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ドイツのものづくり vol.1 コーヒーかすをカップに再利用 Kaffeeformに聞く持続可能なビジネスのヒント

ドイツ・ベルリンではいま、サステナビリティにビジネスアイデアを見出した多くの企業が、世界に羽ばたこうとしている。多くの環境型ベンチャーが、自社の成長と環境への配慮を両立できる理由はどこにあるのか。ベルリン在住ライターのKiKiが、現地の企業やブランドの創設者にそのヒントを探る。

2020.06.24

世界の最先端はサステナブルとエシカル。人も企業もこの二つのことを考えている。私が住むベルリンでも、斬新なアイデアと熱い思いが込もったプロダクトたちが日々産声をあげている。

こんな時代だからこそ、素直に、献身的に取り組んでいる企業や人を応援していきたい。海外のサステナブルとエシカルの情報を日本に届け、みんなの意識を変えていきたい。そんな想いがあり、この連載を書かせていただくことになった。

今回は、コーヒーの抽出かすを利用したコーヒーカップブランド「Kaffeeform(カフェフォルム)」を紹介したい。創立者Julian Lechner(ユリアン・レヒナー)氏に、カップに込められた想いとサステナブルについて、とても熱い話を聞くことができた。

話をうかがった人

ユリアン・レヒナーさんのプロフィール写真

Julian Lechner(ユリアン・レヒナー) 「自動車ではなく、自転車に乗る。地元の商品、季節のものを買う。浪費と過剰消費を避ける。日々少ないもので暮らす工夫を。それが、とても心地がいい」

1985年ドイツ・ベルリン生まれ。イタリア・ボルツァーノで学際デザイン*(interdisciplinary design)を学ぶ。2010年、ニューヨークにあるStephen Burks氏のReady Made Design Studioに勤務。ベルリンに戻り、2011年から2014年までプロダクトデザイナーWerner Aisslinger氏のスタジオにてアシスタントとして勤務。2015年にKaffeeformを設立。
*学問や研究の専門領域を超えたデザイン

Kaffeeformとは

2015年、ドイツ・ベルリンで創業した「Kaffeeform」。コーヒーかすと植物ベースの再生可能な材料から、コーヒーカップをつくっている。エスプレッソカップ、カプチーノカップ、ミルクコーヒーカップ、ウィドゥーサーカップの4種類を展開。また社会事業として地元企業と協力し、地域循環にも貢献している。

もし、コーヒーかすが廃棄物として処理され続けたら

kaffeeformの商品一覧

左から、カフェフォルム ラテ カップ&ソーサー 22,90 €、カフェフォルム ウィドゥーサーカップ 15,90 €、カフェフォルム カプチーノカップ&ソーサー 19,90 €、カフェフォルム エスプレッソカップ&ソーサー 14,90 €

ーー「Kaffeeform」を立ち上げまでのストーリーについて教えてください。

学生時代、ぼくはイタリアのボルツァーノで学際デザインを研究していました。当時からコーヒーが好きで自分で淹れたりしていたんですが、ある日ふと疑問に思ったのです。

「毎日生まれるこの大量なコーヒーかすが廃棄物として処理され続けたとしたら、地球環境にどんな影響があるのだろうか?」と。

コーヒーの消費量は絶えず増え続けています。これを廃棄物ではなく、資源として再利用する方法はないだろうかと思ったんです。以来、この考えが頭から消えることはありませんでした。

すぐにコーヒーかすを使って実験を開始しました。3年後の2015年、ついにコーヒーかすと植物ベースの再生可能な材料をかけあわせた新たな素材の製法を見つけたんです。

コーヒーかすを資源として再利用できるということを実証した最初の製品は、未来への可能性のある新素材でつくった古典的なエスプレッソカップです。2015年、Kaffeeform初となる一製品として発売しました。
テーブルの置かれたエスプレッソカップ&ソーサー

カフェフォルム エスプレッソカップ&ソーサー 14,90€

ーーカプチーノカップの重さは80gです。だいたいゆで卵と同じぐらいの軽さですね。

その軽さは私たちが開発した素材の成分からきているもので、人工的に軽く加工しているわけではないんです。カップを持つ手が疲れることはないし、テイクアウト用のカップにも最適な素材なので、とても気に入っています。
手に持ったカフェフォルム ウィドゥーサーカップ

カフェフォルム ウィドゥーサーカップ 15,90 €

ーーカップの耐久性はどのくらいなのでしょうか?

理論上は、永遠です(笑)。 一番古いものは創業時の2015年につくられたものですが、まだ使い続けています。何度も洗うと少し白っぽくなって、表面がざらざらになることもありますが、天然素材なので体への害はありません。最近では、古いカップから新製品をつくるリサイクルシステムの構築を計画中です。

いい創設者には、クレイジーさが必要

ーー 商品開発とビジネスの発展に3年かかったとのことですが、とくに苦労したことは何ですか?

