ダボス会議とは? 2024年のテーマや内容、SDGsとの関連を解説

会議でメモをとる参加者たち

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世界経済フォーラム(WEF)が年に一度開催しているダボス会議。世界のリーダーたちが集う注目度の高い会議の詳細を学んでみよう。会議の内容や過去の会議の功績、日本からの参加者、SDGsとの関連性について幅広く解説する。さらに、2024年の会議のテーマや注目される内容を紹介する。

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2024.01.18
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目次

ダボス会議とは? 開催場所・参加者・主催者

ダボス会議とは、世界経済フォーラム(WEF)が開催する年次総会を指す。毎年1月に、スイス東部の保養地・ダボスで開かれることから、通称“ダボス会議”と呼ばれている。WEFの年次総会がスイスで開催される理由は、同団体の本部がスイス・ジュネーブに置かれているためだ。

ダボス会議の目的は、世界各国のさまざまな業界のトップを招き、世界経済や環境面での課題の解決に向けて議論を交わすことである。ダボス会議に招かれるのは、世界を代表する政治家や実業家たちだ。

2022年のダボス会議はコロナ禍を理由に例外的に5月に開催されたが、参加者の数は約2,500人にも上った。その内訳は、政府代表300人、企業のリーダーたちが1,250人以上。また、これからの時代を担うイノベーターやパイオニアたちが100人近く、さらにはNGOや社会起業家、学術界、労働団体、信仰団体、宗教団体から200名以上のリーダーが参加した。会場にはさらに、400名以上のメディアリーダーや報道関係者が集った。(※1)

2024年の日程は? 1月15日から開催

2024年のダボス会議は、1月15日から19日まで行われる。場所は、例年と同様にスイスで行われる。2024年会議の内容は、後述する。

世界経済フォーラム(WEF)とは

世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、1971年にスイスの経済学者、クラウス・シュワブによって設立された非営利財団である。運営資金は世界各国の企業や団体からの寄付金でまかなわれ、特定の利害と結び付くことなく、組織としての公正を保つ。(※2)

当初は「主にヨーロッパ企業のリーダーたちの社交場」としての役割を担っていたWEFだが、年を重ねるごとにその影響力は上昇。「組織は、社会を構成するすべての人々に対して責任を負う」とする“ステークホルダー理論”を根源に、さまざまな活動に取り組んできた。「世界競争力報告書」や「世界ジェンダーギャップ報告書」といった、各種データの発表もその一つである。

WEFの変化は、過去50年の間にダボス会議で扱われた議題にも表れている。同フォーラムが世界的な影響力を強めたいまでは、経済や技術、雇用といった事業活動に関わる問題のほか、環境や健康、さらには国際協力や社会平等までをも議題として扱うようになった。

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第1回から振り返るダボス会議の歴史と内容

第1回のダボス会議は、WEFが設立された1971年に開催された。31か国から450人が参加。欧米各国からの参加者が主となり、優れた経営技術に関して討議を行った。その後、50年の歴史の一部を紹介しよう。

1989年
このダボス会議では、「新しいヨーロッパ」を議題にセッションを開催。ベルリンの壁崩壊を念頭に置き、近隣地域の20の国と地域から首脳を招いた。事前に話し合う機会を持ったことで、東西ドイツ統一後の混乱は最小限にとどめられた。

1998年
世界各国を襲った金融危機から「世界的な金融システムの改革」をメインテーマに据えた。開発途上国を含めた「G20」設立のきっかけとなった。

2000年
世界の有名企業の支援のもとで「ワクチンと予防接種のためのグローバル同盟(GAVIアライアンス)」を設立。2018年までに、7億人以上の子どもたちに天然痘の予防接種を実施した。この活動によって救われた命は1,000万以上。開発途上国における重大な成果と言えるだろう。

2005年
この年以降からは、近年日本でも話題になる機会が多い、「女性の参画:グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)の測定」をスタート。調査結果は、その翌年より「グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)レポート」として公表されている。2016年には官民が足並みをそろえて第四次産業革命に対応できるよう、「第四次産業革命センターネットワーク」を設立した。

2021年
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、史上初のオンライン形式で開催された。テーマである「グレート・リセット」について、一度は耳にした経験がある方も多いだろう。第二次世界大戦以降につくられた仕組みを、いったん「リセット」することで、より平等で持続可能な世界の実現を目指す動きのことだ。WEFは、その実現に向けた具体的な取り組み方法を示している。

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また、毎年ダボス会議の目玉として発表される「Global100」にも注目が集まった。世界でもっとも持続可能な取り組みを行う企業を、ランキング形式で紹介。2021年にノミネートされた世界8,080社の中から、日本の5社が上位100位にランクインした。

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SDGsとも深く関わるダボス会議

SDGsは、2015年の国連サミットにて採択された国際目標である。2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットから構成され、国や企業、そして個人が、具体的な取り組みを行うよう求めている。

そんなSDGsが国際的にも高く注目されるようになったきっかけの一つが、ダボス会議である。2017年は「Responsive and Responsible Leadership」をテーマに開催されたダボス会議。主催の世界経済フォーラムは、その場で世界の財界首脳らによる調査結果を報告した。

その内容は、「企業が国連のSDGsを達成することで、2030年までに少なくとも12兆ドルの経済価値がもたらされ、最大3億8,000万人の雇用が創出される可能性がある」というもの。

これによりWEFは、企業がSDGsに前向きに取り組むメリットを明確に示したのである。それだけではなく、「SDGsに取り組まなかった場合のリスクやデメリット」をも明らかにしたのだ。

