各地で広がりを見せる地域活性化 10の事例と成功のポイントを解説

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少子高齢化や人口減少など、さまざまな社会問題のなかで注目されつつある「地域活性化」。各地の成功事例から、地域活性化の貢献につながった、地域の特徴や魅力を活かした取り組みの内容や発信方法など、成功の重要なポイントを解説する。

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2023.10.24
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地域活性化が求められる背景

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地域活性化とは、施策や活動などを通じて、それぞれの地域の経済や社会、文化などの活動を活発化させ、地域を維持発展させることを指す。2014年の第二次安倍内閣が議決・執行した「まち・ひと・しごと創生法」をきっかけに、取り組みが注目されるようになった。

ここでは、地域活性化が求められるようになった3つの問題について解説する。

少子高齢化の進行

日本では人口減少による少子高齢化が進み、働き手となる生産年齢人口も1995年をピークとして減少傾向にある。生産年齢人口は減少し続ける見込みで、2060年には4,418万人まで減少すると予測されている。一方、2025年には高齢化率が3割を超え、2050年には4割弱に達する見込みだ。少子高齢化が深刻化すると、経済・社会基盤が崩壊する可能性が考えられるため、早急な改善が必要とされている。

とくに地方での高齢化が進む理由として、若者が職を求めて都市部へ移住することが挙げられる。地方では企業も減少し、若者にとって魅力的な働き場所が少ないために、都市部へ移住せざるを得ない若者も多い。そのため、地方活性化によって地方の魅力を向上させ、都市部だけでなく地方にも人口を分散させることが必要だ。

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都市部への人口集中と地方の過疎化

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東京に人口が集中することで、地方の過疎化など、さまざまな問題が発生している。日本の人口約1億2,000万人のうち、約3,600万人が東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に集中している。2022年の総務省の統計によると、数年にわたって東京圏から出る人よりも、入る人の方が多い状況が続いているという。

地方では、15〜29歳の若者人口が2000年〜2015年の15年間で約3割も減少しており、人口減少は深刻化している。生活コストが高いために出生率の低い東京圏への人口集中は、さらなる総人口の減少を招くとされているため、地域活性化によって地方に人口を分散させることが解決策となる。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」への貢献

現在、日本では小子高齢化や都市部への人口集中により地方の人口減少にともなう地域の衰退が急速に進んでいる。公共インフラの縮退などさまざまな問題により、多くの人が愛着のある街に住み続けられなくなるケースもあるという。そのため、地域活性化による若者が働きやすい環境づくりや、すべての人が住みやすい環境づくりを行うことは、すべての人が安心・安全な暮らしができる環境づくりを目指すSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成することにつながる。

地域活性化を成功させるポイント

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地域活性化の取り組みは全国的に増加傾向にあるが、地域貢献につなげるために重要なことは何なのだろうか。そのポイントを3つ解説する。

地域の特徴・資源を活かす

これまでにない新たな発想も重要だが、まずは既存の地域資源や産業、地域の特徴や長所に着目し、それらを活かす方法を考えることが地域活性化への近道だ。その地域では当たり前とされていることも、他の地域や新しい世代から見ると新鮮で魅力的なものに映る可能性もある。独自のアイデンティティーを活かすことは、他地域との差別化にもつながるだろう。

中長期的な視点で取り組む

地域社会の活性化は短期的なものでなく、中長期的な視点で行われるもの。長期的な計画を立て、調整を重ねながら地道に関係構築を行い、活動を進めていく必要がある。しっかりとした企画設計を行い、地域の魅力どのように伝えていくのかなど、長期的な視点で事業モデルを作成して、地域が持続的な発展や成長を遂げられるように進めることが重要だ。

地域住民と連携をとる

地域活性化への取り組みは、行政や企業が主導するケースが多いが、地域に住んでいる人々や関わる人々の連携も欠かせない。住民同士の交流や意見交換以外にも、同じ地域で活動している複数の団体と関係構築をすることで、より大きな取り組みに挑戦できるようになるだろう。人と人、組織と組織、地域と地域とがそれぞれの立場や活動分野を越えて連携することで、地域全体に新しいエネルギーを届けることができるのである。

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地域活性化の10の事例

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日本各地で行われている具体的な取り組み事例を紹介する。

1. 青森県田舎館村|田んぼアート

青森県田舎館村では、田んぼをキャンバスに見立て、色の異なる稲を用いて巨大な絵を描く「田んぼアート」を実施。その芸術性の高さが国内で話題となり、年間で30万人以上の観光客の集客を実現。さらに、展望料収入は平成27年度の6,200万円から、翌年には9,300万円にまで増加し、地域活性化に大きく貢献する取り組みとなった。現在は「全国田んぼアートサミット」や冬季における「冬の田んぼアート」が開催されるなど、全国的な広まりが見られている。

2. 鳥取県境港市|水木しげるロード

鳥取県境港市出身者で「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげる氏の協力のもと、平成5年には「水木しげるロード」を整備し、ロードのなかには妖怪ブロンズ像の設置をするなどして、地域活性化を図った。市内でも妖怪をモチーフに、街の魅力を全面に押し出した取り組みを実施し、平成23年には300万人規模の入込客数を2年連続で達成。地域活性化に大きく貢献した。

