地域滞在型の余暇活動「グリーンツーリズム」とは 推進のメリットと地域別の事例

グリーンツーリズムに取り組む農村

農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむグリーンツーリズムは、地方の資源を活かしたファンづくりが地域活性化につながる取り組みだ。グリーンツーリズムの活性化には、特徴を理解して地域独自の魅力を伝えることが重要である。本記事ではそのメリットや事例、課題をまとめる。

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2020.12.31
SOCIETY
学び

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グリーンツーリズムとは

グリーンツーリズムとは、地域による農業漁業などの体験を通して、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより農村漁村の活性化を図る新たな観光のあり方をいう。平成4年農林水産省グリーンツーリズム研究会の中間報告(※1)によると「農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」と定義されている。

グリーンツーリズムは、海水浴や歴史的な観光地をまわる一般的な旅行とは異なり、農家や漁家が営む民宿での農泊、市民農園や田畑での農業・農村体験など都市住民と農村交流を目的とした観光・教育研修であることが特徴だ。

都会の人々がふだんの生活ではなかなか目にすることのない、地方ならではの価値や魅力に直接触れることで、日本が豊かな社会になることへの貢献が期待される。 

田園を貫く砂利道

Photo by Raquel Pedrotti on Unsplash

日本では平成28年、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」 (※2)で2020年の訪日外国人観光客の目標数を4.000万人とするとともに、訪日外国人旅行者の地方の宿泊者数7.000万人を目標とした。現在年々増加する訪日外国人に対し、農家民宿、古民家を活用した宿泊施設での農泊を推進している。

グリーンツーリズムと似た観光形態に「エコツーリズム」がある。エコツーリズムとは、地域にある自然の美しさや価値を伝えることで、持続的な環境保全を目的とした取り組みだ。地域活性化を目的としたグリーンツーリズムとはコンセプトが異なることに注意したい。

グリーンツーリズムのメリット

1.「交流人口増加」による農村や漁村の地域活性化

都市部からの観光客に農作業の体験や地元ならではの食事を提供したり、農山漁村の魅力を伝えることは、農村・漁村地域の基幹産業を活発化させることにつながる。とくに、グリーンツーリズムは主要な観光資源が少ない地域にとって、地域を訪れる「交流人口」を増やす機会になる。交流人口の増加により地域経済が拡大すれば、地域の伝統的な文化を継承しつづけることができる。

また、観光客に「地方の魅力」を届け、ファンを増やすことで、都市部からの移住者獲得につながったり、定住者から文化の担い手が見つかる可能性もある。このような地域活性化の一環として、各地で地域資源を活用した取り組みが盛り上がりを見せている。

2.農家や漁師の所得向上・経営安定化

グリーンツーリズムで多くの観光客を呼び込むことは、農家や漁師の仕事で生活を営む人々の経営安定化にもつながる。農業や漁業などの一次産業の利益は、自然災害や天候によって大きく左右されることが多いことから、観光客を受入れる農家・漁家の所得向上につなげる取り組みとしても有効だ。

グリーンツーリズム実施者の所得向上には、都会からの訪問者を宿泊させ、自ら生産した農林水産物や地域の食材を用いた料理を提供したり、農業・漁業の体験を提供する宿泊業”農泊”の役割が期待されている。

3.住民が地域の魅力を再発見する機会になる

観光客への周知や、体験メニューの策定の過程で生活文化を見つめなおすことは、地域の価値の再発見につながる。また、都市部の人々との交流を通して地域文化を楽しんでもらうことは、住民にとっての喜びにつながり、モチベーションの向上や充実感を得る機会となる。

少子化・高齢化が加速する地方では、農業や漁業の継承者不足やコミュニティ機能の低下などの課題がある地域も多い。地域の魅力を再発見し、その地域ならではの観光客の誘致に活用することで、新たな観光客向け施設をオープンすることができ、雇用を創出できるというメリットもある。

地域ならではのグリーンツーリズム取り組み事例

湖のそばに位置した田園

Photo by Sheraz Shaikh on Unsplash

愛媛県の事例

愛媛県農林水産部、愛媛県グリーン・ツーリズム推進協議会ではWEBサイト「えひめグリーン・ツーリズム」の運営を通して県全体の活動を支援・推進している。WEBサイトでは、愛媛県内を東予・中予・南予の3つのエリアに分け、農村体験やみかん狩りなど、愛媛ならではの観光プランの予約ができるようになっている。

また、それぞれのエリアにある農林漁業体験や産地直売所、交流の宿と郷土料理、四国八十八ヶ所のお寺や歴史建造物、地域に生きる方々など、地域資源を紹介している。愛媛では農林漁業者が、愛媛県事業「農山漁村体験ツアー誘客促進事業」を活用して、半額キャンペーンを実施中。

