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シンガポール国立大学(NUS)の医学部が「持続可能な医療センター」を開設する。医療業界の脱炭素化に関する研究を行い、気候変動に関連した患者の急増に備え、医療従事者についても育成するという。同施設はアジア初、世界最大規模となる予定だ。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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シンガポール国立大学は、同大学医学部(ヨン・ルーリン・スクール・オブ・メディスン)に新たな施設「持続可能な医療センター」を設置することを発表した。シンガポールの医療におけるネットゼロ移行を加速させるとともに、気候変動による患者の急増に対応できる医療従事者の育成も図るという。
世界の温室効果ガス排出量を見てみると、実は医療セクターが占める割合は8%にもおよぶ。毎年500トン以上の廃棄物が発生し、これは海運や航空(各約3%)をも上回っている。また世界経済フォーラムによれば、医療機関だけでもオフィスビルの2.5倍の温室効果ガスを排出しているという。
医療機関における温室効果ガス排出の主な原因のひとつは、デスフルランと呼ばれる麻酔ガス。麻酔薬のボトル1本で排出される温室効果ガスは、440kgの石炭を燃やした場合に相当するそうだ。また医療セクターにおける排出量の約70%は、医薬品、化学薬品、医療機器、病院設備、輸送、廃棄といったサプライチェーンによるものである。
こうした医療部門が抱える問題や、迫り来る気候変動に対応するために設置されたのが、「持続可能な医療センター」だ。同施設はアジア初、世界最大規模になるという。
同センターは、医療システムから排出される二酸化炭素の量を最小限に抑え、気候変動に対応できる医療を推進し、ネットゼロへの移行を促進することに重点を置いている。世界中の専門家と臨床医を集め、気候変動に対する医療界の対応をリードし、臨床診療を変革する新しい医療分野の確立を目指す。
さらに世界初の「サステナブル医学修士」プログラムの導入も計画。気候変動によってもたらされる健康被害や病気について、医療従事者が理解を深められるようなプログラムを2024年から提供する。
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「持続可能な医療センター」の理事長を務めるニック・ワッツ教授は、イギリスの国民保健サービス(NHS)の持続可能性最高責任者を務めた人物。医療はネットゼロを実現するのが難しい分野であるとし、しかし緊急に対策を講じなければ、気候変動はシンガポールを含む世界中の医療システムを圧倒すると警鐘を鳴らす。
そして「シンガポール国立大学医学部に新たに設立された持続可能医療センターは、この課題に取り組み、医師、看護師、病院が感染症の蔓延や異常気象に備えます。同時に研究を行い、国全体でネットゼロ医療を実施し、患者の健康を改善し、医療予算を削減します」と意気込みを話した。
新施設の研究者たちは、国内の医療機関や診療所から得た医療費のデータをもとに、シンガポールの医療セクターにおける炭素排出に関する初の総合評価を行う。このプロジェクトは2024年3月に開始し、2024年末に完了予定だという。
シンガポールの医療業界におけるこうした先進的な取り組みに、日本をはじめ世界はどのように反応するのか。世界の医療界全体がいま、気候変動への対応を問われている。
※参考
NUS Medicine sets up new Centre for Sustainable Medicine|NUS NEWS
New NUS Medicine centre aims to decarbonise healthcare, prepare for climate-related health woes|The Straitstimes
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