割れたり欠けたりした器を捨てずに長く愛用できるのが、金継ぎという手法です。この記事では、必要な材料・道具が揃った初心者向けキットを使った基本のやり方について、7つの手順ごとに詳しく解説。さらに、体験レポートに沿って、きれいに仕上げるコツやポイントをご紹介します。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ
今回は2つに割れたこちらの皿で金継ぎに挑戦。具体的な作業内容と実際に体験した感想、きれいに仕上げるポイントも併せて紹介します。
漆は温度が20度、湿度が80%ぐらいが最も硬化に適した条件。効果的に漆を乾かすために、ムロと呼ばれる専用の箱を用意しましょう。つくり方は、
・段ボールに湿らせたタオルを敷く
・高さ3〜5cmの段ボールでつくった底上げ用の台を置く(器が濡れタオルに触れないようにするため)
麦漆は薄いと接着力が弱くなるので、厚めに塗るのがポイント。また、周りについた麦漆は、柔らかいうちにきれいに拭き取っておくのがおすすめです。乾かしたあと、工程02で削る作業がありますが、固まっていて大変。
また、生漆を混ぜたときの色が見本(商品についてくるパンフレット)と異なり不安になるけれど、あまり気にしなくて○。「生漆は木の樹液で、生き物です。出した時は乳白色ですが、空気に触れると、どんどん色が濃くなります。高温高湿下ほど色の変化が早くなります。個体差ももちろんありますが、使用する条件下で色の変わり方が異なります」(「堤淺吉漆店」談)とのこと。
凹みが大きい部分には錆を重ね塗りし、埋める作業が必要です。錆付けの厚みは1mmが目安。それ以上厚いと中が乾かなかったり、ひび割れしたりする原因になるので要注意。
STEP4の後、ムロに入れる前に半日ほど水分を飛ばしましょう。そのとき、乾燥により錆の体積が減り、想像以上に凹んでしまいました。その場合は、さらに上から錆を追加します。STEP4で余った錆は、ラップに包んで保管しておくとすぐに使えて便利です。
STEP1の研ぐ工程できれいに仕上げておかないと、絵漆を塗ったときに表面のボコボコが目立ってしまいます。研いだ部分は指で触り、凹凸がないか確認しましょう。かといって、研ぎすぎには注意。お皿自体の釉薬が傷ついてしまったり、凹み部分に埋めた錆が削れすぎてしまいます。研ぎすぎた場合、または、そもそも錆が足りずに凹んでしまっている場合は、02の工程を繰り返します。
中塗り(絵漆)は、透けない程度に、かつ厚みがでないように、薄く、均一に塗るのがポイント。絵漆を塗った部分に金粉が蒔かれるので、仕上がりがイメージでき、気分も上がります。ムロに入れ、2〜3日置きます。
STEP1の研ぎ方は、表面をやさしく撫でるだけ。絵漆の下の錆が見えてこないように要注意。STEP2の地塗りは、厚く塗ると金粉が沈んでしまうので、薄く、均一に、がポイントです。塗り方は中塗りと同じ。
金粉は思い切っていっぱい取り、多めにのせましょう。そして、軽く"ポンポン"とすると、きれいにのりました。うまくのらないところは、再度、絵漆を塗ってから金粉をのせます。仕上げに真綿を使って蒔くと、とてもきれいに仕上がります。その後、ムロに入れて3日以上乾燥を。タオルは常時、湿らせておきます。
ティッシュペーパーを押さえつけて生漆を吸い取る工程では、擦ると金粉が取れる恐れがあります。やさしく押さえつけて、ティッシュペーパーに付かなくなるまで繰り返しましょう。ムロに入れて、2日以上乾かします。
胴摺粉で磨く作業は、金色の部分がメタリックに輝くまで繰り返し行いましょう。菜種油や胴摺粉を付けすぎると浮いてしまい、うまく磨けません。いずれも少なめで作業するのがポイント。磨き終わったら、中性洗剤で油を洗い流します。
"せっかく塗った金粉が擦ると取れてしまうのでは?"と心配になるこの工程。何のためにやるのか「堤淺吉漆店」に聞いたところ、「胴摺粉は粒子が荒く、削った面は拡大して見ると細かい傷が入り毛羽だった状態になっています。その傷を埋める作業です。この工程で金が取れることは滅多にないので、安心して作業してください」とのこと。ムロに入れて2〜3日乾かします。
いよいよ仕上げ作業。工程06と同じ手順で、磨き粉(みがきこ)を使って磨き作業を行います。菜種油と磨き粉は、つけすぎないのがポイント。最後に、中性洗剤で油を洗い流したら完成。
すべての工程が終わり、金が剥げてしまったり、思うようにきれいに仕上がらなかったらどうすべきか。「仕上がりに凹凸がある場合は、平らになるよう削ってください。また、金が剥がれた部分だけ蒔き直すか、そのまま重ねて蒔き直しても大丈夫です」(「堤淺吉漆店」談)とのこと。
次のページでは、丁寧に心を込めて修復した金継ぎの器を、長く大切に使うための「取り扱い注意点」と、金継ぎが「できる器・できない器」をご紹介。
ELEMINIST Recommends