SDGsが議題の中心に

その後もダボス会議では、定期的にSDGsに関連するトピックが取り上げられている。2017年からは、毎年1回「持続可能な開発インパクト・サミット」を開催。ダボス会議と同様に、世界各国からさまざまな業界のリーダーが集い、SDGs達成に向けた議論と協働を目指している。

2019年には、世界経済フォーラムと国連による戦略的パートナーシップのもと、クラウド型デジタル・エンゲージメント・プラットホーム「Uplink(アップリンク)」の立ち上げを発表。これは、SDGs達成に向け、幅広い資金とアイデアを募るためのオープンソースプラットフォームだ。(※3)

世界各国からさまざまなリーダーたちが集うダボス会議は、SDGs達成に向けた動きを推進するためにも、恰好の場所と言えるだろう。国や企業、各種団体といった枠を飛び越え、「よりいい社会を実現するために、いま何ができるのか?」を考える場として機能している。

どのような日本人が出席しているのか

ダボス会議には、日本からもさまざまな業界のリーダーたちが参加している。たとえば、2020年のダボス会議には、日本から総勢99名が参加。これは、その年のダボス会議参加国の中で、7番目に多い数字であった。

ダボス会議に出席する人の顔ぶれは毎年変わるが、主に以下のような人々が参加している。

・政治家
・日本銀行総裁
・グローバル企業社長
・ノーベル賞受賞者
・大学教授
・俳優

世界的に見ても、強い影響力を持つ人々が参加していると言えるだろう。

2022年のダボス会議のテーマと今後

2022年のダボス会議は、2年ぶりに対面形式で開催された。そのテーマは「歴史的転換点における、政策とビジネス戦略のゆくえ」である。

2022年を迎えたいま、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナ侵攻、世界各地で頻発する地政学的な課題など、我々の社会は多くの問題に直面している。後の世から見れば、いまはまさに「歴史的転換点」と呼ばれる時代なのだろう。だからこそ、世界中のリーダーたちが対面し、今後の展望や解決策を話し合うことが、主要なテーマとして選ばれている。

具体的には、以下の6つの議題を柱と捉え、さまざまな議論が交わされた。

・世界と地域の協力関係を促進する
・経済回復を確保し、新たな成長時代を形成する
・健康で公平な社会の構築
・気候、食料、自然を守る
・産業の変革を推進する
・第4次産業革命のパワーを活用する

エネルギー問題や食糧危機問題など、さまざまなセッションの中で今後の方針や解決策が話し合われた。

またダボス会議の初日には、ロシアからの侵攻を受けるウクライナより、ゼレンスキー大統領がオンラインでメッセージを発信。国際社会からの継続的な支援を要請したことでも話題となった。

2023年のダボス会議とテーマ

2023年のダボス会議は、2023年1月16日に開幕。1月20日までの日程で、スイス東部の保養地ダボスで行われている。

過去最多52人の首脳が参加

2023年のダボス会議は、過去最多となる各国首脳らが集まる。ドイツのオラフ・ショルツ首相、フォン・デア・ライエン欧州委員長、中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相など、52人の首脳が集まる見込み。最終的には60人を超える可能性もあるという。日本の岸田首相は、米英などの首脳会談を予定しており、ダボス会議の出席見送りが報じられている。

また経済界からは、1500人が出席。このうち最高経営責任者は600人以上で、女性CEOの参加数も過去最多になると言われている。

出席を登録した資産家は、116人。ウクライナへの侵攻のため、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)は事実上締め出された。中国の資産家も出席する人物はいないとみられている。

テーマは「分断された世界での協力」

2020年冬に行われてから、約2年ぶりの対面での開催となる2023年のダボス会議。世界各国で進む記録的なインフレや、ロシアによるウクライナ侵攻のような紛争など、世界の分断が目に見える形となっている昨今。再びグローバル化を進めていくために、どのようなことができるのか、世界で協力することが求められている。

各国の首脳陣や企業幹部らが、世界で協力するために取り組むべき課題などについて議論する。

2024年のダボス会議とテーマ

2024年のダボス会議のテーマを見てみよう。

テーマは「信頼の再構築」

2024年のダボス会議のテーマは「信頼の再構築」。ロシアによるウクライナの進行や、イスラエルによるガザでの軍事衝突をはじめ、世界で分断が拡大している。そのため、問題の根本に目を向け、互いに信頼できる社会の再構築が求められている。

また、近年開発の目覚ましいAIに関することも議題となる。あらゆる業界で急速に進むAIの利用にともない、偽の情報が生まれるなど、大きな懸念点も生まれつつある。AIが世界経済の成長に貢献する可能性がある一方で、AIの規制についても対応が必要だ。

さらに気候変動のような環境問題への議論も鍵となる。2023年は観測史上もっとも暑い年となった。再生可能エネルギーの積極的な活用など、世界規模での早急の対応について、議論しなければならないだろう。

世界で注目されるダボス会議に関心を

毎年一度、スイスで開かれるダボス会議。「冷ややかなエリートの集まり」「無駄なおしゃべりの場」「金持ちクラブ」などと皮肉られることも多いのは事実だが、WEFと世界のリーダーたちが果たしてきた役割を振り返ってみれば、その功績は非常に大きいと言えるだろう。

近年、ダボス会議で開催されるセッションのなかには、SDGsとの関連が深いテーマも多い。2023年1月開催予定のダボス会議にも、ぜひ注目してみよう。

※掲載している情報は、2024年1月18日時点のものです。

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