ファーフリー(Fur Free)とは エコファーとの違いや宣言をしたブランドを解説

ハンガーラックにかけられた女性もののシャツ

Photo by Aviv Rachmadian on Unsplash

毛皮を用いたラグジュアリーファッションがトレンドだった時代がある。だが、いまやファーフリーが広く意識されるようになった。動物愛護と環境保護意識は、ファッションのトレンドに大きな影響を与えはじめている。エコファーとの違いや認証制度、ファーフリー宣言をしたブランドなどを解説する。

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2022.03.29
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

ファーフリーとは「毛皮を扱わない」思想

ファーフリーとは、動物福祉と環境保全を意識した思想である。ファッションに動物のリアルファーを使わない考え方だ。

かつてラグジュアリーファッションの代名詞でもあったリアルファーだが、ファーフリーの登場が風向きを変えつつある。ファーフリーはファッションのために動物を犠牲にしてはならないという方針だ。野を駆けめぐる動物であろうと、人工飼育された動物であろうと、アニマルライツとしてその対象は変わらない。

ファーフリーは環境保護に関しても大きな意味を持っている。リアルファーの生産はファー工場で飼育されている動物の排泄物をはじめ、有害な成分が流れだし、土壌汚染を引き起こす。

同時に動物の飼育において敷地・飼料・エネルギーなど資源を必要とするため、リアルファーはエコロジカルフットプリントの観点からしても環境に適切とは言い難い。(※1) エコロジカルフットプリントとは、人間の社会生活が地球環境に及ぼす影響を示す数値だ。詳しくは以下の記事を参照してほしい。

地球資源への依存度を測る指標 日本と海外の「エコロジカルフットプリント」の状況とは 

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エコファーとの違い

動物の犠牲を必要とするリアルファーを遠ざけたからといって、ファッションの幅が狭まるわけではない。リアルファーを使わないブランドではエコファーをもちいるようになった。

エコファーとはおもにアクリル繊維からつくられた素材である。リアルファーと異なり、動物の犠牲を必要としない。

そのため、ファーフリー思想に重点を置きながらもファッションの幅を狭めないエシカルな素材として、ファッションブランドの間で広く使われるようになった。

ファーフリーの認証制度

リアルファーの取り扱いに反対する国際連盟「Fur Free Alliance(FFA)」では、リアルファーを扱わないブランドへの認証制度を展開している。「Fur Free Retailer」と呼ばれる認証制度だ。

認証を受けたブランドはFFAやJAVA(動物実験の廃止を求める会)を通じ、「ファーフリーブランド」として会員や支持者に広められるシステムだ。また、認証を受けたブランドに限って承認ロゴマークを自由に使えるようになる。

ブランドがファーフリーの方針をとっている事実を広く周知できるとともに、ファーフリーに賛同する人々が思想にマッチするファッションアイテムを手に入れやすくなるというメリットも生じる。

なぜファーフリーが重要なのか?

ファーフリーの思想は広がり続けている。残酷な一面を否定しきれない方法でつくり出されるリアルファーは、動物愛護・動物福祉の観点からすればとうてい受け入れられない存在であり、遠ざけたいと考える人々がいても何ら不自然ではない。

前述のファーフリー認証を受けたブランドは2022年3月の時点で1,500を超え、なかにはARMANI(アルマーニ)、GUCCI(グッチ)、D&G(ドルチェアンドガッバーナ)など、世界に名だたるラグジュアリーブランドも含まれている。(※2)

ブランドだけではなく、アニマルライツを実践するファッションモデルがリアルファーの着用を拒否したことも大きな影響を与えるだろう。

影響が大きいといえば、ミレニアルズのインフルエンサーがファーフリーについて少なからぬ興味を持ち、実践している事実にも注目したい。現代、そして次代をになうミレニアルズの間で、ファーフリーの思想・意義が浸透する重要な契機だといえよう。

国家単位でもファーに対する意識が変わりつつある。法律で毛皮生産を禁止しようとする動きが生まれているのだ。すでにヨーロッパでは16の国で禁止されている。

ことに、ラグジュアリーファッションを語る上で外せないイタリアにおいて、リアルファーが禁止となる事実は見逃せない動きだろう。イタリアと毛皮禁止法案に関しては以下に詳しく解説している。

ファッション大国・イタリアで毛皮生産が禁止に ヨーロッパで16ヶ国目

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ファーフリー宣言をしたブランド

実際にファーフリー宣言をした著名ブランドと、各ブランドの環境への取り組みについて紹介する。

ラルフローレン(RALPH LAUREN)

ラルフローレンでは2006年からファーフリーに移行している。ファッション業界においてファーフリー思想の先駆けとなった。移行とともに1000点以上ものファーアイテムを国際救済イニシアチブに寄付している。

グッチ(GUCCI)

グッチもファーフリー宣言をし、2018年の春夏からファーの使用を中止した。ファーアイテムをチャリティーオークションに出品し、売り上げを複数の国際的な動物愛護団体へ寄付している。

ドルチェ&ガッバーナ(D&G)

イタリアを代表するラグジュアリーブランド「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」。2022年以降のコレクションで毛皮の使用を禁止すると発表した。環境負荷の少ないエコファーや持続可能な代替素材に切り替える方針を示した。

ドルチェ&ガッバーナが脱毛皮宣言 エコファーが創るラグジュアリーの新基準

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ファーフリーがファッショントレンドを牽引する時代に

ラグジュアリーのトップブランドをはじめとしたファーフリーの動きは、ミレニアルズの時代に突入し、さらに広がりを見せている。アニマルライツや環境保護、サステナブルが意識される現代では当然の動きかもしれない。

リアルファーがなくてもファッショントレンドは衰えを見せない。名だたるラグジュアリーブランドをはじめ、数々の優れたブランドがすでに証明してくれている。これからはファーフリーがファッショントレンド牽引の一翼を担うだろう。

※掲載している情報は、2022年3月29日時点のものです。

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