ELEMINIST編集部がおすすめするSDGsに関する本27冊を紹介。入門編から写真集、子どもから大人まで楽しめる絵本、ビジネスで役立つものまで、ジャンル・テーマ別に幅広くセレクトした。SDGsに関心を抱く人、理解を深めたい人は必読の選りすぐりばかりだ。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
おすすめのSDGs本を見る前に、SDGsについておさらいしよう。
SDGs(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月に「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030 アジェンダ」として、国連加盟国193カ国の全会一致で採択された。
SDGsは持続可能な社会を実現するために、どう考え、どう行動するのかの指針である。2030年を達成の期限として、17の目標とさらに細かい169のターゲット、232の指標が設定され、その内容は気候変動から生物多様性、人権、ジェンダー平等、貧困問題など実に幅広い。
そしてSDGsの目標達成には、世界各国の政府が進めるだけではなく、私たち一人ひとりも取り組んでいかなければ難しい。そのためには、まずSDGsとは何なのか理解することが大切だろう。以下で、SDGs関連のおすすめ書籍を紹介する。
SDGsのそれぞれの目標について学ぶこと以上に大切なのは、SDGsの目標が目指す未来を思い描き、「どんな人達とともに達成する目標」なのか、考えることではないだろうか。SDGsに興味がある人やはじめて学ぼうとしている人は、まず以下の本から手に取ろう。
タイトルにもあるように、エシカルやSDGsについてはじめて知ろうと思ったときに読みたい一冊。「エシカルって何?」と思っている人に、毎日の暮らしで実践できることや企業の取り組みを紹介している。食品の選び方やファッションとの向き合い方など、身の回りの事例がベースになっていてわかりやすい。読んだ後からすんなりエシカルな暮らしがはじめられるようなガイドも付いている。
SDGsの国内普及における第一人者といわれる川延昌弘氏の著書。著書の講演を書籍化した本で、SDGsを自分ごととして捉えるためのヒントが詰まっている。SDGs採択への道のりや地方創生、企業価値など、さまざまな視点でSDGsの理解を深めることができる内容だ。全編オールカラーで重要な箇所にはラインマーカーが引いてある。より理解しやすい工夫が満載なのもポイント。
地球環境問題について、総合的に理解することができるビジュアル図鑑。経済開発や難民問題、温暖化や生物多様性への脅威など、地球が直面している問題はさまざまな要素が絡み合っている。同書ではその幅広いトピックを抜き出し、イラストや写真を織り交ぜた簡潔な構成で解説。多分野を総合的に学べるうえに、複雑な内容がやさしく示されているので、環境教育の場面でも活用できる一冊だ。
SDGsの「誰一人取り残さない」という理念を本当の意味で理解するためには、多様性の尊重が大切だ。性別や年齢、国籍、価値観など、世界は多様性にあふれている。そんな多様性を理解し、意識的に考えられるようになる書籍を紹介する。
「どんな未来を夢見て、今を生きるか」という、SDGsに取り組むためのマインドに焦点を当てた一冊。201の国と地域の人々から集めた夢が掲載されている。同書のために書き下ろされた一人ひとりの夢や想いに触れることで、未来へのアクションを考えるきっかけになるだろう。それぞれの夢には関連するSDGsの目標が記されており、1から17の目標のかかわり合いや課題の解決に必要なポイントにも触れることができる。
「世界を100人に縮めるとまったく違うあなたが見えてくる」。アメリカの環境学者のエッセイからはじまった一冊。世界を100人の村に縮小したらどうなるかという視点で食や富、エネルギーなどについて、絵本仕立てで記された大ベストセラー。世界規模の問題を具体的に把握しようとすると難易度が高いが、100人の村として考えると、ぐっと世界が身近に感じられ、イメージしやすくなるだろう。
