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近年、さまざまな企業が具体的な取り組みをスタートしている「クローズドループ」。どのような意味があるのか、あらためて確認してみよう。クローズドループのメリットや仕組み、企業の取り組み事例を解説する。持続可能な社会の実現を目指そう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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クローズドループとは、循環型経済を意味するサーキュラーエコノミーの基本的概念である。英語表記にすると「Closed loop」。消費された製品を新たな資源と捉え、また製品を生み出す流れが「閉じた輪」のように見えることから、この名前で呼ばれている。
クローズドループについてより理解を深めるためには、まず従来の流れであるリニアエコノミー(Linear Economy)について知る必要があるだろう。リニア型とは「直線型」のことを指す。資源を用いてつくられた製品は消費者の手にわたり、消費されたのちに廃棄される。こうした一連の流れは一方向に進む直線であり、資源が循環することはない。
従来の経済活動ではリニアエコノミーが一般的であった。しかしその結果、資源は大量消費され、大量の廃棄物が生み出されたのだ。我々が直面する環境問題を解決するためにも、サーキュラーエコノミーとその基本的概念であるクローズドループが注目されている。
クローズドループの対義語に「オープンループ」という言葉がある。オープンループは、その名前のとおり「ループが閉じていない状態」を指し示している。循環はしているものの、ループが閉じていない以上、どこかで漏れが発生するわけだ。
オープンループの場合、一度使われた資源が全く同じ形で使われることはない。真の循環型経済を目指すのであれば、クローズドループのシステムが優れていると言えるだろう。
クローズドループがもたらすメリットは、主に以下のとおりである。
・廃棄物削減
・持続可能な原材料の調達と発展
・オープンイノベーション創出の可能性
・新規雇用創出のチャンス
クローズドループでは、消費された後に発生する廃棄物は新たな資源として同じ目的で扱われる。つまり、廃棄物が発生しない仕組みである。世界が抱えるごみ問題を解決するためのヒントとなるだろう。
また、廃棄物が資源として使われるメリットは、それだけではない。新たに必要となる資源を削減できれば、持続可能な原材料の調達が可能になるだろう。限られた資源を食い尽くす産業は、いずれ発展の限界を迎える。クローズドループであれば、末永い発展が見込めるのだ。
しかし、クローズドループを実現するのは決して簡単ではない。多くの企業の協力や、さまざまなオープンイノベーションが必要だろう。見方を変えれば、新しい経済活性のチャンスでもある。多くの人が関わるようになれば、新規雇用のチャンスも生まれていく。
エレン・マッカーサー財団が提示する「サーキュラーエコノミーの3原則」は、以下のとおりである。(※1)
・廃棄物と汚染の排除
・製品と原料を最高の状態で使い続ける
・自然を再生する
クローズドループでは、製品づくりの設計段階から廃棄物が出ないように配慮される。廃棄物ではなく、どうすれば資源として再活用できるのかを事前に考慮した上で製品がつくられるというわけだ。
たとえば、再生可能材料のみを使用する、使用後に容易に分解しリサイクルできる仕組みを取り入れるといった工夫が挙げられる。設計段階から配慮されているため、完全に輪が閉じた状態での循環が可能になるわけだ。
また、近年注目されているキーワードに「クローズドループリサイクル」がある。これは廃棄された製品を素材として再利用するリサイクルを指す。不純物さえ除去すれば、同じ素材としてリセットが可能。さらにそのループは無限に続いていくため、サーキュラーエコノミー実現のための手段として、注目されている。
環境問題への具体的なアプローチ法として、クローズドループに力を入れる企業は少なくない。5つの事例を紹介しよう。
ファストファッションで知られるH&M(エイチ・アンド・エム)が、2020年に公開したのが新プロジェクト「Looop(ループ)」である。廃棄される衣類から新たなファッションアイテムを生み出す、画期的なリサイクルシステムだ。リサイクルされる様子は、スウェーデンの店舗内にて公開されている。大型の機械に古着を入れると内部で分解、複数の素材を組み合わせ、新しい服を生み出す技術を採用している。
2021年から、大手スーパーイオンが丸紅グループと協力しスタートしたのが、「ボトル to ボトル」の取り組みである。グループ各店で回収した使用済みペットボトルを原料に、新たなペットボトルをつくり出す。つくられた新ペットボトルは、イオンのPB(プライベートブランド)商品に使われる予定だ。2030年の100%達成を目指し、対応エリアを順次拡大中である。
「hejhej」は、世界初のクローズドループヨガマットブランドである。2018年に発売した「hejhej-mats」は、連邦エコデザイン賞にノミネートされるなど、世界的に注目を集めた。製品は家具製造過程で発生する端材をリサイクルする形でつくられる。1~10年使用し寿命を迎えたヨガマットは、その100%がリサイクルされ新たな製品に生まれ変わる仕組みだ。顧客が製品を返却すると、新製品購入時に使える割引クーポンが配布される。「hejhej-mats」については、以下の記事でも詳しく解説している。
自動車メーカー大手Audi(アウディ)では、「アルミニウムクローズドループプロジェクト」を実施している。バッテリーハウジングに使われるアルミニウムをボーキサイトから取り出すためには、膨大なエネルギーが必要だ。端材をサプライヤーに戻してリサイクルする仕組みを確立しており、使用原料と消費エネルギーの双方を削減している。(※2)
iPhoneやMacで世界的に人気を集めるApple(アップル)社。古い製品から必要な資源を取り出し、新たな製品の原料とする取り組みを実施中だ。いずれは採掘された天然資源に頼らず、リサイクル素材100%での製品づくりを目標としている。すでに、メインロジックボードやカメラに使われる金は、100%リサイクルされたものへと変更されている。また、タングステンやスズなども、クローズドループ型のサプライチェーンへの移行が進められている。(※3)
クローズドループは、サーキュラーエコノミーを実現するために欠かせない概念である。消費済みの製品を原料に新たな製品を生み出せれば、限りある資源の有効活用にもつながるだろう。
完璧なクローズドループを実現するのは決して簡単ではないが、すでに具体的な取り組みをスタートしている企業も多い。それぞれがどのような形でクローズドループを実現しようとしているのか、今後も注目してみよう。
※1 What is a circular economy?|ELLEN MACARTHUR FOUNDATION
※2 Audiは循環経済を推進する|Audi
※3 We’re carbon neutral.|Apple
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