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観光開発と環境保全を両立する「エコツーリズム」 推進のメリットや普及に向けた課題とは

持続可能性の考え方はさまざまな分野に取り入れられつつある。エコツアーもその一つだ。近年、環境意識の高まりとともに注目されているエコツアー。日本のエコツーリズムは諸外国に遅れていると言われているが、考え方そのものは数十年前からあった。エコツーリズムの可能性と課題を解説する。

2021.01.28

エコツーリズムとは

エコツーリズムとは、自然環境や歴史文化などの地域固有の魅力を地域ぐるみで伝えていこうとする観光にまつわる行動のこと。

環境省が主導となりエコツーリズムを進めるための枠組みを定めた「エコツーリズム推進法」の目的は、自然環境の保全、観光振興、地域振興、観光教育にある。観光の大衆化や大量の観光客が大挙して押し寄せるスタイルのマスツーリズムは、これまでさまざまな問題を引き起こしてきた。

その原因は自然と共生する理念が希薄であったこと。従前、観光は経済的に裕福で余暇を持て余した一部の特権階級のものであったが、第二次世界後の経済発展に伴って大衆化した。

それによって、観光客によるごみの放置や落書きなどが自然環境に悪影響を与えるようになり、このような問題は世界中で報告されている。

森を流れる川

Photo by Alexander Schimmeck on Unsplash

1970年代以降、少しずつ環境に対する国際的な危機意識が高まった。観光産業にも持続可能性の考え方が取り入れられるようになり、環境保全と持続可能性の概念が共有されることとなった。

現在のエコツーリズムは地元の人が地域資源の価値や大切さを理解することが環境保全につながるという考え方に基づく。それによってオリジナリティが高まり、地域社会そのものの活性化をねらう。

国からの支援を受けられる「エコツーリズム推進法」

日本のエコツーリズム推進法は2008年に、環境省や国土交通省、農林水産省、文部科学省が中心となって立法した。

エコツーリズムの推進に取り組みたい地域がNPOや協議会を組織しその構想を主務大臣に認定してもらうと、国から支援してもらえる。

それぞれの省庁で関連する予算を個別に組んでいる。地域の観光資源に関係する税の種類には、宿泊税や入域税、レンタカー税などがあるが潤沢とは言えない。

資金はその特性上、地域ごとに分散する傾向にありそれぞれの地域の自助努力が求められている。日本のエコツーリズムは国際的に遅れをとってきたが、近年、地域経済に貢献するエコツーリズムが根付きはじめている。

エコツーリズムのメリットと普及に向けた課題

滝を見物する観光客

Photo by Shlomo Shalev on Unsplash

環境省は、エコツーリズムの推進には次のようなメリットとして、「地域経済への貢献・地域イメージや地域住民の意識の向上」「ツアー参加者の意識によい影響を及ぼす」「推進地域に汎用性がある」「地域の自然環境や文化の保全に役立つ(※1)」の4つを挙げている。

他方、環境保全と経済活動を両立させようとするエコツーリズムは、次のような課題も包含する。

自然環境の保全と観光振興のバランスをとるのが難しい
観光客が増加するとごみや外来植物が持ち込まれるなど、地域の生態系が壊される可能性が高まる。

観光客の安全を確保するために車道や歩道がつくられると森林が伐採され、その地域に生息する動植物や昆虫の生息地域が狭まるといった悪影響も予想される。環境保護に力を入れすぎてルールを厳しくすると観光が成り立たなくなる可能性もある。

エコツアーを行うガイドの確保が難しい
エコツアーとは、自然の負荷がないツアーではない。ガイドが自然環境への影響を考えながら観光客とともに行動するツアーだ。環境負荷をできるだけかけることなくその地域ならではの魅力や特徴を伝えるには、ガイドの知識や経験は十分でなければならない。

しかし、エコツーリズムに関する国や専門機関によるガイドの資格認定制度はない。ガイドの質にもばらつきがあるとみられること、ガイドの高齢化や後継者不足も大きな課題だ。

現状と日本国内の具体例

東京都小笠原諸島

2011年、小笠原諸島が世界自然遺産に登録された。日本で4番目の登録となる。しかし、小笠原諸島のエコツーリズムはすでに1980年代からはじまっていた。

1989年には「小笠原ホエールウォッチング協会」が設立され、クジラへの過度な接近を防ぐルールづくりや、クジラに関する調査や研究が行われていた。

沖縄県西表島

西表島では1970年代にイリオモテヤマネコの保護を主張する研究者と開発を求める島民の間で対立が起きていた。

しかし、1992年に開催された地球サミット以降、環境保全と観光開発の対立を克服する手段としてエコツーリズムが注目されるようになる。1996年には「西表島エコツーリズム協会」が設立され、両者の折り合いがつけられた。

エコツアーに参加するには

エコツアーには次のようにさまざまな種類がある。ツアーの企画は旅行会社のほか、地域の宿泊業者、交通事業者、自治体などが行っている。

・国立公園などの原生的な自然のガイドツアー(その周辺でのトレッキングツアーやキャンプツアー含む)
・ホエールウォッチングや野鳥、ホタルなどの野生生物とのふれあい
・星空観察会や自然散策回などの観察会
・修学旅行など環境教育を主目的とした学校の活動
・田んぼの生き物調査や植林などの農林業の体験
・名所めぐりや里山ウォーキングなど自然や文化のガイドを聞きながら地域を歩く活動
・里山の管理・再生、古来の生活の知恵など地域の生活や文化を体験する活動
・外来生物の駆除、植生回復のボランティア
・自然の中でゆったり過ごす体験滞在型観光(※2)

※1 21世紀新しい観光のかたち エコツーリズム」(3)
https://www.env.go.jp/council/02policy/y024-03/mat_5-3.pdf
※2 エコツーリズムとは
https://www.env.go.jp/nature/ecotourism/try-ecotourism/env/5policy/pdf/2-1.pdf

※掲載している情報は、2021年1月28日時点のものです。

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