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性の多様性に対する意識が高まるなかで、注目されているのが「Xジェンダー」である。Xジェンダーとは何か、種類や割合についても解説する。Xジェンダーや類語との違いについて学び、見た目ではわからない性自認に関する知識を深めよう。
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Xジェンダーとは、性自認、つまり自分が自身の性別をどのように捉えているのかについて、「男性でも女性でもない」と感じている人々を指す。生物学的な性別やジェンダーに対して、人々の認識が深まるにつれて生まれた新しいワードである。
ジェンダー論の高まりとともに、「生物学的な性別と性自認は必ずしも一致しない」という事実が明らかとなった。しかしこれはあくまでも、「男性」と「女性」という2つの性別がきっちり分けられているという考え方に基づいたものだ。性自認について深く考えてみた結果、「男性と女性という二択では、どちらにも自分を分類できない」と感じる人々は、決して少なくない。これこそがXジェンダーである。
ちなみにこの「Xジェンダー」という言葉は、日本で生まれたものだ。英語では近い意味の言葉として、「Gender queer(ジェンダークィア)」や「Third gender(第3の性)」、「Non-binary gender(ノンバイナリージェンダー)」が使われている。
近年の書類、とくに海外のものにおいては、性別欄が男女の二択ではないケースが増えてきている。従来の「男」「女」という項目のほかに「X」を用意。日本で使われる書類においても、性別欄に「その他」という選択肢があるのを見た人も増えているのではないだろうか。
この場合の「X」や「その他」は、Xジェンダーの人だけを特定しているわけではないが、日本において、「Xジェンダー」という考え方が広がるきっかけとなっている。
Xジェンダーには、以下の4つの種類があると言われている。
中性
自身を「男性と女性の中間地点に存在する」と捉えている性自認のこと。
両性
自身を「男性でも女性でもある」と捉えている性自認。男女の割合は個々で異なるものの、本人のなかでその割合が変わることはほぼない。
無性
自身を「男性でも女性でもない」と捉えている性自認。男性と女性のどちらにも当てはまらず、そもそも2つの性別が存在しているという認識がない。
不定性
自身の性自認が定まらず、常に揺れ動いている状態の性自認。男性と女性の間で状況に応じて揺れ動く人もいれば、男性・女性だけに留まらず、両性や無性などを含め、複数の性の間で揺れ動く人も。不定性にはどちらも含まれる。
性自認が「両性」の人のなかには、「自分のなかの男女割合が日によって変わる」という人もいる。「どちらか一方にのみ変化する」という人もいれば、「きっかけがあれば男性と女性がはっきり切り替わる」という人もいるだろう。こうした人々も、4つの分類中「不定性」に含まれるのだ。
ちなみに、MtX (Male to X-gender)とは「生物学的には男性の体を持ち、性自認はXジェンダーである」という人々を指す。FtX(Female to X-gender)は「生物学的には女性の身体を持ち、性自認はXジェンダーである」という人々のことだ。
性の多様性が注目を集めるようになったとはいえ、Xジェンダーについてカミングアウトする人はまだまだ少ない。では実際に、Xジェンダーの人々は、日本の人口のなかでどのくらいの割合を占めるのだろうか。
金沢大学とコマニー株式会社、株式会社LIXILが共同で行った研究によると、18~59歳までの有職者30,000人のなかで、自身を「トランスジェンダーである」と回答した人の割合は2.0%。その内、自身を「Xジェンダーである」もしくは「わからない」と回答した人の割合は、52.2%であった。つまり、全体のおよそ1%は、Xジェンダーであると推定される。(※1)
またアメリカ・UCLA法科大学院のThe Williams Instituteでは、「アメリカ・120万人のLGBTQの人々が自身をノンバイナリーと自認している」というデータを発表。これは、LGBTQである人々の11%にあたる。(※2)
同じくアメリカのPew Research Centerは、アメリカの若者世代(18~29歳)の約5%がトランスジェンダーであり、その内の約5分の3がノンバイナリーであるというデータを発表した。50代のノンバイナリー割合はわずか0.1%で、30歳~49歳では1.3%。世代が下がるにつれて、自身を「ノンバイナリーである」と認識する人の割合が増えていることがわかる。(※3)
アメリカで、自身を「ノンバイナリーである」と自認する人の割合が若い世代に多い理由の一つは、「性の多様性」に対する知識が広がり、またそれを受け入れる仕組みが徐々に整ってきたからなのだろう。Xジェンダーという言葉が広く認識されるようになった日本においても、今後はさらに、その割合を伸ばしていくのかもしれない。
人間の「性」については、Xジェンダー以外にもさまざまな言葉が存在している。Xジェンダーをより深く理解するためにも、類義語との違いについて学んでみよう。耳にする機会も多い言葉について、それぞれの基礎知識を解説する。
