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再生可能エネルギー発電促進賦課金(通称「再エネ賦課金」)は、再生可能エネルギーの導入を促進するために始まった制度。再エネ賦課金の算出方法・推移とあわせて、地球の環境問題解決のために「再エネ賦課金」の意味を考えてみよう。さらに、電気を大切にする15の節約アイデアを紹介する。
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電気代の検針票をよく見てみると「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という項目があることに気づくはず。これは通称「再エネ賦課金(再エネふかきん)」と呼ばれるもので、正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(ふかきん)」という。
電気を使う国民全員から、電気代の一部として徴収されているものだ。そのため、どの電力会社を使っていても、誰もが電気代とあわせて支払いを行っている。
再エネ賦課金は、2012年に始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT制度)」にもとづくもの。再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)で発電した電気を、電力会社が一定の価格で買い取ることを国が約束する制度だ。その目的は、「再生可能エネルギーの導入を促進する」ため。
現在、日本の電力のうち半分以上を担っているのが、石油・石炭などの化石燃料を使った化石火力。しかし二酸化炭素のような温室効果ガスの排出量を減らして地球全体の環境問題の解決を目指し、太陽光発電・水力発電のような再生可能エネルギーの割合を増やしていかなければならない。
化石火力 | 原子力 | 再生可能エネルギー | |
---|---|---|---|
2020年度 | 76% | 4% | 20% |
2030年度(見通し) | 41% | 20~22% | 36~38% |
しかし、再生可能エネルギーは従来の電気に比べて、まだコストが高い。このままでは再生可能エネルギーの普及には時間がかかってしまう。
そこで再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定の価格で買い取ることを国が保証。それによって発電施設などの建設コストをまかない、再生可能エネルギーの普及を目指しているのだ。
一般消費者は再エネ賦課金を電気代の一部として請求されるが、電気会社はその徴収したお金を国に納付しており、電力会社が余分に儲けているわけではない。
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の対象となっているのは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5つ。
太陽の光エネルギーを電力に換えるシステム。メンテナンスが簡易で、家庭用から大規模発電用まで導入が広がっている。天候により発電出力が左右されることが課題。
風の力で風車をまわし、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こす。風さえあれば昼夜問わず発電できるメリットがあるが、広い土地が必要で北海道や東北などの一部地域に集中している。
河川などの高低差で水を落下させ、そのときに生じるエネルギーで水車をまわして発電させる。安定的に長期間の運転が可能。だが事前の調査などに時間がかかる面がある。
地下に蓄えられた地熱エネルギーを取り出し、タービンをまわして発電する。日本は火山国のため、豊富な資源がある。しかし開発期間が10年程度と長く、開発費用も高額となるデメリットがある。
食品廃棄物、農作物残さなど、動植物などの生物資源(バイオマス)をエネルギー源とする方法。天候に左右されにくいが、原料の安定供給などに課題がある。
では再エネ賦課金の制度が始まってから、再生可能エネルギーの導入はどのくらい進んでいるのか気になるだろう。
2015年から2021年における、全電力に占める各再生可能エネルギーの割合は以下のとおり。とくに太陽光発電の割合が大きく伸びていることがわかるだろう。年平均26%で急成長しており、着実に成果を上げていると言えそうだ。
太陽光 | 風力 | 水力 | 地熱 | バイオマス | |
---|---|---|---|---|---|
2015 | 3.0% | 0.5% | 8.6% | 0.3% | 1.5% |
2016 | 4.4% | 0.5% | 7.6% | 0.2% | 1.9% |
2017 | 5.7% | 0.6% | 7.6% | 0.2% | 2.0% |
2018 | 6.5% | 0.7% | 7.8% | 0.2% | 2.2% |
2019 | 7.4% | 0.8% | 7.4% | 0.2% | 2.7% |
2020 | 8.5% | 0.8% | 7.9% | 0.3% | 3.2% |
2021 | 9.3% | 0.9% | 7.8% | 0.3% | 4.1% |
再エネ賦課金が再生可能エネルギーの普及のために集められ、その成果が現れてきていることを理解したところで、やはり気になるのが再エネ賦課金の金額だろう。再エネ賦課金は、以下の計算式で算出される。
再エネ賦課金 = 各家庭で使用した電気量(KWh)×再エネ賦課金の単価
再エネ賦課金は電気を使うすべての方が負担するもので、使った電気の量に比例して大きくなる。再エネ賦課金の単価は全国一律で、買取価格などを踏まえて毎年経済産業大臣によって決められる。
年度 | 単価 |
2022年(2022年5月~2023年4月) | 3.45円/kWh |
---|---|
2021年(2021年5月~2022年4月) | 3.36円/kWh |
2020年(2020年5月~2021年4月) | 2.98円/kWh |
2019年(2019年5月~2020年4月) | 2.95円/kWh |
2018年(2018年5月~2019年4月) | 2.90円/kWh |
2017年(2017年5月~2018年4月) | 2.64円/kWh |
2016年(2016年5月~2017年4月) | 2.25円/kWh |
2015年(2015年5月~2016年4月) | 1.58円/kWh |
2014年(2014年5月~2015年4月) | 0.75円/kWh |
2013年(2013年5月~2014年4月) | 0.35円/kWh |
※ ELEMINIST編集部制作
再エネ賦課金の制度が始まった当初は、単価が1KWhあたり1円以下だったのに、2022年は3.45円まで上昇。年々値上がりが続いている。太陽光発電をはじめ再生可能エネルギーの普及が進むほど、国民の再エネ賦課金の負担は大きくなっている。
4人家族の場合を例に取り上げてみよう。4人家族の平均電気使用量は月400KWhほどなので、2013年に徴収された再エネ賦課金は、月140円(400KWh×0.35円)だ。だが2022年は、月1,380円(400KWh×3.45円)に増加している。
総務省統計局の家計調査(2021年)によると、4人家族の平均電気代は月11,376円だったので、毎月の電気代のうち1割以上を再エネ賦課金で占めることになる。
決して安くはない再エネ賦課金。この徴収はいつまで続くのだろう?
