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SDGsの目標のひとつにも掲げられており、世界中が取り組んでいるジェンダー平等の実現。男女格差が大きいと言われる日本だが、現状はどのようになっているのだろうか。本記事では、日本のジャンダー平等の現状に触れながら、個人でできることを10個紹介していく。
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「ジェンダー(gender)」とは、社会的、後天的につくられ、獲得される性のことを指す。同じく性を表す言葉として「セックス(sex)」があるが、こちらは遺伝学的・生物学的なオス・メスを表す言葉だ。
現在の社会では、男性に向いている仕事や役割、女性に向いている仕事や役割など、個人の希望や能力ではなく「性別」によって、生き方や働き方などの選択肢が狭められてしまう場面がある。しかし、身体のつくりは違うものの、言わずもがな男女は平等だ。
「ジェンダー平等」とは、ひとりひとりが性別にかかわらず、平等で責任や権利、機会をわかち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味している(※1)。
近年、世界中でジェンダー平等の実現向けて取り組みが行われている。ここからは、日本におけるジェンダー平等の現状について見ていこう。
ジェンダー格差(性別によって生じる格差)や、女性の経済、政治などへの参画実現度合いを知るための指標として、世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」がある。これは、各国の現状を経済、政治、教育、健康の4つの観点から評価し、それぞれの平均値がスコア化されているものだ。
2023年のジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、日本は125位と前年のランクより9位下がり、過去最低にランクダウン。G7(主要7か国)の中では、日本が最下位である。
日本は、ジェンダーギャップ指数における評価観点のうち、経済(労働参加率・同一労働における賃金・収入格差・管理職の男女比・専門技術の男女比)、政治(議会や閣僚など意思決定機関への参画・過去50年間の国家元首の在任年数における男女差)のスコアがとくに低い。
就業者に占める女性の割合は、44.5%。そのうち管理的職業従事者は14.8%にとどまっている。アメリカの就業者に占める女性の割合47.0%で中管理的職業従事者40.7%。フランスは48.5%中、34.6%であることに比べると、日本が低水準であることがわかるだろう(※2)。
内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」 (令和元年9月)によると、「男性の方が優遇されている」と考えている人は74.1%にものぼる(※3)。数値だけでなく、男女地位の平等感の低さを人々は実際に感じているといえるだろう。
男女別にみると、「男性の方が優遇されている」と回答した人は男性よりも女性が多い。性別を理由に、望んだ生き方や働き方、キャリアを叶えられない、ともどかしく感じている人は少なくないようだ。
SDGsの17の目標のうち、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられていることを知っているだろうか(※4)。
この目標では、「政治、経済、公共の場でのあらゆるレベルの意思決定において、完全で効果的な女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する」といった社会的な目標や、「あらゆる場所で、すべての女性・少女に対するあらゆる形態の差別をなくすこと」「人身売買や性的・その他の搾取を含め、公的・私的な場で、すべての女性・少女に対するあらゆる形態の暴力をなくす」などが目標に設定されている。
そのほかにも、LGBTQ+といった性的マイノリティの人々が生きやすい社会にしていくことも目指している。ジェンダー平等を実現することで、SDGsの目標の達成につながり、多くの人がより暮らしやすい世界になるのだ。
ジェンダーに関する問題は、政府や企業だけが取り組む話ではない。ジェンダー平等の実現に向けて個人にもできることはたくさんあるのだ。ここからは、ジェンダー平等のために個人でできることを、10個紹介していく。
「ジェンダーバイアス」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「バイアス」とは偏見のこと。「ジェンダーバイアス」とは、「男の子は泣くものじゃない」「女の子なんだからお手伝いしなさい」といった、男性や女性の社会的な役割に対する固定観念のことを指す。
