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全国各地で広まりを見せる地域活性化。数々のユニークな成功事例を紹介しながら、それらの取り組みががその地域や人々、企業にとってどのようなメリットをもたらすのかを、わかりやすく解説する。
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「地域活性化」とは、各地域の経済・社会・文化などを活性化させ、その地に暮らす人々の意欲向上も後押しし、地域を持続的に発展させる取り組みのこと。県庁や市区町村などの自治体や観光協会、地元企業、地域住民で組織された地域づくり団体などが、地域活性化の主要な役割を担っている。
よく似た言葉に「地域創生」があるが、これは地域の人口に焦点を当てた活動であるのに対し、「地域活性化」は魅力的なまちづくりを行う取り組みである点に違いがある。
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地方で起業する人や、首都圏から地方に移住して起業・就業をする人向けに、国は助成金などの充実したサポートを行っている。活動資金などとして上手くこの制度を活用すれば、地方でも事業をスタートしやすくなるだろう。
地方は首都圏に比べると企業数が少ないため、競合他社が少ない。ライバルが少ないため、事業によって利益を得る機会が増え、事業を確立できる可能性が高まる。
事業が活発化し、働ける環境が増えることで、新しい雇用が生まれる。新しい雇用の創出によって地方での消費が増加し、地域経済の活性化につながるだけでなく、それらは若者の定住促進にも寄与するだろう。企業にとっても、多様な人材を採用できるようになるなどのメリットがある。
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町の主要産業である観光業において、入込客数が減少する冬季の観光需要拡大に向けた取り組みを実施。文化交流のある地域の関係者を招くなど、積極的に意見交換を行うことで国内外における観光客受け入れのネットワークを構築。観光客が増加したとともに、取り組みの姿勢に企業が共感し、支援が広がっている。
稲作が盛んな地域である田舎館村において、 平成5年に村おこし事業としてスタートした「田んぼアート」。田んぼをキャンバスとして、色の異なる稲を用いて巨大な絵を描く芸術性の高さが話題となり、全国から年間30万人以上の集客を実現。現在では、「全国田んぼアートサミット」や冬季における「冬の田んぼアート」などが開催されるなど、全国的な広がりを見せている。
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元は19戸の農家からなる農村集落だったが、平成6年頃から若者が帰ってきやすくするためのむらづくり活動を開始。集落点検地図の作成や、都市住民との相互交流を行うなど、さまざまな活動を通じて集落全体でむらづくりに取り組み、過疎化の食い止めに成功した。
空き店舗や空きビルが増加していた小倉地区において、遊休不動産をリノベーションによって再生する取り組みを行う。まちづくり人材の育成や、雇用の創出と賑わいづくりを目的とした「リノベーションスクール」をこれまでに11回開催。それにより、19件の物件を再生、445人の雇用創出につながった。さらに、平成22年から24年にかけて、小倉中心市街地における1日あたりの歩行者数が約3000人増加。これらの取り組みは、都市型産業の集積や雇用創出、コミュニティ再生、地域価値の向上などにつながっている。
黒壁スクエアと呼ばれる地区において、古い建物を活かして連続性のある街並みを整備するとともに、ガラスをテーマに新たな産業を確立し、それによる利益によって空き店舗の解消を推進。さらに、町屋の活用を促進するために市と連携し、シェアハウスやコワーキングスペースを運営。地域資源と、ガラス工芸という新たな産業や人材育成を組み合わせて収益を確保することで、連続的な空き店舗改修の費用を円滑に調達している。
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年間16万人来客する観光農園は、イチゴジャムづくりやダッチオーブン料理などの体験型観光を提供し、農産物加工品を販売。さらに、地域住民とともにNPO「ほしはら山の学校」を立ち上げ、廃校を利用して子どもたちに農作業体験を提供(年間2,000人利用)。村の拠点「郷の駅」も共同で設立し、医療、観光、生活必需品の販売など、地域づくりを支援。観光農園を中心に幅広い取り組みを通じて、地域振興を実現している。
積雪地帯の水田転換畑でのたまねぎ栽培に先駆的に取り組み、行政との連携や地域の協力により課題を克服し、「儲かる農業」を実現。平成24年には出荷量約1,600トン、販売額1億円を突破。また、安定生産・生産拡大に向けた技術対策に取り組み、各生産者への技術指導を実施。品質・規格の統一が可能になったとともに、生産者が栽培に専念できる環境を実現している。
石川県白山市では、企業経営の視点で農業の6次産業化に先駆的に取り組み、多様な人材の活躍により着実に成果を挙げている。農家の高齢化による請負耕作ニーズの増加に対応して請負面積が年々増加し、水稲耕作面積は石川県で最大に。また、顧客ニーズに沿った商品開発により、売上額は11億円を突破。さらに、女性や若手を積極的に登用するなど、多様な人材の採用を行なっている。
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添田の「英峰塾」は、中学3年生の高校進学を支援する取り組みで福岡県立大学と連携し、教職を目指す学生ボランティア講師を派遣。毎年6月から2月にかけて年間約30回のサポートを提供し、添田中学校の半数以上の生徒が参加。近年では、この取り組みに参加した生徒が福岡県立大学に進学し、ボランティア講師として事業に参加する事例もあり、地域人材の好循環が生まれ、地域の教育力向上に貢献している。