日本政府から再エネ賦課金がいつまで続くのか、発表はされていない。つまり、将来的には再エネ賦課金の制度がなくなるとしても、それはまだ先のことのようだ。
再エネ賦課金は固定価格買取制度と関連があるため、固定価格買取制度が続く限りは再エネ賦課金の徴収も継続して行われると見ていて間違いないだろう。
年々負担が大きくなっていく再エネ賦課金。これに加えて、2022年はウクライナ情勢により世界のエネルギー価格が急上昇しており、家計への打撃は無視できるものではない。そのため「再エネ賦課金はおかしい」という声も上がっているようだ。
しかし再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの割合を増やしていくためには必要不可欠と理解いただけただろう。しかも気候変動がますます進み、私たちの生活にもさまざまな影響を及ぼし始めているいま、このエネルギー体制のシフトは先延ばしできる問題ではない。
また日本はエネルギー自給率が低く、国際市場の価格に左右されやすい。そのため自国でまかなえる再生可能エネルギーの割合を大きくすることは、エネルギー価格を安定させることにつながる。
たしかに、再エネ賦課金は私たちの負担をともなう。しかし未来の地球や、日本のエネルギーにとって、この取り組みは「未来のための投資」と捉えることができるのではないだろうか。経済的な負担にばかり目がいきがちだが、そんなふうに考え方をシフトしていくべきかもしれない。
ちなみに海外では、ドイツでも同じ再エネ賦課金の制度が取り入れられ、多くの国民が再エネ賦課金を受け入れているという。
再エネ賦課金の金額は、使用した電気量が多いほど高くなる。そのため電気使用量を下げることが、電気代を抑えることにつながる。そこでおすすめのアイデアを、初級編・中級編・上級編にわけて紹介しよう。
「使っていない照明をこまめに消し、使用していない電気製品はコンセントを抜く」といった、小さな取り組みでも電気代の節約につながる。またスマホの充電はソーラー充電器を利用するなど、自身の生活に取り入れられるところから、再生可能エネルギーを使うといったアイデアもぜひ試してみて欲しい。
1. 使っていない電気製品はコンセントを抜く
2. スマホを低電力モードにする
3. 冷蔵庫にモノを詰め込みすぎない
4. 炊飯器は長時間保温しない
5. お湯はポットに入れて保温する
6. エアコンのフィルター掃除をこまめに行う
7. 冷房・暖房は扇風機と一緒に使う
8. 温水洗浄便座の温度は低めに設定する
9. ソーラーモバイルバッテリーを使う
身近なアイテムには省エネ製品が数多くあるので、それらを選んで使うこともおすすめだ。
また東京都では省エネ製品へ買い替えるとポイントを付与する「東京ゼロエミポイント」を実施。東京電力では対象の時間帯に節電すると”節電ポイント”がもらえる「節電チャレンジ」を行うなど、各電力会社が節電キャンペーンを実施している。契約中の電力会社や自身の地域で、そのような取り組みが行われていないか調べて、ぜひ活用してほしい。
10. 圧力鍋や省エネ調理鍋を使う
11. LED照明を選ぶ
12. 省エネ家電を使う
13. ワットチェッカーを使って消費電力を把握する
上級者なら、ソーラーパネルを自宅に設置したり、電力会社の電力に頼らない「オフグリッド生活」を始めたりしてもいいだろう。
14. 太陽光パネルを設置する
15. オフグリッド生活を始める
電気代の高騰とともに注目されている再エネ賦課金の存在だが、この機会にその目的をあらためて理解してはいかがだろう。そして、小さなことから電気を使いすぎない心がけを始めてみることをおすすめする。
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