SDGsについて学ぼうと思っても、難しく自分ごととしてイメージしづらいテーマも多い。そんなときに、ぴったりなのが絵本だ。美しいイラストやメッセージから、SDGsの理解を深めてみてはいかがだろうか。子どもにはもちろんだが、あらゆる人と共にイメージを共有できるツールとして、大人にもおすすめしたい。
人や生き物、自然に思いを寄せる「エシカル」について考えられる絵本。特別な力をもらった名もなきこざるが、地球のピンチを人間たちに伝えるべく、冒険に連れて行ってくれる。身近にあるものがどうやってつくられているのか、地球の環境がどういう状況なのかを学ぶことができる。
アート感覚で環境問題を学べるフランス児童書。翻訳は『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳者でもある服部雄一郎氏。実際のアクションにつながる団体や取り組みは、日本の事例を紹介しているので、読んだ後すぐに親子で具体的な話し合いにつなげられるだろう。同じ地球に暮らす人間として、同じ問題に直面しているということをきっと感じられるはずだ。
アウトドアブランド「パタゴニア」が手がける初の絵本。放棄された漁網に絡まったアシカと、チリの子どもたちとの物語を通して、海洋汚染の危険性とリサイクルの魅力について伝えている。本の最後には海洋汚染のデータを掲載。本の素材には、古紙をリサイクルした100%再生紙が使用されている。内容だけでなく、絵本そのものから地球環境問題と向き合うことができる。読み終えた後、自分にとっての「しんぴんよりもずっといい」ものは何か、話し合うきっかけにもなる一冊だ。
日本の詩人・絵本作家である谷川俊太郎氏が詩を手がける、児童労働をテーマにした絵本。西アフリカのガーナでカカオを収穫する「そのこ」と、日本の「ぼく」との日常の対比が力強い絵で描かれている。遠く西アフリカのガーナでカカオを収穫している「そのこ」を想像することからはじまる同書は、自分の当たり前が全員の当たり前ではないことを知るきっかけになるだろう。
2014年に史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの自伝絵本。パキスタンの小さな村に暮らす女の子が、言葉で世界を変えた物語が描かれている。女性の教育問題に関心を持ち、行動し続けるマララさんの自作絵本からは、自分の思いを声にして発することの大切さを教えてもらえる。
SDGsについて視覚的に捉え、考えられる写真集を紹介する。文字による説明ではなく、写真を通してだからこそ伝わってくるメッセージもあるだろう。SDGsの本質を理解しようと思ったら、以下の写真集を手に取ってほしい。
社会とのつながりを断ち、自然とともに生きる「オフグリッドライフ(※)」の本来のあり方を紹介するビジュアルブック。タイニーハウスやコンテナ、ボートハウスなど、250枚の写真とともに、実際に住まう人のストーリーを紹介している。オフグリッドライフを体現している著者自身のツリーハウスも掲載。多数の実体験に触れることができ、自然の中で暮らすことや自給自足のヒントにもなるだろう。
※オフグリッドとは、電力会社から供給される電力に頼らず自給自足でまかなうこと。詳しくは下記記事を参照してほしい。
1971年に来日してから40年以上を日本で暮らし、2006年には天然素材と手仕事にこだわったブランド「Babaghuri(ババグーリ)」を立ち上げた、デザイナーのヨーガン・レール氏の著書。そんな著者が「最後の仕事」として取り組んだのが、浜辺で拾ったごみからランプシェードをつくるプロジェクト。その様子をまとめた『On the Beach1』は、完売して入手できないが、『On the Beach2』では、浜辺で朽ち果てたビーチサンダルが標本のようにまとめられている。
自分の暮らしと結びつけることで、SDGsはぐっと身近になる。以下では、「これなら自分にもできるかも」と思わせてくれるような、等身大のアイデアがあふれる本をセレクトしている。
