人種差別における世界や国内の歴史・問題とその原因をわかりやすく解説

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世界では、いまだに人種差別が大きな問題となっている。その歴史は長く、現在もその差別によって苦しむ人々や、大きな格差などへとその影響は広がり続けている。世界における人種差別の歴史や、日本での人種差別についてわかりやすく解説する。

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2023.11.17
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そもそも「人種差別」とは

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人種差別とは、民族や文化、言語、肌の色などの違いに対する偏見によって、固定の人種を差別することを指す。差別が生まれる背景には、ある集団に属する人々に対しての固定観念があると考えられる。その固定観念に、好感や嫌悪、軽蔑といった感情を伴うことで偏見が生まれるのだ。

例として、性別の違いによって固定的な思い込みや偏見を持つ「ジェンダーバイアス」が存在する。性別によって能力差があると決めつけ、社会的な評価や扱いに差がつけられることで、ジェンダーによる差別が生まれている。このように、他の集団や他者に対する固定観念が偏見を生み、差別をつくり出してしまうのである。

これらの人種差別は大きな社会問題となっており、SDGs 目標10「人や国の不平等をなくそう」のなかでは、人や各国間の不平等を減らす目標が設定されている。

世界における人種差別の歴史

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人種差別の歴史を遡ると、世界各地で多くの人々が、歴史的、社会的、文化的、経済的理由による差別に苦しめられてきた。世界では、現在も人種を理由とした差別が各地で起こっている。これまでの歴史を振り返り、とくに大きなものを取り上げて解説する。

奴隷貿易

奴隷貿易とは、奴隷を商品として取り引きする貿易のことだ。16世紀以来、新大陸の植民地化が進むにつれて、人口が減少して労働力が不足したことを背景に、アフリカ大陸各地から多くの黒人が南北アメリカ大陸や西インド諸島に送られ、現地で奴隷として使役された。アフリカから運び去られた住民は、16世紀以後300年間でなんと5000万人に達するという。彼らの人権は認められず、奴隷商人によって商品として売買された。また、奴隷貿易の輸送船に乗船させられる黒人の待遇は拷問に等しく、輸送される全黒人の20%以上が航海の間に死亡したと言われている。

アパルトヘイト

アパルトヘイトとは、南アフリカ共和国で行われていた合法的に黒人を差別できる政策のこと。1911年に制定された最初の人種差別法「鉱山労働法」により、黒人の就業機会は極めて少なくなった。さらに、公共施設は白人用とそれ以外に区別され、黒人が白人専用の場所に立ち入ると逮捕されることもあり、異人種間の結婚や恋愛も認められていなかった。一方で、この政策に対する反対運動が起こり、1980年代には国際社会から経済制裁が発動されるようになった。

ホロコースト

ホロコーストとは、1930~40年代にかけてナチスドイツ政権その同盟国や協力者が行った、国ぐるみの組織的迫害や大量虐殺こと。ユダヤ人への差別的な法律が次々に施行され、ドイツ国内でのあらゆる公共サービスから切り離し、生活を不便にさせただけでなく、ユダヤ人以外との結婚禁止や、市民権剥奪までを制定した。ナチス政権によって虐殺されたユダヤ人は600万人を超え、この差別は旧ソ連捕虜軍やスラブ系民族などにまで広がった。ナチスドイツ軍による無差別な虐殺で、1945年までに約200万人もの人々が命を落としたと言われている。

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ルワンダ大虐殺

1994年4月、フツ族出身の大統領ハビャリマナ氏の飛行機が何者かによって撃墜されたことをきっかけに、フツ族によるツチ族に対する虐殺「ルワンダ大虐殺」が開始された。ツチ族は「ゴキブリ(Inyenzi)」と呼ばれ、暴力行為を受けただけでなく、強姦やトラウマ、障害といったあらゆる傷跡を国民と社会に残された。これにより、約100日間で約100万人が亡くなったと言われている。

ジョージ・フロイトさん事件

2020年5月25日、アメリカミネソタ州ミネアポリスで偽札使用の通報を受けた白人警官が、路上でフロイドさんの首を9分29秒間膝で押さえつけて死亡させた事件。この事件は人種的少数派に対する差別的で過剰な暴力と見なされ、警官は免職後、禁錮22年6ヶ月の判決を受けた。さらに、この事件は世界的影響を及ぼし、人種差別や警察暴力に大勢が抗議するきっかけとなった。