静岡県浜松市では、大学発の新産業の創出に取り組んでいる。浜松ホトニクス(株)のバックアップを受けて開学した光産業創成産業大学院大学は、これまで約30社に上るユニークなベンチャーを生み出すことに成功。これらの企業が成長することにより、地域経済の活性化への大きな貢献が期待されている。
廃校寸前だった島唯一の隠岐島前高校を魅力化し、全国から生徒の集まる人気校へと進化させている。全国から意欲ある生徒を募集する「島留学」を開始し、現在では全校生徒の約半数が島外出身の生徒。地元である島内生と島外生がともに学ぶことで、多様な価値観や文化が交わり多くの学びが生まれており、最近では海外からの留学生も見られる。 取り組みの結果、島前高校の全校生徒数は約90名(平成20年)から約160名(平成27年)に推移し、現在この新たな人の流れは小中学校にも広がっている。
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岩手県陸前高田市は、東日本大震災の復興支援をきっかけに若い移住者たちが新たなチャレンジを始め、地域交流が大切に育まれている。特定非営利活動法人SETを含む4団体が連携して民泊事業を推進し、首都圏の学校に陸前高田市を修学旅行先として提案。地元の一般家庭が学生を受け入れ、農漁業など地域特有の交流体験を提供。これらの取り組みがまち全体に新たな活力をもたらし、地域活性化に成功している。
徳島県神山町では、高速ブロードバンド環境整備とサテライトオフィス誘致を通じて、過疎地域振興を実現している。県は通信費や古民家改修費などの支援を提供し、98.8%のFTTH網と光CATVを全県域に整備。NPO法人「グリーンバレー」はICTベンチャー企業を誘致し、40社36拠点が8市町に進出、2016年には156世帯234名が移住。県の支援と民間の協力により、過疎地域での経済活性化が実現している。
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町面積の約71%を広葉樹の天然林とカラマツの人工林が占める、群馬県長野原町。「有限会社きたもっく」は、まちの南西部に位置する北軽井沢をフィールドに、年間10万人が訪れるキャンプ場「スウィートグラス」の運営をはじめ、薪の製造販売、養蜂業など、多岐に渡る事業を展開。それぞれが“土地にあるものを活かす”を軸に有機的につながり合って成り立つ事業は、地域に新しい循環型の産業と雇用を生み出している。
福井県鯖江市は日本一のメガネの産地として知られているが、実は漆器産業や繊維産業も盛んなものづくりのまち。そこで、つくり手の想いや背景を知り、商品を購入できる産業観光イベント「RENEW(リニュー)」を開催。開催日には全国から人が訪れ、産地のPRにとどまらず、移住者や関係人口の増加、雇用拡大にも貢献し、持続可能な地域経済圏を生み出している。
那須烏山市では、地域振興と雇用創出に焦点を当てた取り組みを行っている。具体的には、地域雇用創造協議会による「里山環境と木材を活用した分野」と「農業分野」の活性化と人材育成に力を注ぎ、平成25〜27年度で137人の雇用を創出。市は農業と製造業の担い手不足や高齢化、事業所数の減少などの課題に対処するために、人材育成や新商品の開発と商品化、体験型観光商品の開発などを行う。さらに、事業主向けセミナー、求職者向けセミナーを相互に連携するテーマで構成し、雇用機会を拡大した。
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地域活性化を推進し、持続させていくために重要なポイントを3つ解説する。
地域の特性や観光資源を把握することは、地域活性化に欠かせない大事なプロセスだ。地域の特産品や文化・歴史などの魅力を明確にし、それを活かす方向で、観光客に訴求するためのマーケティング戦略を立てることが重要になる。
資金調達は、地域活性化の実現のために欠かせない課題の一つ。また、国の助成金の活用やクラウドファンディングなども資金調達として有効な手段のため、効果的な資金調達の方法を検討したうえで、必要な資金を確保し、地域活性化に取り組むことが重要だ。
地域活性化の成功への鍵は、持続可能なモデルの構築。一時的な活性化ではなく、すべての人が豊かさを享受できる持続可能なモデルやシステムをつくることが重要だ。地域活性化によって一時的に雇用が増えたり経済活動が活発になっても、活性化の状態が維持できなければもとに戻ってしまう。SDGs(持続可能な開発目標)のアプローチを参考に、地域活性化が将来にわたり維持・更新が可能なように、持続できるモデルをつくることで、持続可能な地域活性化のモデルやシステムを実現できるだろう。
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地域活性化に成功する地域が増えると、人口減少や少子高齢化など、日本が抱える課題改善につながり、SDGsの目標達成にも貢献できる。未来の日本、そして次世代に土地や文化をよりよい状態でつないでいくためにも、地域の資源や魅力の活用や地域住民との連携など、各地域に合った事業を検討しながら取り組むことが成功への鍵となる。各地で広まりを見せる地域活性化の取り組みに、今後も目が離せない。
参考
・地方創生事例集 >P,74,75,40,51,64,66,5,9,17,29,25
・内閣府|個性を活かした地域戦略の取組 (事例集)>P,1,31
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