すぐにはじめられる「小さくて大きな暮らしの一歩」のアイデアが詰まった一冊。TBS系TV番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界を見てきた著者ならではの視点で、地球環境の現状やエシカル革命を起こすためのアイデアを共有している。巻頭の「今日からはじめるエシカル・アクションガイド」を活用すれば、読んだ後すぐにエシカル革命へ踏み出せそう。
「ヨーグルトの容器は、リサイクルに出す前に洗うべき?」「食器洗浄機と手洗い、水の節約になるのはどっち?」など、日常で出くわす「エコ」の疑問を紹介している。140以上の疑問と合わせて、事実にもとづいた回答とシンプルな解決策が示されていて、わかりやすい。地球のために何かしたいと思ったら、日常生活をグリーンなものにするのが近道だろう。同書をツールに、日常的な行動を通して自宅やオフィスといった身の回りに変化をもたらそう。
「料理をすることは、生きること」を教えてくれる一冊。同書に掲載されているのは、いまある素材で自由に料理できるようになるため、あえて極限まで突き詰めたミニマルなレシピ。そのレシピと向き合うとき、当たり前に過ぎる日常の中にも、料理同様に「自分だけの分量」があることに気づかされる。料理を「生きること」と考えたとき、今日は何を選び、作るのか。本質を問うきっかけとなり、次世代へ受け継いでいきたくなる読書体験になるはずだ。
高知の山のふもとに暮らす著者とその家族の、シンプルで心地よい暮らしを描いたヒント集。サステナブルな暮らしを体現する著者が、持続可能な暮らしのノウハウや生き方を綴っている。元神奈川県葉山町役場のごみ担当職員という経歴を持ち、ごみやプラスチックの問題に精通しているからこその視点が詰まっている。「無理なく楽しくできることを」という姿勢で紹介されているので、自身に合ったヒントを見つけられるはず。
カリフォルニア在住のフランス人女性による、ものを持たない暮らしの実践生活を紹介。家族4人で1年間に出すごみの量が約1リットルという、驚異の生活を続けている著者の暮らしにはアイデアが満載だ。「ミニマリズム」の先を行く先進的な暮らしは、持続可能性のみならず、自らを見つめ直すきっかけにすらなるだろう。環境的にも経済的にもメリットの大きいゼロ・ウェイストな暮らしに踏み出すヒントにしたい一冊だ。
環境問題といえば、地球温暖化や気候変動を思い浮かべる人も多いだろう。SDGsの目標13に「気候変動に具体的な対策を」がある。以下では、気候変動の現状に向き合うための書籍を紹介する。気候変動に対する知識が深まると、SDGsへの理解も進むだろう。
地球温暖化を「逆転」させる方法が記された唯一の書籍。190人の研究者や専門家、科学者が集結して、綿密な調査にもとづく具体的かつ確実な解決策がまとめられている。100のノウハウと実践が紹介されており、それが今後30年間地球規模で活用された場合、地球温暖化を遅らせるだけではなく、人類にプラスの影響をもたらす見込みがあるとされる。13の言語に翻訳されている、世界が注目する一冊だ。
上に紹介した世界的ベストセラー「ドローダウン」の完結編。タイトルにもあるように、「一世代で気候危機を終わらせること」を目的に書かれている。すべての行動と決定の中心に生命をおくリジェネレーション(再生)の動きを定義しており、気候危機を防ぐためにできるもっとも重要な行動や解決策が紹介されている。
豊かな自然を守り次世代へ残す、生物多様性を豊かにするなど、陸の豊かさを考えることはSDGsにおいて欠かせない。土を大事に育む行動は、陸の豊かさから、ひいては海の豊かさまで繋がっているからだ。命の循環を育む土壌について知ることでSDGsをより深く理解するきっかけとなる書籍を紹介する。
腸内環境と心身の不調との関連について解説された一冊。人にとって、もっとも身近な自然環境は「腸内環境」であり、そこを人が根を下ろす「土」にあたるとして、食の選択を通して健康な「土」を取り戻すための方法が説かれている。近代農法や畜産が環境に与える影響や、それらを解決するための行動についても伝えてある。私たちにとって欠かせない「食べる」行為と環境がつながっていることを意識させられる内容だ。
