割れたり欠けたりした器を捨てずに長く愛用できるのが、金継ぎという手法です。この記事では、必要な材料・道具が揃った初心者向けキットを使った基本のやり方について、7つの手順ごとに詳しく解説。さらに、体験レポートに沿って、きれいに仕上げるコツやポイントをご紹介します。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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金継ぎとは、割れたり欠けたりした食器を、天然の漆と純金粉で修理する伝統技法のこと。割れた(欠けた)部分を漆で接着し、その上から金で装飾して修理するため、元の食器とは違った味わいが楽しめます。
壊れたものを捨ててしまうのではなく修復し、長く大事に使う、日本らしい習慣がよく表された文化です。さらに、壊れた部分を隠すように直すのではなく、あえて金粉で目立たせ、デザインのように仕上げてしまう。なんとも粋ですね。気に入った食器を永く使い続けることができるので、サステナブルな観点から、ここ数年注目が集まっています。
注目度の高まりから、金継ぎの体験教室や金継ぎキットの販売が増えています。本格的なものから合成樹脂を使った簡易的なものまで多様にあり、初心者にとってはどれを選んだらいいか判断が難しいのも事実です。そこで、明治42年の創業以来、京都で漆の精製・販売をしてきた「堤淺吉漆店」に金継ぎの種類について聞いてみました。よく耳にするものは以下の2つ。
①金継ぎ:接着から下地、塗りのすべてに天然漆を使用した伝統的な技法
②簡易金継ぎ:接着にエポキシ樹脂などを使用。上からコーティングするように天然漆を使用する場合や、塗りにも化学塗料を使用する場合がある
「堤淺吉漆店」によると、「天然漆で接着し、金粉で装飾する古来から伝わる伝統技法のみが、金継ぎと呼ばれるので、①のみが正しい金継ぎです。②は”金継ぎの真似"といったところでしょうか」とのこと。ただ、時代とともに伝統技法が簡易化されることは珍しくないこと。「頭ごなしにNGというわけではなく、教室なら受講者に、キットなら購入者に、合成樹脂を使うこと、本来の金継ぎとは少し異なることを明確に伝え、受け手が納得したうえで選ぶのであれば、それもいいのではないでしょうか」。
②は、接着剤にエポキシを使用していることが多い。人体に影響があるかはわかりませんが、化学物質であることに間違いありません。食器は食べ物に触れるものなので、自己判断で安心できるものを選ぶようにしましょう。ここでは①の天然漆を使った伝統的金継ぎをキットを使っています。
金継ぎと呼ばれる所以は、仕上げに金粉を蒔くから。けれど、使う素材は金粉以外でも可能です。銀粉や錫(すず)粉、真鍮粉など、他の金属粉が使われることも。また、粉を蒔かずに、赤や黒などの顔料を練り合わせた色漆でカラフルに仕上げる方法もあります。「ふだん使いの食器を直すなら色漆もおすすめです。色漆は2回塗っただけで仕上げられるので、金属粉より作業が簡単です」(「堤淺吉漆店」談)とのこと。
家で金継ぎをしたいと思ったら、まずは材料と道具の準備。ことのほかたくさんあり、すべてを自分で揃えるのはなかなか大変です。初心者は、必要なものが揃ったキットを使うのが手軽でおすすめ。今回は、※印以外を含む「金継ぎキット」を使用しました。
生漆(きうるし) | 接着時などに使用 |
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絵漆(えうるし) | 金粉を定着させるために塗る弁柄色(赤色)の漆 |
テレピン油 | 漆を薄めたり、漆を拭き取るときに使用 |
砥之粉(とのこ) | 凹みや穴を埋めるときの錆(さび=パテ)に使用 |
胴摺粉(どうずりこ) | 金をみがくときに使用 |
磨き粉(みがきこ) | 金をみがくときに使用。胴摺粉より粒子が細かく仕上げに使う |
純金粉 | 仕上げの装飾に使う粒子の細かい金粉 |
小麦粉(※) | 接着用の麦漆(むぎうるし)を作るときに使用 |
菜種油(サラダ油でも可)(※) | 金継ぎ部分を磨くときに潤滑剤として使用 |
代用蒔絵筆(まきえふで) | 細い線を書く用の筆 |
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代用地塗筆(じぬりふで) | 面を塗る用の筆 |
毛棒(けぼう) | 金粉を蒔くときに使用 |
耐水ペーパー(#600、#800、#1000) | 水を付けながら研磨するための紙状やすり(番号が大きいほど目が細かい) |
プラスチックベラ、スポイト、スプーン(匙) | 小麦粉・水・漆を混ぜて麦漆を作るときなどに使用 |
小皿 | 漆を混ぜるときに使用 |
マスキングテープ | 器の接着時の固定用 |
ビニール手袋 | 漆のかぶれから肌を守るため、作業時は必ず着用 |
段ボール(※)、調湿用タオル(※) | 器を乾かすときに保管する"ムロ"用 |
新聞紙(※) | 作業台の汚れ防止 |
カッター(※) | はみ出て乾いた麦漆を削り落とすときに使用 |
金継ぎの作業は、細かく区切ると7工程ありますが、大まかに分類すると次の3ステップです。
1.器の接着:小麦粉・水・漆を混ぜ合わせた麦漆をつくり、器を接着する作業
2.器の凹みの穴埋め:砥之粉・水・漆を混ぜ合わせた錆(さび)をパテとして使用し、凹んだ部分を穴埋めする作業
3.仕上げ(粉蒔き):金粉を使用し、仕上げる作業
次のページでは、具体的な作業手順と、実際に体験してわかったコツやきれいに仕上げるポイントをご紹介。
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