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フランスでは、2時間半以内の距離にある国内線のフライトが禁止されることをご存知だろうか。これに続き、プライベートジェットについても規制する可能性が出てきた。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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フランスでは、列車やバスを使い2時間半以内で移動できる国内線のルートについて、フライトを禁止する法律が2023年5月より施行される。
これは飛行機による二酸化炭素排出量を削減する取り組みで、2021年にフランス議会で可決されたものだ。対象となるのは、首都パリからボルドー、ナント、リヨンなどの人気都市を結ぶ国内路線。これにより、フランスの国内線のうち約12%が削減するという。
フランスは、地下鉄や路面電車、バスなどの公共機関が発達していることで有名だ。とくにパリの地下鉄には10以上の路線が走り、世界有数の優れた交通ネットワークを有する。そこで、列車やバスでアクセスできる距離については、飛行機の使用を禁止し、二酸化炭素排出量を削減することが狙いだ。
だが、富裕層が移動にプライベートジェットを利用して、二酸化炭素を排出していることに対して、反発が強まっている。こうした世論の高まりを受けて、フランスのクレマン・ボーヌ運輸大臣は、プライベートジェットの利用を制限する措置について検討中であることを明らかにした。
現段階において全面的な禁止予定はないが、プライベートジェットの利用に対する増税や、鉄道網が行きわたっている目的地へのフライト禁止などがあり得ると伝えている。
欧州のNGO団体「Transport&Environment」によると、プライベートジェットでの1時間のフライトによる二酸化炭素排出量は、ヨーロッパにおける成人一人の年間排出量の約4分の1に相当するという。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により国内線・国際線が激減したが、欧州のビジネスジェットの需要は増大した。事実、2019年にフランスを出発したフライトの約10分の1はプライベートジェット機で、その半分は300マイル(約480㎞)未満の短距離飛行だったそうだ。
ここ最近フランスは、歴史的な干ばつや猛暑に見舞われている。気候変動やエネルギー危機が追いうちをかけるなかで、富裕層や著名人の頻繁なプライベートジェット利用に非難の声が集中する。
ボーヌ運輸大臣は、「エネルギー利用の節約を国民が強いられているいま、プライベートジェットによる飛行は、気候変動への影響のため制限されるべきであり、個人旅行の手段としてあり得ない」と語る。今後、10月のEU運輸大臣会合で取り組みについて検討する計画であると話す。
かつては、プライベートジェットの利用は富と成功の象徴であった。しかし、世界は着実にネットゼロを目指しており、権力や経済力を超えて気候変動に責任を追うべきという風潮だ。しかもロシアのウクライナ侵攻により、ヨーロッパではエネルギー危機に陥り、人々はさまざまな規制のもと生活している。
今後、世界の富裕層や航空業界に対して、環境負荷を減らすためのより厳しい要件が突きつけられるだろう。
※参考
France Travel: Many Short-Haul Flights Outlawed From April|Forbes
France mulls regulations on private jets|Axios
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