日本で唯一固定種(在来種)のタネを扱う専門店の三代目主人が、伝統野菜を守り、タネを守る大切さを訴えた一冊。顕性(優性)遺伝子だけが発現する特徴から重宝され、日本の農業のスタンダードでもあるF1種(Filial1hybrid、一代雑種)のリスクを指摘し、タネを扱う著者の視点で人類のこれからが考察されている。「人類の歴史は、植物栽培の歴史」と話す著者の訴えは、野菜をはじめとする食べ物と向き合う姿勢を変えてくれるだろう。
SDGsの取り組みを推進したいと思っている企業は多いだろう。以下では、企業のSDGsへの取り組みやノウハウがつまった書籍を紹介する。SDGsの視点を持ってビジネスと向き合うヒントにしてほしい。
ミシュラン、グッチ、アディダス、アップルなどの各業界を牽引する企業による「SDGs実践の方法」を紹介する書籍。注目される「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」に関する取り組みも紹介。先端企業による環境と経済をつなげて考えるあり方や実践例は、新しい発想や仕組みづくりの参考になるだろう。
アウトドアブランド「パタゴニア」の、これからの時代を示す経営書。地球環境問題に対する取り組みを積極的に行うパタゴニアが何を考え、行動してきたかが紹介されている。迫力のあるアウトドア写真とともに、創業者であるイヴォン・シュイナード氏渾身のメッセージが綴られていて、読み応えのある一冊だ。タイトルの「社員をサーフィンに行かせよう」の言葉は、実際にパタゴニアが取り入れているフレックス制度から採用している。
社会問題をビジネスで解決するノウハウが公開された一冊。著者の田口一成氏は、株式会社ボーダレス・ジャパンの代表取締役社長。2007年に創業された同社は、貧困や難民、耕作放棄地やフードロスなどの社会問題を解決するソーシャルビジネスしか行わない。2021年4月現在、「LFCコンポスト」や「ビジネスレザーファクトリー」をはじめ、世界15カ国で40の事業を展開。ビジネスで社会をよくするノウハウや同氏が培ってきた知見は必見だ。
SDGsと一口にいっても、人によって踏み込める領域や深さは異なるだろう。「自分には何ができるだろう?」と思ったときに読みたいのが以下の書籍だ。多様な価値観や視点に触れることで、SDGsを“自分ごと”として捉えるための準備が整うのかもしれない。
音楽家・小林武史氏の対談集。政治家やアーティスト、ミュージシャンなど、同氏と親交のある15名をゲストに迎え、「利他と流動性」をキーワードに行った対談が言葉の記録としてまとめられている。「自然の一部である人間が、次の未来のために『進化』していくために、今すべきことは何なのか?」。各人との対話のなかから、持続可能な社会への手がかりや利他を育むためのヒントが得られるだろう。
地球にやさしい暮らし方を実践している10人のインタビューをまとめた一冊。登場する10人の肩書はデザイナー、文筆家、アーティスト……とさまざまでも、彼らの立っている場所は、エシカルの最前線。目の前で起きていることから目をそらさず向き合い、等身大のエシカルライフに変換している彼らに密着することで、環境問題に対する姿勢と地球が迎えることになるであろう未来について深掘りしている。同書を構成する多様な価値観を受けて、地球の未来について考えよう。
これまでエシカルに触れてこなかった人から有識者まで、幅広いニーズに応える目的でまとめられた同書。サステナビリティが必要とされるようになった背景の解説や統計の読み解き、調査などの幅広い知見がまとめられているほか、海外事例や識者の論考も掲載。これからのよりよい社会に向けて、エシカルというものさしで物事を捉えられるようになるために必読の一冊だ。
本記事で紹介したSDGsおすすめ本のなかに、気になるものはあっただろうか?
現在、地球や私たちが抱える課題は多岐にわたり、それらが複雑に絡み合っている。だからこそ、何から行動したらいいのか迷う人が多く、現状維持の姿勢をとりがちだ。
自分のアクションに迷ったときは、まず本を通してSDGsについて理解しようとすることからはじめよう。目を背けずに現状を把握する。これは立派な取り組みであり、SDGsに向き合うための入り口だ。
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