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日本における人種差別

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日本国内でも、長い間、国民の一部の人々が経済的・社会的・文化的に低い状態に置かれ、著しい人権侵害にさらされている。日本国内にある人種差別は、主に「アイヌ民族の人権問題」、「同和問題」、「外国人労働者問題」の3つに分けられる。

アイヌ民族の人権問題

北海道を中心とした地域に先住するアイヌの人々は、これまで就職や結婚などにおいてさまざまな差別を受けてきた。15世紀以降、アイヌ独自の文化や生活様式が日本人によって侵害されるようになった。明治時代以降、一方的な同化政策により、アイヌの生活様式などがすべて奪われ、独自の文化は失われ、差別のなかで貧困に直面した。現在でも、アイヌの人々に対する誤った認識による差別や偏見が残っている。

同和問題(部落差別)

「同和問題(部落差別)」とは、人種が同じでも、特定の地域出身であることや、そこに住んでいることを理由に、社会的、経済的、文化的に低く見られ、結婚や就職などで差別を受けるという日本固有の人権問題のこと。江戸時代に生まれた身分制度により、死に関する仕事を行う人々は、穢多(えた)・非人(ひにん)と呼ばれ、生活のすべての面で厳しい制限を受け、差別されていた。現在もなお、同和地区(被差別部落)出身という理由でさまざまな差別を受け、基本的人権を侵害されている人々が存在する。

外国人労働者問題

近年では、外国人労働者の受け入れが加速する一方で、劣悪な労働環境やいじめ、パワハラなどさまざまな問題が存在している。上限を超えた長時間労働や、最低賃金にも満たない賃金、外国人やハーフであることを理由とした嫌がらせ、外国人の居住や就職を拒否する事例などが起きている。特定の民族や種族、国籍を持つ外国人の尊厳を傷つける環境や労働者問題は、国際的に問題視されて続けている。

人種差別解消のためにわたしたちができること

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長い歴史のなかで行われ、いまだに続く人種差別を解消するために、私たちにできることをいくつかのポイントに分けて解説する。

人種差別の歴史について知る

まずは、人種座別の歴史について理解を深めることが大切だ。これまで、世界や日本国内でどんな差別が起こってきたのか、そして現在も起きている問題にはどのようなものがあるのか。これらを知り、差別に苦しむ人々が置かれた状況に対する理解を深めることで、自分が持っていた誤った偏見に気づくこともできるだろう。

無意識のバイアスがないか意識する

自身にも無意識のうちに持っている偏見やステレオタイプがある可能性を自覚することや、メディアの報道などについて、それが事実なのか、報道の方向性が偏っていないかなどを確認することが大切だ。また、無意識に発する言葉が誰かにとって差別的な言葉となってしまう可能性を十分に理解し、常に注意を払いながら発言することも重要だ。

偏見を抱かせない教育をおこなう

人権差別には、幼い頃に刷り込まれた偏見やステレオタイプが原因となることが多い。そのため、性別や人種による偏見やステレオタイプを抱かない教育を行うことが重要だ。また、親はもちろん、周囲の大人たちの差別的発言や誤った考えを正す必要があると言える。ステレオタイプが形成される前の早い段階から、差別の歴史に関する教育を強化し、差別や偏見がもたらす悪影響について考える機会をつくることも重要である。

人権相談窓口に相談する

法務省による人権相談窓口では、さまざまな人権問題についての相談を受け付けている。セクハラやパワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめ、インターネットでの誹謗中傷、差別などについて、電話やインターネットなどを通じて、無料で相談することができる。悩みを抱えたら、一人で悩まずに相談してみることをおすすめしたい。

人種差別のない未来へ向けて

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Photo by Duncan Shaffer on Unsplash

世界各地には、生まれた国や人種、民族、宗教、性別、障害の有無、性的指向など、本人に責任がないにもかかわらず、不平等な差別を受け、苦しむ人が大勢いる。また、日本にも差別によって苦しむ人が大勢いることを忘れてはならない。

これらの問題を解消していくために、まずは一人ひとりの意識を変えていくことが重要だ。一つでも多くの差別がなくなる未来のために、まずはこれらの歴史を知ることが大きな一歩となるだろう。

※掲載している情報は、2023年11月17日時点のものです。

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