adidas(アディダス)

世界的なスポーツ用品メーカー・アディダスは、2050年までに原材料の生産から製品寿命に至るまでの全体で、クライメートニュートラルを達成することを最終目標としている。

そのために製品のカーボンフットプリントを計測するツールを導入し、一般公開をおこなったり、カーボンフットプリントの大部分を占める染色工程において、水や化学物質の使用量を抑えた環境に配慮した染色方法の開発を行うなどの対策を行なっている。

これらにより、2025年までに、2017年に比べて1製品あたり平均15%のカーボンフットプリント削減を目指す。(※9)

all birds(オールバーズ)

2016年に元ニュージーランド代表のサッカー選手とバイオテクノロジーの専門家が立ち上げたシューズブランド。インソールにはヒマシ油、靴底にはサトウキビを使用するなど、カーボンフットプリントを抑えたプロダクトを展開。環境に配慮したさまざまな材料を使用しており、クライメイト・ニュートラル認証を取得している。

P.F.Candle Co.(ピー・エフ・キャンドル)

ロサンゼルスを拠点に活動する​フレグランスカンパニー。製品はすべてビーガン(動物性原料不使用)、動物実験の禁止、フタル酸フリーを徹底し、キャンドルは100%アメリカ国内産のソイワックスを原料としている。

「クライメイト・ニュートラル」の認証を取得し、年間のCO2排出量に基づくクレジットを購入することで、植林や再生可能エネルギー開発などのプロジェクトに投資している。CO2排出削減計画の実施とこれらの投資により、年間のCO2排出量を完全に相殺している。

Klean Kanteen(クリーン・カンティーン)

保温保冷対応のインスレートボトルやフードキャニスターなどを展開するアメリカ・カリフォルニアのブランド。ステンレス製でBPAフリー(ビスフェノールAと呼ばれる化学物質不使用)のボトルは、リユース可能だ。こちらもクライメイト・ニュートラル認証を取得。

いま知っておきたい「クライメイト・ニュートラル(気候中立)」

緑の草

Photo by Johannes Plenio on unsplash

2050年までに脱炭素社会の実現をめざすことが世界共通の目標となったいま、そのひとつの指標と取り組みとして、クライメイト・ニュートラルも今後より注目されていくだろう。

カーボンオフセットやカーボンニュートラルなど、類義の言葉があるなかで、認証を含めた「クライメイト・ニュートラル」の特徴は、二酸化炭素だけでなく温室効果ガス全般を対象とすること、そして、オフセットするだけでなく排出量も実際に削減しなければならない点にある。

企業はクライメイト・ニュートラルに即したビジネスモデルを構築できれば、競争力を高めることができるし、私たち個人としては、「クライメイト・ニュートラル認証」が購買の判断の一助となる。クライメイト・ニュートラルは、いま知っておきたい言葉のひとつ。

※掲載している情報は、2024年3月8日時点のものです。

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