ジェンダーバイアスは、男女の格差を生む原因のひとつともいわれており、まずはどのようなことがジェンダーバイアスに当たるのか、無意識に持っていないかを調べることが大切だ。
ジェンダーバイアスについて理解したところで、家庭内にジェンダーバイアスがないか見直して見よう。家事や育児、家族の介護をしても給与はもらえないが、会社で働くことと同様に重要な仕事だ。
女性ばかりが「家事全般に責任を持たなければ」と背負いすぎていないか、また男性ばかりが「家計を支えなければ」と感じすぎていないか、など協力して家庭生活を営むために、いま一度それぞれが抱える悩みや負担を話し合い、理解することが大切である。
家庭内で負担や悩みを話し合った上で、家事や育児を分担するのもジェンダー平等の実現に向けてできることのひとつである。それぞれの得意をいかして、できるだけストレスのない分担を見つけたり、掃除は場所ごとに頻度や担当を決めたりするなど、各家庭にとってベストな方法を考えてみよう。
最近では共働きの家庭も多いため、細々とした作業もリストアップして分担することで、女性の負担が軽減される。
家庭と同様に、当たり前になっているからこそジェンダーバイアスに気が付きにくいのが職場だ。
お客さんへのお茶出しや花瓶の水換えなど、「女性の方が得意」という思い込みや、昔からの慣習で女性に任せていることはないか、などあらためて見直す必要がある。当たり前におこなっていたことでも、意識的にジェンダーバイアスに気付き指摘し合うことで、少しずつ組織や社会の意識が変わっていくだろう。
家庭や職場でのジェンダーバイアスのほかに、気をつけたいのが子供に対する発言だ。何気なく「ピンクの方が女の子らしい」「こっちの方が男の子らしい」などの言葉を使っていないだろうか。
性別ではなく、それぞれの好みや“らしさ”を尊重するべきであり、「女の子らしい」「男の子らしい」という言葉で「そうならなくてはいけない」と思い込んでしまったり、窮屈な思いしたりする子供も少なくない。
家庭ではもちろん、学校など教育の場でもこうした言葉が使われていないか、注意してみよう。
将来の夢を語る子供や、中学生や高校生、大学生といった進路を考える学生への声がけも、ジェンダーバイアスがないよう意識したい。
職業選択は自由であり、「男らしくない」「女らしくない」という大人の固定概念や偏見で生き方を狭めてしまうことがないように、常に気をつけることが大切だ。
LGBTQ+とは、性の多様性であり特別なことではない。しかし少数派であることから、年齢や地域に関わらず、世界各地で人権侵害や差別、迫害を受けることも多くある。
LGBTQ+の人々が生活しにくいと感じている仕組みや問題を解決していくことはもちろん大切だが、まずは「LGBTQ+であることは特別なことではない」ことを理解することが重要だ。その上で、子供たちにも伝えていくことが、未来のジェンダー平等の実現に向けてできることのひとつである。
ジェンダー平等を掲げている候補者や、ジェンダー意識が高い候補者に投票することも個人にできることである。
「ジェンダー平等が実現したらいいな」と思っているだけでなく、積極的に政治に参加し、その思いを行動に移していこう。
日本におけるジェンダーバイアスや男女格差について触れてきたが、世界でも耳を塞ぎたくなるようなジェンダー問題に苦しんでいる人々が多くいる。
「女の子だから」という理由で教育が受けられなかったり、10代で望まない結婚をさせられたり。アフリカや東南アジアなどの一部では、女性器切除という女性の外性器の一部もしくは全体を切り取る行為が社会的な慣習としておこなわれているという。
身の回りのジェンダーバイアスと向き合いつつ、世界全体のジェンダー問題にも目を向ける必要があるだろう。
発展途上国などでは経済的、宗教・社会制度の問題から、女性が格差や暴力、望まない制度の犠牲になることも多い。子どもに望まない結婚をさせ、その引き換えに家族や親戚が金品を得るという人身売買に等しい行為がおこなわれ、それによって未発達の児童が妊娠し生命の危機にさらされていることもある。
そうした厳しい状況のなか生きている発展途上国の女性たちを支援する活動団体に寄付をする、という形でもジェンダー平等に貢献することもできる。
ジェンダー平等といっても、実現に向けて解決すべき問題は多岐にわたる。まずは、家庭や職場、そして自分自身の発言など、身近なところのジェンダーバイアスを見直してみよう。ひとりひとりが一歩を踏み出し行動することで、日本、そして世界のジェンダー平等実現へと少しずつでも近づいていくはずだ。
参考
※1 みんなで目指す!SDGs×ジェンダー平等(仮)|内閣府男女平等参画局(1ページ目)
※2 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)|男女共同参画(2ページ目)
※3 男女の地位の平等感|男女共同参画(6ページ目)
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