素材の開発です。アイデアは在学中に浮かんで、最終試験のプロジェクトとして選びました。コーヒーかすを耐久性のある素材に変えて長持ちさせる方法や、加工して形成する方法を見つけるまで、多くの専門家や科学者と何度も話し合いましたね。

そして、資金集めや会社設立は自分でしなければいけなかった。デザインスタジオで働きながら時間を見つけて、開発研究と実験を続けました。その経験もビジネスの発展に影響を与えました。たった1ユーロでKaffeeformを設立し、今日まで外部資金なしの自己資金のみで賄っています。
ソーサーの刻字

ーー多くの困難に直面しながらも、なぜ情熱を持ち続けられたのでしょうか? 

私はただずっと自分のアイデアを信じ続けました。多くの人にクレイジーなアイデアだと言われましたが、結局のところ、すぐれた創設者になるには少しクレイジーである必要があると思っています。

私は自分のアイデアを自分で支持し続けました。最終的には、すべての批評家が間違っているということを証明できたと思っています。

障がい者支援施設らとタッグ 社会事業として地域を活性化

ーービジネスの拠点にベルリンを選んだのはなぜですか?

ベルリンは私の地元で、学業を終えた後、仕事で戻ってきていました。ここには友人や仕事関係のつながりの両方があったんです。

それだけではなくて、自分のビジネスを始めるのに最適な場所だとも感じていました。常に多くのアイデアやビジョンで賑わっていて、それを実現する自由があります。

そしてもっとも重要なのは、ベルリンには独自のコーヒーシーンが成長し、発展していることです。それは強力なコミュニティで、日々さまざまなことが起きています。新しいコーヒーショップが次々とオープンし、多くの人たちがおいしいコーヒーを楽しんでいる。私たちには、彼らのコーヒーかすが必要だったのです。
カフェフォルム ウィドゥーサーカップを持っている女性

ーー自社の事業を”社会事業”と表明していますが、コーヒーかすのリサイクルだけでなく、最初から地域の循環の輪をつくることも考えていたのですか?

その通りです。私たちには企業として社会的責任があると信じています。できるだけ生産拠点を地元に保って還元し、地域と社会の構造を強化したいと考えていたのです。

その取り組みのひとつとして、創業当初から自転車宅配業者と障がい者のための作業所「モザイク - ベルリン」と協力しています。自転車宅配業者がベルリンから生まれるコーヒーかすを集めて、「モザイク - ベルリン」へ運びます。そこでは手作業でコーヒーかすを乾燥させて、品質管理と出荷準備を担当してもらっています。

私たちは、”適切な”コーヒー焙煎業者とパートナーを組み、コーヒーかすを入手しています。その定義は貿易と加工(焙煎)に透明性があり高品質、そして農家にはフェアトレードの価格をかなり上回る金額を支払っていることです。

再利用を生み出すデザインの仕掛け

ーー多くの企業とも一緒にお仕事されていますよね。

Webショップや小売業者を通じて製品を購入してくださる顧客と同じくらい、企業顧客は重要だと考えています。

企業は従業員やパートナーへの贈り物として、企業ロゴが入ったもののオーダーも可能です。コーヒーショップや小売店は、顧客のロイヤルティを高めるために、自社のオリジナルバージョンの販売ができます。

ーー代表的なコーヒーショップを教えてもらえますか?

たとえば「Isla Coffee shop」はもっとも近いパートナーのひとつであり、ベルリンにあるゼロ・ウェイストコーヒーショップですね。

ーーカフェのオーナーやお客さんからポジティブなフィードバックはありましたか?

みなさんとても気に入ってくれています。ユニークな商品なので、会話のきっかけにもなっているようですね。壊れることもなく、使用感もかなりいいという声をいただいています。

ーー人とのつながりの輪もつくっているんですね。多くの人たちがKaffeeformを支持する理由は何だと思いますか?

持続可能性とデザインが密接に関係していることだと信じています。現代では、環境面や持続可能な側面を考慮しない製品設計は存在しません。デザインは、人々の日常生活に持続可能性の波をもたらします。

私たちは、持続可能な製品が適切に設計されていることを示し、リソース(消費方法)を再考するためのインスピレーションを与えたい。再利用と再利用の循環的なアイデアが、ビジネスの中核にあるのです。
白壁を背景に撮られたカップとソーサー

ーー世界的に持続可能な製品の需要が高まっていますが、今後は海外展開も考えていますか?

現在の主な市場はドイツ、そしてヨーロッパ経済圏全体、そしてスイスです。私たちの会社は非常に小規模ですが、ゆっくりと着実に成長しています。しかし、まだグローバルな需要を満たすための事業と生産を拡大できる立場にありません。まずはヨーロッパで事業を確立する必要があります。将来的にはより多くの市場を追加しこうと考えています。
※掲載している情報は、2020年6月24日時点のものです。