シェアリングエコノミーとは メリットや事例、普及の背景を解説

真っ黒な車の後部

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シェアリングエコノミーとは個人が持つ資産やスキルを提供・共有する考えかただ。また、昨今はCtoCのビジネスモデルとして活況な市場を形成しつつある。シェアリングエコノミーの意味やメリット、今後の課題などについて詳しく解説する。

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2023.02.03
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シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは個人が所有する有形資産・無形資産を、必要な人に提供(または共有)する考えかたである。ビジネスモデルのひとつとしてシェアリングエコノミーサービスと呼ばれることもある。

有形資産・無形資産とはいわゆる「物」「人が持つ技術」だ。物は物品のほか土地や建物、人が持つ技術はクラウドソーシングや家事代行などが代表的である。シェアリングエコノミーは空きスペース・使っていない物品・空き時間・個人のスキルなどを、必要なときに必要な人に提供する。

シリコンバレーを拠点として発展してきたシェアリングエコノミーは、遊休資産の活用モデルとして関心が高まった。一人ひとりの細かいニーズにあわせて選択しやすく、自然災害や非常事態におけるレジリエンスの向上も期待できる。

シェアリングエコノミーの5分類

シェアリングエコノミーは大きく分類すると5つの分野がある。

1. 空間のシェア
民泊・ホームシェアリング・コワーキングスペース・レンタルオフィス

2. 移動手段のシェア
ライドシェアリング・カーシェアリング・シェアリングサイクル

3. 物のシェア
レンタルサービス・フリマアプリ

4. スキルのシェア
クラウドソーシング・家事代行・配達

5. 金銭のシェア
クラウドファンディング

このような分類のなか、シェアリングエコノミーは個人間で取引がおこなわれる。ビジネスモデルとして注目を集めたのは、シェアリングエコノミーを提供するプラットフォームの提供のため、多くの企業が参入しはじめたからだ。

シェアする物品やスキルを宣伝するプラットフォームがあれば、個人は手軽にシェアリングサービスを出品し、購入できる。

「Uber Eats(ウーバー・イーツ)」を例にあげてみよう。Uber Eatsはおもに配達スキルを提供するプラットフォームである。配達スキルを提供したい人々がUber Eatsというマッチングプラットフォームに登録し、利用したい人からのアクセスを待つ。マッチングが成立すればシェアリングがおこなわれ、プラットフォームを通して金銭を授受する。

企業がダイレクトに消費者へ物品やスキルを提供するシェアリングエコノミーサービスもある。しかしシェアリングエコノミーの多くは、このように企業提供のプラットフォームを利用する。

従来のビジネスモデルとの違い

シェアリングエコノミーの注目点は、おもに個人間で取引をおこなう点だろう。従来は企業が人へサービスを提供するBtoCや、企業間で取引するBtoBが一般的なビジネスモデルだった。

しかし、シェアリングエコノミーは個人同士(消費者同士)で取引をすることから、CtoCのビジネスモデルが多く見られる。なかにはBtoC形式のシェアリングエコノミーもあるが、CtoCが多数成立する市場を形成しているのは、シェアリングエコノミーの大きな特徴のひとつだろう。

副業としてシェアリングエコノミーを選択する人も多い。一般的な企業も副業解禁に動きつつある現在、新しい働きかたとして活用されている。

取引の成立には提供側・顧客側の信頼関係が必要だ。そのため、ソーシャルメディアやマッチングアプリなどのシェアリングエコノミーに適したプラットフォームでやり取りをし、信頼を担保する。社会のデジタル化が進み、消費者のライフスタイルに浸透したからこそ発展したビジネスモデルだと言える。

シェアリングエコノミー普及の背景

シェアリングエコノミーは、アメリカ・シリコンバレーを拠点に発展しはじめた。2008年にローンチした民泊仲介サービス「Airbnb(エア・ビー・アンド・ビー)」や前述のUber Eatsを取り扱う「Uber」が有名だ。

ビジネスチャンスを察した企業が続々とシェアリングエコノミーサービスに参入し、いまやグローバルスケールで展開するビジネスジャンルに成長している。普及の背景にはIT技術の発展や価値観の変化などが考えられる。

IT技術とインターネット環境の発展

IT技術の発展により、人々は安定したインターネット環境と、web上の情報を手軽に得られるデバイスを手に入れた。一人ひとりのニーズにマッチした情報の共有とオンライン決済が可能になったのである。このことがシェアリングエコノミーの市場を拡大させた。

たとえばシェアリングサイクルはスマートフォンひとつで手続きが終わり、必要な時間だけ利用できる。どこで使えるのか・返却できる場所はどこか・料金はどれくらい?などの疑問もすべてスマートフォンで解決できるだろう。

かつて何かを借りるときにはそれなりに複雑な手続きが必要だった。しかしいまはインターネット環境と整えられたプラットフォーム、そしてスマートフォンさえあれば、数タップで手続きが完了する。

