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米国環境保護庁(EPA)が、プラスチックの熱分解とガス化の規制強化を検討していることを発表。プラスチック処理方法の一環として知られる「ケミカルリサイクル」に関連する規制だ。これに対し、環境保護NGOと米国化学工業協会で意見が対立している。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
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アメリカの環境保護庁(EPA)は2021年9月、プラスチックの熱分解とガス化の規制強化を検討していることを正式に発表した。
プラスチックを熱分解すると、ガスなどの燃料を生成できることから、熱分解による油化やガス化は廃プラスチックのリサイクル方法として利用されている。しかしEPAでは、これらのプロセスが「ケミカルリサイクル」に関連すると指摘している。
ケミカルリサイクルとは、廃棄物に化学的な処理を行いリサイクルすること。ペットボトルの再利用や、廃棄食用油を石鹸にかえる際など、さまざまなリサイクルシーンで活用されている。
この動きに対して、国際環境NGO「Global Alliance for Incinerator Alternatives(GAIA)」は、廃棄物を減らすサーキュラーエコノミーの構築に向けた重要なステップになると評価している。
EPAはこれまで、ケミカルリサイクルやそのプロセスについて定義してこなかった。そのため、GAIAの地域コーディネーターを務めるデニス・パテルは、次のように述べている。
「ケミカルリサイクルは、サーキュラーエコノミーに貢献しないうえ、温室効果ガスが排出される問題がある。これまでのケミカルリサイクル技術に対する規制は不十分であり、公衆衛生と環境を守るためにはEPAの規制が緊急に必要だ」
一方で、エクソン・モービル、ダウ、デュポンをはじめとするエネルギー企業・化学メーカーが加盟する米国化学工業協会などの団体は、EPAの新規制案に反対。
同団体によると、化学物質のリサイクルではすでに連邦政府、州政府、地方自治体によって十分に規制されている。これ以上の規制は負担が大きく、リサイクル施設の拡大に影響を及ぼしかねないと主張している。
ドイツのアーヘン工科大学で化学プロセスについて研究しているラウル・メイスは、プラスチックとその廃棄処理について、次のように述べている。
「少量のプラスチックは常に必要とされるものであり、その廃棄物に対して責任をもって処理する方法を見つけることが重要だ」
我々の生活にはプラスチックがあふれている。そのため、今回の議論のように、プラスチックの適切な処理方法を探し求めることは大切なことだろう。
とはいえ、リサイクルを行うより、そもそもごみが出ないに越したことはない。消費者としても廃棄物の処理に責任をもち、プラスチックなどケミカルリサイクルするものは、できるだけ使用しないように心がけるべきではないだろうか。
※参照リンク
EPA might finally regulate the plastic industry’s favorite kind of ‘recycling’| Grist
https://grist.org/regulation/epa-might-finally-regulate-the-plastic-industrys-favorite-kind-of-recycling/
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