環境保全と地域活性の両立を目指す「エコツアー」とは 日本国内の3つの具体例

エコツアーは、近年注目されている観光スタイルの一つである。具体的にどのようなものなのか、その定義や目的について解説しよう。日本国内で高い評価を得ているエコツアーの具体例とともに、今後の課題についても紹介。エコツアーに関する知識を深めよう。

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2021.10.29
SOCIETY
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エコツアーとは

エコツアーとは、「エコツーリズム」の概念のもとで行われる旅行を指す。エコツーリズムとは、その地域特有の自然環境や歴史文化を体験しながら学ぶとともに、旅行先地域の自然や環境、歴史や文化の保全に対し、責任を持つという観光スタイルである。

従来、「観光」と言えば、その土地に出かけ、遊んだり食事をしたりするスタイルが一般的であった。エコツアーでは、観光客に対して、地域の自然や歴史・文化について、より深い知識・体験を提供する。観光客自身がそれを楽しみ、前向きに受け入れることで、環境保全と地域経済発展の両方を実現できるという仕組みだ。

世界的に見て、エコツアー・エコツーリズムという言葉が使われるようになったのは、1970年代だと言われている。その後、日本では、2007年に「エコツーリズム推進法」が制定。エコツアー導入に向けた取り組みが、各地域において活性化した。(※1)

ちなみに、エコツーリズムとよく似た言葉には、グリーンツーリズムやニューツーリズム、サステナブルツーリズムといった言葉がある。グリーンツーリズムは農村や漁村で農業や漁業を体験しながら、地域の人々との交流も楽しむツアー形式のこと。エコツーリズムやグリーンツーリズムのような、新しい形の旅行とそのシステムをニューツーリズムという言葉で表す。

サステナブルツーリズムは持続可能な観光を実現するための、各種取り組みを言う。特定の地域に多数の観光客が流れ込めば、その土地ならではの環境は汚染され、自然破壊につながってしまうだろう。こうしたリスクを低減するための考え方が、サステナブルツーリズムだ。

エコツアーの6つの定義

社団法人日本旅行業協会が定めるエコツアーの定義は、以下の6つである。

・旅行者の教育
・絶滅の恐れがある動植物の保護
・文化・歴史的環境保全への貢献
・専門ガイドの利用
・地元社会の利益
・ごみの削減と最小限のインパクト

エコツアーを実施するためには、観光客と観光客を迎える地域側が、ともに努力する必要がある。観光客が適切な知識を持たないまま、地域の自然環境を破壊したり荒らしたりすれば、観光資源の維持は難しくなってしまうだろう。動物や自然の保護についてルールを定め、それを観光客に積極的に伝えていく必要がある。

また、エコツアーの特徴の一つが、「専門ガイド」である。観光客だけでは見落としてしまいがちなその土地の魅力を、専門ガイドや専用ツールを通じて伝えることで、より深い学び・体験につながっていく。観光客の満足度にも大きく関わるポイントと言えるだろう。(※2)

目的は環境と経済の好循環

エコツアーの目的は、環境と経済の好循環だ。

地域経済活性化のために「観光業」は、非常に大きな柱の一つとなるだろう。しかし、その観光業が原因で、地域の自然や歴史、固有の文化が失われてしまうケースも後を絶たないのが現実だ。持続可能な地域経済を実現するためには、これまでの観光スタイルでは限界がある。

エコツアーなら、地域の自然や歴史、文化を「学ぶ」「体験する」という視点で、保護することにつながっていく。地域固有のファンが増えれば、観光収入の安定化にもつながるだろう。

エコツアーを推進する動きが活発化

エコツアーを推進する法律としては、2007年に成立した「エコツーリズム推進法」が挙げられる。この法律では、エコツーリズムを適切な形で推進するための、総合的な枠組みが定められている。同法律が施行されたのは、2008年4月のことだ。日本各地で、自治体主導のエコツーリズム推進全体構想が生まれている。(※3)

エコツーリズム推進法の施行から10年以上が経過したいま、その認知度は向上。中高年世代から自然と触れ合う子どもたち世代まで、広く注目されている。観光庁が発表するデータによると、コロナ禍以前の2018年には、年間3,000万人以上の外国人観光客が来日。日本の「自然・景勝地観光」や「自然体験ツアー・農漁村体験」に関心を示す人も多く、エコツアーの効果が表れていると言えるだろう。(※4)

今後の課題

これから先の観光業の要とも言えるエコツアー。とはいえ、まだまだ課題も多いのが現状だ。

・各地域で設立された評議会の継続的運営
・専門ガイドの確保と質の向上
・プログラムの魅力度アップ
・エコツアーそのもののさらなる認知度アップ

なかでも多く挙げられるのが、エコツアーに欠かせない「ガイド」に関する課題である。こうした課題に対応するため、環境省ではエコツーリズムガイド等養成事業を実施している。(※5)

日本国内におけるエコツアーの具体例

日本国内では、どのようなエコツアーが実施されているのだろうか。各地の事例を3つ紹介しよう。

黒潮実感センター/高知県幡多郡大月町

高知県西南端に浮かぶ柏島を「島が丸ごと博物館(ミュージアム)」と捉え、エコツーリズムを実施。自然を守り、実感し、人と海が共存できるようなプログラムを提供している。「里海」をキーワードに、海と山をつなぐ取り組みも高く評価された。地元林業関係者、ダイバー、漁業者が協力してエコツアーを提供し、地域活性化につなげている。(※6)

宮津市エコツーリズム/京都府宮津市

2008年に設立された宮津市エコツーリズム推進協議会が、天橋立と中山間地域の資源をつなぐための取り組みを実施。観光客は、天橋立とその周辺の自然のつながりを実感できる。人気観光地である天橋立にプラスして、周辺地域の里山や歴史をめぐるガイドウォークを楽しむことで、地域全体の魅力を再発見できるという魅力がある。(※6)

海島遊民くらぶ/三重県鳥羽市

資源の保全と持続的利用を目的に、自主ルールを策定。地元の環境に関する優れた知識はもちろん、おもてなしスキルにも優れたプロガイドによるエコツアーを実施している。エコツアーを通じて得た利益は、地元漁協に還元するなど、地域への還元システムを確立している。企業やNPOと連携したユニバーサルエコツアーや、学校と連携した環境教育プログラムも人気だ。(※7)

エコツアーで観光と経済の両立へ

エコツーリズムに基づいて実施されるエコツアー。日本各地で、人気ツアーが多く誕生している。実際にツアーに参加してみれば、これまでの観光にはない新しい魅力を発見できるだろう。

近年注目されているエコツアーだが、もちろんまだまだ課題も多い。より多くの人がエコツアーに興味を持ち、まずは参加してみることで、新しい時代の観光業がつくられていくだろう。

※掲載している情報は、2021年10月29日時点のものです。

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