3. 富山県高岡市|伝統産業を再興

右肩下がりだった銅器製造業界において、素材とデザインをキーワードに、錫を使った柔軟性のある金属製品を開発。錫100%の素材は、曲がりやすい、抗菌性、革新性、リサイクルしやすいといった特徴があり、これを生かした製品はヒット。日本各地のみならず、世界各地への販売も行われている。衰退傾向にあった伝統産業を、新たな活用で再興した成功例のひとつだ。

4. 京都府(5市6町1村)|日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」の魅力発信

京都の宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久御山、井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、精華町、南山城村の5市6町1村が、日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」の魅力を発信。

これらの地域が平成27年度に「日本遺産」に認定されたことを契機とし、その魅力を世界へ発信することで交流人口を拡大し、地域全体の活性化を図るという取り組みだ。地元バス会社と連携して日本遺産の魅力を伝える周遊ルートの開発に取り組むなど、地域の民間団体を巻き込んだ取組を推進している。

5. 北海道小樽市|パ酒ポート

北海道小樽市では、道産酒を知ってもらうための活動として、ガイドブック「パ酒ポート」の作成や酒蔵ツーリズムなどの取り組みを推進した。観光ツアーのパッケージ化や、工芸品、食品、道産酒をセットにした販路拡大事業など、異業種間の相乗効果による売上拡大を図ったことで、一つの酒造メーカーで年間集客者数3,462名、299万円の売上増、雇用者数10名増という結果につながった。

6. 岐阜県東白川村|フォレスタイルプロジェクト

岐阜県東白川村は、林業家や工務店等と連携し、ホームページ等を活用して地元産高級ひのきの現代的な注文住宅を安価に販売できる独自のシステムを構築。林業・建築業の高付加価値化と村内外からの大幅受注増を実現し、村民所得の向上等に貢献している。平成21年〜27年までに、国産材を利用した住宅建築の受注件数は144件、売上高約40.8億円という実績を残した。

7. 岡山県西粟倉村|百年の森林

面積の約95%が森林という岡山県西粟倉村では、主に林業分野でのベンチャーの育成、仕事の創出、人材の発掘・育成の場づくりに取り組んでいる。平成20年からは、森林所有者や村役場、森林組合等と連携し、入口から出口までを考えた森林管理と森林利用の新たな仕組みづくりを実施。

具体的には、西粟倉村役場が森林所有者から森林を預かり、森林の間伐や作業道整備を行うという、生産から販売まで一貫した「百年の森林」構想と呼ばれる新たな仕組みを実現。コレらの一連の取り組みにより、地域の最大の強みである森林を活かした地域活性化のサイクルを実践している。

8. 秋田県大仙市|地域リノベーション

秋田県大仙市では、市街地再開発事業により、地域の中核病院や子育て支援施設などの都市機能をJR大曲駅前に集約させることで、商店街と地域住民の交流施設を兼ねる「まちなか拠点施設」として地域一帯をリノベーション。エリア内の歩行者通行量の増加を一つの目標指標としていたが、再開発後の歩行者通行量は目標数の3,234人を上回り、3,762人となった。

さらに、地元の商店主と地元出身のデザイナーが協力して新たな商品の開発に取り組み、30~40代の女性をターゲットにした商品のPRを企画行った結果、新たな顧客ニーズの獲得にもつながった。一連の取り組みを通じて、地域の利便性の向上と住民活動の活性化に貢献した。

9. 奈良県明日香村|宿泊施設の整備

奈良県明日香村は、地域内に歴史的な文化財が数多く存在している一方で、宿泊施設が不足しているという問題を受け、未活用の空き家に着目し、「明日香ニューツーリズム協議会」の設立など、空き家を活用するための体制づくりに取り組んだ。クラウドファンディングを活用して古民家リノベーション費用や内装・設備費用、運転資金の一部を募った結果、1,500万円の資金調達を達成。また、平成27年4月には宿泊施設「ASUKA GUEST HOUSE」をオープンし、空き家の有効利用と地域活性化に取り組んでいる。

10. 福井県内各地|学生の地方への就職意欲を高める支援

学生の地元企業への就職を促すため、国立大学法人福井大学では、学生を対象に福井県内にある企業への見学バスツアーや個別企業説明会を実施している。地元での就職を希望する学生と地元企業とが関われる機会を提供し、就職のミスマッチを防ぐようなきめ細かい支援を行うことで、地元企業への就職を希望した学生はほぼ100%地元企業に就職することができた。平成27年度の調査によると、県内就職率は38.0%、県内就職者274名であり、離職率も低い。

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広まる地方活性化の取り組み

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日本全国で深刻化している人口減少や少子高齢化などの問題を解決し、地域経済を盛り上げていくため、地域活性化に取り組む自治体は増加傾向にある。各地の成功事例では、地域の資源や特色をうまく活用し、地域住民と連携しながら活性化に取り組んでいるケースが多く見られた。

近年では、国や政府による助成金など、地域活性化への支援も積極的に行われている。これからの時代、ますます地域活性化の取り組みの重要性は高まっていくだろう。

※掲載している情報は、2023年10月24日時点のものです。

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