コロナ禍で浮き彫りになった「BAME」の問題点 未だなくならない人種差別の現状

ノートパソコンを触りながらスマホを操作する黒人女性

BAMEとは、Black(黒人)、Asian(アジア人)、Minority Ethnic(少数民族)の略称。イギリスで白人以外の民族を指す言葉として使われている。黒人差別に対する抗議や、新型コロナによるアジア人差別の激化を背景に、人種差別につながる言葉であると問題視されるようにな

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2021.04.30

「BAME(ビー・エー・エム・イー)」とは

花吹雪のなかで歓喜する非欧米圏の人

Photo by Hieu An Tran on Unsplash

「BAME」(ビー・エー・エム・イー)とは、Black(黒人)、Asian(アジア人)、Minority Ethnic(少数民族)の頭文字を取った略称である。イギリスにおいて、白人以外の民族グループを表す言葉として長きにわたって使われてきた。アフリカ系やカリブ系、インド系、バングラデシュ系など、さまざまな人種が含まれる。

この言葉の起源は、1970年代のイギリスで黒人たちが立ち上がった反人種差別運動にある。当初、黒人とその他の民族を示す「BME」が使われていたが、1990年代にアジアをルーツとする人々を表現するために「A」が追加されるようになったあ。

BAMEが注目を集めた背景

「BAME」は、現在も英国において白人とそれ以外の民族を比較する際に度々使用されている。2020年イギリスの統計局は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について「感染によって亡くなる黒人は白人のおよそ4倍にのぼる」という数字を発表。

イングランドの保健当局も、「黒人やアジア系は、白人よりも感染後死亡する割合が高い」と伝えた。これは、雇用や住宅、教育など、BAMEに対する社会経済的および医療面での不平等が原因と考えられる。

こうしたパンデミックによって表面化した人種間格差や、全世界的なBlack Lives Matter運動の高まりなどが重なり、BAMEが差別用語ではないかと問題視されるようになったのだ。

未だなくならない人種差別の現状

Black Lives Matterを掲げてデモ更新を行う人々

Photo by Nicole Baster on Unsplash

アジア人や黒人など、世界ではさまざまな人種差別がいまもはびこっている。それは日本国内においても例外ではない。

アジア系差別による暴力事件

アメリカでは、2021年に入り立て続けにアジア系の人々を狙った事件が勃発している。ニューヨークで、ベーカリーの列に並んでいた中国系の女性が突然新聞箱に頭を押し込まれるという事件が起こった。西海岸では、83歳のフィリピン系の女性が突然殴られるという事件も。戦前における白人至上主義の歴史的背景が現在まで残っている。

ブラックフェイス(黒塗り)とホワイトウォッシュ(白人化)を例とする黒人差別

2020年、Black Lives Matter運動が広がったものの、黒人差別はいまだなくならない。ブラックフェイスは、黒く化粧などすることで黒人の外見を誇張してまねる行為。一方ホワイトウォッシュは、白人以外の人の肌色を明るくしたり、映画やテレビ番組において白人を優遇する白人偏重だ。どちらも黒人への差別行為を指し、現代においても度々問題視されている。2019年、日清食品が手がけたCMがホワイトウォッシュであると批判を集め、CM動画は削除される結果となった。

日本国内での外国人差別

日本においても、戦後、米国の白人の価値観の影響を受けたことや、恐怖心からくる黒人差別が現在も残る。また、外国人の居住や就職が拒否されたり、在日朝鮮人の子どもやハーフなどを理由に嫌がらせを受ける人も少なくない。こうしたヘイトスピーチが問題視され、2016年には「ヘイトスピーチ対策法」を施行。しかし、不当な差別的言動は許されないものであると記されているものの、あくまで防止策であり、この法律ではヘイトスピーチを禁止していない。

ロマ人など少数民族に対する迫害

ロマ人とは、もともとインドを故郷とする移動型民族で、長い歴史の中でさまざまな迫害を受けてきた過去を持つ。「ジプシー」と呼ばれており、彼ら自身は「ロマ」と呼称している。現在はヨーロッパを中心に定住化が進んでいるものの、反ロマ感情による差別から、家や就職先が見つからず犯罪率が増加。さらなる差別へとつながり、悪循環が生まれているという。

コロナ渦で起きているアジア人への人種差別

アジア人差別に抗議する人々

Photo by Jason Leung on Unsplash

中国・武漢で感染が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。感染拡大による恐怖は全世界へと広がり、欧米を中心にアジア人に対する差別が激増しているという。ロンドン市警察によると、コロナが蔓延し始めた2020年2月、東アジア人に対する人種差別的犯罪は64件発生した。これは2019年に比べると400%増加した数字だった。

その後もアジア系住民が被害者となる暴力や差別的発言が後を絶たず、イギリスだけでなくアメリカなどにおいても、街中で突然襲われ、命を奪われる悲劇も起きている。

もともと根深くあったアジア人への差別意識が、米国のトランプ前大統領は「チャイナウイルス」と呼んだことや、ロックダウンなどによるストレスが重なり、助長されてしまったことが原因だと考えられる。

BAMEにみる人種や国家間の平等

国連サミットで採択されたSDGsには、「人や国の不平等をなくそう」という項目がある。人種差別問題は、私たちの暮らしを豊かで持続的なものにするために、解決しなくてはいけない課題だ。

日本にいるとなかなか差別の実状を感じにくいが、海を渡れば日本人もアジア人として差別的に見られる可能性が大いにある。同時に、無意識のうちに差別する側になっている可能性があるということも忘れてはならない。

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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