BEAUTY
ドイツのものづくり Vol. 3

この惑星の未来を守る 世界初クローズドループヨガマット「hejhej」

ドイツではいま、サステナビリティにビジネスアイデアを見出した多くの企業が、世界に羽ばたこうとしている。多くの環境型ベンチャーが、自社の成長と環境への配慮を両立できる理由はどこにあるのか。ベルリン在住ライターのKiKiが、現地の企業やブランドの創設者にそのヒントを探る。

2020.09.11

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、ベルリンではロックダウンが行われた。ロックダウン中は、スーパーへの買い出しなど必要最低限の外出しかできず、運動不足を日に日に感じるようになった。

そうして、たまにしかしなかったヨガが日課になった。ヨガは、こわばった体をほぐしてくれただけでなく、先行きが見えず不安だった心も癒してくれた。

ある日、毎日の相棒に変わったヨガマットのことがふと気になった。3年前に絵柄が好みという理由だけで購入したが、このマットはどのようにつくられていて、役目を終えた後はどのような道を歩むのだろう。

偶然見つけたhejhej-mats

さっそくインターネットで調べてみると、筆者が購入したものとは別のブランドだが、とても丁寧に解説しているサイトを見つけた。

読んでみると、なんとそのヨガマットは世界初の「クローズドループヨガマット」ーーつまり、廃棄物を原料につくられ、使用後にはまるごとリサイクルされるという、リサイクルの輪を永遠に循環するヨガマットだったのだ。とても興味深く、すぐにそのブランドのファンになった。

今回は、サステナブルなヨガマットブランド「hejhej-mats(ヘイヘイマット)」を紹介したい。

創立者であるAnna  (アナ) とSophie (ソフィー) に、クローズドループヨガマットとは一体何なのか、hejhej-matsに込めたサステナブルへの熱い想いをうかがった。

話をうかがった人 

共同創立者 Anna (アナ・28)とSophie(ソフィー・27)

共同創立者 Anna(アナ・28)とSophie(ソフィー・27)

二人が出会ったのは、ドイツの隣国、スペインのマドリード。Sophieは学士課程の勉強中だった。もともとサステナビリティに興味があった二人はすぐに意気投合し、一緒にスウェーデン・マルメにある大学の修士課程へ進む。

大学では、サステナビリティマネジメントを専攻。同時に、二人はビジネスパートナーとなった。在学中に世界初のクローズドループヨガマットブランド「hejhej」を立ち上げたのだ。

修士号取得後は故郷であるドイツに拠点を移し、hejhej-matsをフルタイムで取り組み続けると決心。2017年の秋に行ったクラウドファンディングを滑り出しとして、本格的に活動を始動した。

ブランドとして正式に「hejhej-mats」をリリースした2018年には、連邦エコデザイン賞にノミネート。さらに2019年スウェーデンのオーツミルクで有名なブランド「OATLY」から今月の起業家賞を受賞するなど、エシカル界隈でもその名を馳せている。

hejhej-matsとは

hejhej-mat

Photo by Maria Bayer

(左)rather dark hejhej-mat (右)rather light hejhej-mat 各€129

AnnaとSophieが生み出した、世界初のクローズドループヨガマット。製品の生産プロセスから役目を終えるまで、そのすべてに責任を持ち100%リサイクルする。

そうすることで新たに排出されるプラスチック廃棄物を節約できる。ヨガマット自体も長期間使用できるように設計されていて、滑りにくく、心地よいクッションでサステナブルなヨガライフをサポートする。

役目を終えたヨガマットは、どうなるのか

hejhej-mat

Photo by Maria Bayer

ーー大学でサステナビリティマネジメントを専攻されていたそうですが、 その分野に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう? また、どのようなことを学ばれたのでしょうか?

わたしたち二人とも、サステナビリティにはとても長い間関心を持っていました。最初は個人的な意識や取り組みでしたが、やがて自分たちの仕事にも取り入れるべきだと強く感じるようになりました。

そこでスウェーデン・マルメにある大学へ行き、サステナビリティマネジメントを学ぼうと決めたのです。大学では、サステナビリティ戦略だけでなく、組織の管理戦略についても学ぶことができました。

ーーhejhejの立ち上げまでのストーリーを教えてください。

ある日スウェーデンで行われた、刺激的な美術展を訪れました。それはトルコ出身のアーティスト・Pinar Yoldasによるものです。ヨガ実践者たちに、自分のヨガマットが環境や生態へ与える影響を認識させる、という内容でした。ヨガ実践者たちが持っていたヨガマットは、プラスチックからつくられていたのです。

当時、スウェーデン・マルメの大学でサステナビリティマネジメントの修士号を勉強していたわたしたちは、その美術展を見たとき、一種の呼びかけを感じました。

そして「もっと持続可能な選択肢があるのではないか」と考え、研究を始めました。その過程でいくつか代用素材を発見することができましたが、満足できませんでした。

そこで自分たちで問題を解決し、リサイクル素材でつくられたヨガマットを開発することにしたのです。これが、hejhej-matsのはじまりです。
hejhej-mats

Photo by Maria Bayer

ーーhej hejの名前の由来はなんでしょうか?