「スピーディーに使いたい」「短い時間だけ手軽に借りたい」「支払い手続きは簡単に」と思ったとき、消費者はスマートフォンを操作するだけでニーズが満たされる。

また、インターネットとデバイスの発展は、人々の情報共有を容易にした一面もある。ソーシャルメディアやレビューサイトで忖度のない意見や感想を手軽にチェックできるようになったのだ。これはシェアリングエコノミーの基本「個人間の信頼」を担保しやすくなった事実につながる。

IT技術が発展し、手軽に情報にアクセスする環境ができたこと、シェアリングサービスを提供する側・される側の信頼性が透明化されたことが、シェアリングエコノミーの普及に貢献したと言えるだろう。

消費者の価値観の変化

一方、消費者の価値観の変化も普及に関わっている。かつての価値観は物の所有と人々の幸福度が比例していた。戦後の経済復興で成長した価値観である。物資の不足を長く経験し、苦労した年代の人々が持つ価値観として不自然ではない。

しかし現代はその価値観に変化が生まれている。物が容易に手に入るようになったいま、物を豊富に所有するよりも、ストレスフリーの環境や人とのつながりに価値を見出す層が増えた。物質的な豊かさよりも精神的な豊かさが重視されるようになったと言える。

新たな価値観は「所有」よりも「共有(シェア)」に重きを置くようになった。所有していなくても必要なときに利用できる環境があればよいと考える人が増え、そのニーズを満たしやすいシェアリングエコノミーの普及が進んだと言える。

SDGsの意識の高まり

グローバリズムでSDGs(持続可能な開発目標)の啓発が進められるなか、人々の意識は持続可能な社会の実現に向けられるようになった。シェアリングエコノミーはSDGsと非常に高い親和性を持っている。

2020年、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が株式会社情報通信総合研究所と共同実施した「日本のシェアリングサービスに関する調査結果」によると、SDGsへの貢献が多々見られることがわかった。

たとえば医療・介護スキルのシェアリングはSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」に活用できる。

シェアリングサイクルは化石燃料の消費と温暖化ガスの排出を減らし、カーボンニュートラルを促進する。ゴール13の「気候変動に具体的な対策を」に貢献するだろう。

フリマアプリで不要品を必要な人のもとに届ければ、新品購入が減ったり、ごみの量が減ったりもする。ゴール12「つくる責任、つかう責任」の一環だ。

ほかにも質の高い教育、ジェンダー平等、働きがいや経済成長、産業と技術⾰新、住み続けられる街づくりなど、SDGsの多方面でシェアリングエコノミーが活躍していると感じる人々がいた。このこともシェアリングエコノミー普及の背景だと考えられる。

シェアリングエコノミーの市場規模

シェアリングエコノミーの市場規模は世界的に拡大を続けている。世界的会計コンサルタント企業・PwC(Price waterhouse Coopers、プライス・ウォーターハウス・クーパース)の発表によると、2013年の市場規模は約150億ドル(約1兆9,549億円)だった。さらに2025年までには3,350億ドル(約43兆4,275億円)の潜在的利益が出る市場になるとの見解を出している。じつに22倍もの成長率が見込まれている期待の市場なのだ。(※1)

日本国内では2022年に2兆6,158億円と、過去最高の規模を記録した。2032年には最大15兆1,165億円まで拡大すると予想されている。(※2)

また、日本のデジタル庁ではシェアリングエコノミーを地域課題解決のスキームとして推進している。防災・遊休資産活用・モビリティ・SDGsなど多彩な面での活用を考え、実際に連携している企業も多い。(※3)

また、日本のデジタル庁ではシェアリングエコノミーを地域課題解決のスキームとして推進している。防災・遊休資産活用・モビリティ・SDGsなど多彩な面での活用を考え、実際に連携している企業も多い。(※3)

シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーには多くのメリットがある。そのいくつかを紹介する。

リーズナブルに物やスキルを提供・利用できる

購入者の視点から見ると、物やスキルをリーズナブルに利用できることは大きなメリットだ。従来のサービスにはなかった価格でニーズが満たされるケースも少なくない。

提供者の視点でも、もともと手元にある無形資産・有形資産を活用するため、初期費用をおさえてビジネスに参入できるメリットがある。

遊休資産を活用できる

本人は使わなくなったが、他人にとっては価値がある遊休資産を活用できる。家、車のような有形資産だけではなく、個々が持つスキルや時間の提供が実現する。

手軽にビジネスが成立する

シェアリングエコノミーのサービスの多くは、企業が用意したプラットフォームを利用するシステムだ。提供側・購入側ともに必要な情報を発信・獲得でき、支払いなどでも面倒な手続きを介さずに手軽にビジネスを成立させられる。

他者に貢献し、充実感を得られる

シェアリングエコノミーで他者に貢献することにより、満足感や充実感を得られる。収入以外に価値を見出す人にとって大きなメリットだ。

新しい機会の創出

シェアリングエコノミーで生活の不足が解消されれば、新たな消費促進につながる可能性がある。また、無形資産・有形資産の共有が経済に新しい機会や雇用を創出することも考えられる。

シェアリングエコノミーのデメリット

シェアリングエコノミーにはデメリットもある。代表的なデメリットを見てみよう。

商品やサービスの質が担保されない可能性

CtoCが基本であるシェアリングエコノミーは、商品やサービスの質が担保されない可能性がある。提供側と購入側の信頼関係が重要だ。プラットフォームでの評価は参考になるが、評価者の主観であるため見極めが難しい。