トランスジェンダーは、「性別学的な性別」と自らの「性自認」が一致しないケースを指す。肉体的には「男性」の機能を持ちつつ、性自認が「女性」である場合や、肉体的には「女性」の機能を持ちつつ、性自認が「男性」である人々のことだ。
Xジェンダーとの違いは、自身の性自認にある。Xジェンダーが「自分自身の性別が男性と女性のどちらなのかはっきりしない」と感じているのに対して、トランスジェンダーの場合、はっきりと「心の性」を自認しているケースが多い。つまり、「自分自身は男性(もしくは女性)とはっきり認識しているにもかかわらず、それが生物学的な性と一致しない」という状況である。
クィアとは、英語の「Queer」を意味する言葉である。直訳すれば「風変わりな」や「不思議な」といった意味を持つ。LGBTQのQこそがこのクィアであり、いわゆる「性的マイノリティ」と言われる人々のすべてを指す。つまり、トランスジェンダーもXジェンダーもクィアの一種というわけだ。
従来、性的マイノリティを示す言葉としては、LGBTが使われてきた。実際に耳にした経験がある人も多いだろう。以下4つの単語の頭文字を組み合わせてつくられている。
・L → レズビアン
・G → ゲイ
・B → バイセクシュアル
・T → トランスジェンダー
しかし実際には、すべての性的マイノリティの人々が、これら4つのいずれかに分類されるわけではない。だからこそ注目されるようになったのが、クィアである。多数派である「シスジェンダーかつヘテロセクシャル(異性愛者)」を除いた人々が、クィアと表現されている。
クィアおよびLGBTQの「Q」については 以下の記事を読んでみてほしい。性の多様性を学べる中身となっている。
シスジェンダーは、トランスジェンダーの対義語である。トランスジェンダーが「生物学的な性と心の性が一致しない人々」であるのに対して、シスジェンダーは「生物学的な性と心の性が一致する人々」を指す。つまり「肉体的な性が男性であり、性自認も男性」「肉体的な性が女性であり、性自認も女性」というパターンだ。
シスジェンダーと言う言葉は、トランスジェンダーよりも耳にする機会が少ない。これは、「シスジェンダーこそが【普通】であり、トランスジェンダーが【特別なもの】」という認識が、過去の長きにわたって定着していたためだろう。マジョリティーであるシスジェンダーにとって、「シスジェンダーであること」は当たり前の事実であり、わざわざ言葉にする必要がなかったというわけだ。
トランスジェンダーやXジェンダーへの認識が高まるにつれて、注目されているのがシスジェンダープリビレッジである。マジョリティーは社会で「特権」を持っているにもかかわらず、その事実を認識していない。「使用するトイレで困らない」「自身の性自認を公表して不利益を被ることない」といった状況は、トランスジェンダーからすれば「特別な権利」なのだ。
シスジェンダーが「当たり前のもの」として捉えてきた権利に目を向けることで、性的マイノリティを巡る課題を、解決へと導けるのかもしれない。
ジェンダーフルイドとは、流動的に行き来する性自認を示す言葉だ。Xジェンダーのなかの「不定性」と似た意味を持つ。
自身の性自認は、ときと場合によって変わる可能性がある。幼い頃の性自認が「男性」であっても、その後「女性」に変化する人もいるだろう。また変化が一度きりとは限らない。「状況によって、男性だったり女性だったりする」という人も多い。
Xジェンダーが日本で生まれた言葉であるのに対して、ジェンダーフルイドは英語圏で生まれた言葉だ。さらに詳しく知りたい人は以下の記事をチェックしてみてほしい。
日本で使われるXジェンダーという言葉を、英語で表現する場合に、もっともよく使われるのがノンバイナリーである。ノンバイナリーには「自らの性自認や性表現を、男性と女性だけに当てはめない」という特徴がある。性自認だけではなく、性表現についても男女の枠にとらわれないという点が、Xジェンダーとの違いである。
ノンバイナリーの人々にとって、自身の性別を男女の2択で語ることはできない。両方を持つ人もいれば、両方を持たない人もいる。また自分がどの性として振る舞うのかも、男女の枠で考えない。そもそも、男女の性別で自分自身を定義していないのだ。
ジェンダー論は「男性」と「女性」で語られる機会が多い。しかし実際には、「自分自身を男性とも女性とも認識できない」「どちらか一方に当てはめることに抵抗がある」と感じている人々も少なくないのだ。まずはそうしたジェンダーを知り、理解しようとする姿勢が、真の多様性を実現するための第一歩と言えるだろう。
Xジェンダーにも「中性」や「両性」、「無性」や「不定性」といった種類があり、一括りにできるものではない。Xジェンダーの詳細や割合、そして類義語との違いについても知った上で、あらためて考えてみよう。
※1 オフィストイレのオールジェンダー利用に関する意識調査 報告書(公開用資料)(14〜16ページ)
※2 Nonbinary LGBTQ Adults in the United States|UCLA
※3 About 5% of young adults in the U.S. say their gender is different from their sex assigned at birth|Pew Research Center
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