「hej hej」はスウェーデン語で「こんにちは」という意味です。 スウェーデンで持続可能なヨガマットのアイデアが生まれ、製品開発が始まったので、ブランド名でスウェーデンとの密接なつながりを表現したかったのです。 

役目を終えたヨガマットや工業製品の廃棄物をリサイクルというかたちで新しい製品として迎え入れ、「Hej hej!」とあいさつしたいという思いも込められています。

世界初のクローズドループヨガマットの仕組みとは

ーー hejhej-matsのリサイクルシステムについて、詳しく教えてください。

hejhej-matsは、家具やマットレスなどの製造過程で自然に発生する発泡製品の切れ端を使用してつくられています。役目を終えたヨガマットは、100%リサイクルされます。
hejhej-matsのクローズドループ図

illustration by Pia Salzer

上記の図のように、まず発泡製品の切れ端からhejhej-matsを生産します。お客様の手に届いたら、一緒にヨガを楽しんでいただきます。使用方法や状況によって変わりますが、1〜10年は使うことができます。

ヨガマットが役目を終えたら、hejhej-matsに返却してもらいます。メールで簡単にお知らせいただいたら、こちらから送った返送用ラベルを貼って送り出してもらうだけです。送料は無料で、返却してくださったお客様の次回のご注文は15%割引となります。

返却されたヨガマットは工場へ行き、成分から分解され、新しいヨガマットとして生まれ変わります。そしてまた新しいお客様のもとに届くのです。

このクローズドループシステム(廃棄物を処理して再利用するシステム)を導入してつくられたヨガマットは、世界でhejhej-matsがはじめてです。
hejhej-bagのクローズドループ図

illustration by Pia Salzer

また、ヨガマットを持ち運ぶための「hejhej-bag」も同様にシステムクローズドループを採用しています。

ジッパーは漁網をリサイクルし、ストラップの素材は麻を使っています。麻は綿よりも栽培時に必要な水量が少なく、どこでも栽培が可能だからです。

hejhej-bagは市場に出ている製品のなかで、もっとも持続可能なヨガマットバッグです。hejhej-matsの発表は、ヨガ産業に革命を起こす、わたしたちにとって次のステップとなりました。
hejhej-duo(ヨガマットとバックのセット)

Photo by Maria Bayer

hejhej-duo(ヨガマットとバックのセット) €198

ーー 完璧なリサイクルの輪ですね! 製作時にこだわったポイントは何でしょうか?

まず、滑りにくくすることでヨガのポーズをとりやすくするために、開発過程で多くのヨガの先生たちと協力しました。

そして循環型経済の概念、つまり無駄を最小限に抑え、利用可能なリソースを最大限に活用するために、素材は100%地元・ドイツで調達しています。

ちなみにヨガマットの斑点模様は、リサイクル素材を使用したことによって、自然に生まれたものです。とてもユニークで、わたしたちも気に入っています。
hejhej-duo

Photo by Maria Bayer

hejhej-matsはひとつ€129と比較的高い値段です。わたしたちも最近まで学生でしたし、それは十分理解しています。しかし近年の環境問題とこの商品がつくられた背景について考えた場合、この値段の価値は正しく、地球の未来につながると思っています。

でも、もしあなたがhejhej-matsに興味を持ったとしても、しかし、いま他のヨガマットを持っているとしたら、そのマットが役目を終えるまで大切に使ってあげてください。

あなたがその次のパートナーとしてhejhej-matsを選んでくれたのなら、わたしたちはとても嬉しく思います。

会社の中核は「持続可能」

ーー 製品の開発部分以外でされている持続可能な取り組みはありますか?

わたしたちの会社の中核は「持続可能」です。製品自体がすでに生態学的側面に関するものなので、社会的側面で何かできることがないかと考えていました。

そこで、ハンディキャップを持つ人々が働く職場と協力することを決めました。彼らはとても丁寧にヨガマットにロゴを縫い付け、梱包し、発送してくれています。
hejhej-mat

Photo by Maria Bayer

わたしたちはそこを訪れるのが大好きです。人々に仕事を与え、社会の循環の輪を生み出すことは、重要な感謝の形であると実感しています。
※掲載している情報は、2020年9月11日時点のものです。