追いつかない法整備

シェアリングエコノミーは新しいビジネススキームだ。そのため、法整備が追いついていない実状がある。たとえば民泊やカーシェアリングは専門分野として免許が必要だった。

現在その2業種は法改正され、問題ないとされているものの、シェアリングエコノミーの分野全体ではいまだ法的にグレーなまま運用されているものがある。

税制面での問題

シェアリングエコノミーで得た収入を申告しない提供者が問題になっている。ビジネススキームの新しさゆえ、税制面でのルールづくりが不透明なまま市場が拡大してしまったためだ。今後の改善が望まれる。

補償・安全性・保険への不安

CtoCが基本であるシェアリングエコノミーは、万一のときの補償やサービス提供時の安全性に不安が残る。トラブルが起きたときに適切な対処ができず、補償や保険が受けられない可能性が否定できない。

働きかたに関する課題

シェアリングエコノミーで収入を得る人は雇用された労働者ではなく、個人事業主だと考えられるケースが多い。つまり社会保険が適用されず、事故や労災も補償されない。しかし一部では労働者としての認識を求める動きがあり、今後が注目されている。

シェアリングエコノミーの事例

シェアリングエコノミーの事例を見てみよう。前述の5つの分野ごとに紹介する。

空間のシェア「Airbnb」

2008年にローンチしたアメリカのプラットフォームサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」。空き家・空室を提供したい人とリーズナブルに利用したい人のマッチングサイトとして人気を集めている。

一般の宿泊施設よりもコストパフォーマンスがよい傾向があることや、利用する設備によっては幅広い楽しみかたができることが魅力。世界220カ国・10万を超える市区町村から600万以上の宿泊施設が登録されている。

移動手段のシェア「タイムズカー」

日本企業タイムズモビリティが運営するカーシェアリングサービス「タイムズカー」。BtoCモデルのシェアリングエコノミーである。

ガソリン代・保険料・駐車場代が不要なため、従来のレンタカーや自家用車よりもコストパフォーマンスがよい。面倒な手続きがなく、インターネットを介して手軽に希望の時間帯に車が利用できる。豊富な車種が用意されているのはBtoCの強みだろう。

物のシェア「Too Good to Go」

イギリスやデンマークなど欧州6カ国で利用できるプラットフォームアプリ「Too Good to Go(トゥー・グッド・トゥー・ゴー)」。レストランで余った料理や食材をシェアリングする。フードロスの削減に大きく貢献するほか、ふだんは利用しないレストランの食事を試せるといった楽しみが人気を集めている。

しかし受け取るまでドギーバッグに何が入っているかわからないシステムのため、特定食品でのアレルギーが心配な人は注意が必要。

スキルのシェア「fiverr」

世界最大級のクラウドソーシングプラットフォーム「fiverr」。デザイン、プログラミング、マーケティング、ライティングなど幅広いスキルが取り扱われている。

2019年には1億ドル(約130億円)を超える売上高と500万人以上の発注者を記録した。世界160カ国からスキル提供者の登録があり、日本からも利用できる。

金銭のシェア「CAMPFIRE」

日本国内最大のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE(キャンプファイアー)」。個人のプロジェクトだけではなく、企業や地域行政との協業案件もあり、取り扱いジャンルが広い。ふるさと納税も扱っている。

2022年10月には約640億円の支援を達成し、約69,000件のプロジェクトが生まれた。支援者は約830万人にのぼる。

シェアリングエコノミーの今後

シェアリングエコノミーは誕生からの流れを見ても成長が予測される市場規模であり、今後も大きく発展する可能性が高いと考えられる。

とはいえ、前述のとおりデメリットがないわけではない。デメリットを課題としてとらえ、解決に向かう必要がある。

日本国内でシェアリングエコノミーを推進するデジタル庁は問題解決の一環として、マッチングプラットフォーム提供者(提供企業)向けに「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」をリリースして啓発を進めている。事業者が安全性や信頼性確保のために遵守するべきガイドラインの策定だ。

また、無形資産・有形資産を提供する側(デジタル庁では「シェアワーカー」と記載)に向け、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と提携して「シェアエコあんしん検定」を提供している。

グローバルな視点で見ても、各国でシェアリングエコノミーの市場が拡大し続けている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の混乱のさなかに急成長したジャンルもあるほど、シェアリングエコノミーは現代のライフスタイルとマッチした。

SDGsとの親和性もあるシェアリングエコノミーは、今後も注目するべき市場モデルだと言えるだろう。

シェアリングエコノミーとは新しい価値観のひとつ

シェアリングエコノミーとは、IT技術の発展と新しい価値観がもたらした、個人が所有する有形資産・無形資産を必要な人に提供する考えかただ。大きな成長が期待できる市場であり、すでに世界中で活発な経済活動を呼び起こしている。

また、持続可能な社会の実現につながる一面もある。経済活動だけではなく、SDGsとの親和性にも注目したい。

※掲載している情報は、2023年2月3日時点のものです。

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