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スリランカで2023年6月より、使い捨てプラスチックの製造・販売が禁止される。対象となるのは、プラスチック製のカトラリーや造花など。背景には、ゾウやシカなどの野生動物を保護する目的がある。廃棄されたプラスチックの誤飲により、命を落とす事例が多発しているからだ。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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スリランカ政府は2023年2月中旬、使い捨てプラスチック製品の製造・販売を禁止すると発表した。対象となるのは、プラスチック製のカトラリーや造花など。新しいルールは2023年6月から適用される。
スリランカでは、1年半ほど前からプラスチックごみによる環境や野生動物への影響を調査してきた。その結果に基づいて、新たなルールが設けられた。
同国でのプラスチック製品の利用制限は、これが初めてではない。2017年には、非生分解性のレジ袋が禁止された。鉄砲水が起こった際、レジ袋が排水路に詰まり、多数の死亡者が出たためだ。さらに2021年には、プラスチック製のカトラリー、食品用容器、おもちゃの輸入が禁止された。今回の禁止令は、プラスチックごみを減らすため、プラスチック製品の利用についてより厳しく制限する内容だ。
今回の決定は、主に野生動物の保護を目的としている。スリランカでは数年前から、野生のゾウやシカがプラスチックごみを誤って口にし、命を落とす事例が多発している。生息環境の悪化や食料と水の不足により、ゾウたちが食べ物を求めてごみの埋め立て地で食料探しをするからだ。
約5年前には、同国の北東部で、プラスチック誤飲により命を落としたシカ数十頭が発見された。これを受けて政府は、ジャングル保護区付近でのごみの野外投棄を禁止するよう求めている。
このような悲惨な状態を回避するため、政府は2017年から取り組みをはじめている。まず、これまでごみはリサイクルされずに廃棄されるだけだったが、野生動物区域の近くにある廃棄場で、それらのごみをリサイクルすると発表。さらに、ゾウをはじめとする動物を遠ざけるために電気柵を設置する計画が立てられた。しかし、どちらも完全に遂行できず、解決には至っていなかった。
スリランカでは、ゾウは神聖な動物として崇拝され、法律で保護されている。しかし19世紀には約14,000頭いたゾウは、2011年には6,000頭まで減少し、絶滅の危機に瀕している。それにも関わらず、アンパラ地区パラッカドゥ村の廃棄場では、過去8年間にプラスチックごみを食べたことが原因で死亡したゾウが約20頭もいるという。
そのため、プラスチックごみを減らすべく、今回のより厳しいルールが定められることとなった。
私たちが使うプラスチック製品によって、命を落とす動物がいるという事実に改めて目を向け、大切な動物の命を守るため、この新しいルールが解決の一助となることを願いたい。
※参考
Sri Lanka bans single-use plastics to save elephants|PHYS ORG
Elephants Dying from Eating Plastic Waste in Sri Lankan Dump|VOA
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