四国地方、中国地方、大分県、宮崎県からの観光客は、2020年8月1日から2021年3月15日まで何度でも観光メニューを半額で楽しむことができる。(令和2年12月28日(月)から令和3年1月11日(月)の間は、利用対象者を愛媛県在住の方のみに限定)

北海道の事例

北海道では令和2年までに、訪日外国人観光客500万人を目標に掲げてきた。取り組みの一環として、農村・漁村においてはこれまで農林漁業者が主体となった教育旅行の実施に加え、農林漁業者や観光事業者をはじめとした地域団体が連携し、地域ぐるみで観光客を受け入れる「農村ツーリズム」に力を入れている。

北海道のグリーンツーリズム情報は、北海道庁経済部によるWEBページにまとめられている。各地域のグリーンツーリズム活動団体は15におよび、それぞれの団体が公式ホームーぺージを作成していることからも、各地で熱を入れていることがわかる。広大な地形から、地域によって生活文化の異なる北海道ならではの取り組みだ。

富山県の事例

富山県は、平成15年3月に全国初となる「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」を制定。富山県は小さなエリアに海、山、川が凝縮しており、身近なところに緑豊かな自然や農山漁村が広がる県の地形や文化を活かしたグリーンツーリズムを推進している。

NPO法人グリーンツーリズムとやまは、富山県指定の交流地域活性化センターとして、さまざまな事業を行っている。「農のある暮らし」を3日間で体感できる「とやま帰農塾」や、約1週間滞在型の農林業や地域づくり活動に関するインターンシップ事業「とやま農山漁村インターシップ」など、地域ぐるみでの独自の活動を推進している。

都市部の観光客向けのガイドブックや、動画の活用など、観光PRにも力を入れていることが特徴だ。

埼玉県の事例

埼玉県庁農業ビジネス支援課が運営しているグリーンツーリズム埼玉では、「グリーンな農山村で楽しく!おいしく!」をコンセプトに県内団体の活動を推進している。WEBページではグリーンツーリズムの目的を「体験する」「買う・食べる」「泊まる」の3つに分類し、観光の目的を連動させることで、それぞれの資源活用の相乗効果を図っている。

埼玉県の活動は、果物狩りができる観光農園が充実していることが特徴だ。同団体では、観光農園経営者の方などを対象に、県内の観光農園の魅力をよりよく発信し、訪問客を増やすための「観光農園経営力強化研修」を実施している。

秋田県の事例

秋田県では、NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会を主体として「農村での交流拡大ブラッシュアップ事業」を推進。毎年県内の地方団体に農村における観光の専門家を派遣する取り組みや、農業や自然、地域文化体験などの魅力を発信するバスツアーを実施している。

youtubeでのグリーンツーリズムPR動画による周知や、フォトコンテストなど、SNSと連動したキャンペーンの実施にも力を入れている。

グリーンツーリズムの持続的な発展に向けた取り組み

グリーンツーリズム発展のためのミーティング

Photo by Christina @ wocintechchat.com on Unsplash

グリーンツーリズムは地域全体でのビジネス化とリピーターとなる観光客獲得が難しい現状にある。経済を拡大させるためには、旅の目的をひとつに絞るだけではなく、食や生活文化の体験、宿泊などさまざまなカテゴリーを楽しんでもらうことが重要だ。

現在日本でグリーンツーリズムを積極的に推進している地域では、推進を進める主団体が各団体の活動をまとめたり、宿泊や体験に申込できるようなポータルサイトを設けている。

ポータルサイトでアクティビティ毎に異なる切り口で地域の魅力を発信することが、それぞれの観光資源の相乗効果を上げることになり、「また訪れたい」「今度は新たな挑戦をしたい」というリピーター獲得にもつながる。

また、宿泊やツアーを実施する際には観光客にアクティビティの魅力を効果的にPRすることが必要となる。近年では地方団体や観光客受け入れ先の農家・漁家がそれぞれ、都市部の観光客向けにフェイスブックやインスタグラムなどのSNSを通して、活動の意義や活動内容の発信を行っているのを見受けられる。

一方で、グリーンツーリズムの企画をつくるにあたっては、仲間づくりや地域住民の理解が重要だ。観光客向けのものとは別に、地域住民に向けての情報発信も必要となる。また、地域での勉強会やワークショップを開催しながら受け入れ先のサービス向上を図る団体が増えている。

一時の観光客の受け入れだけではなく、持続的なクリーンツーリズムに向けた仕組みを取り入れることが、地域活性化のカギとなる。

※1 グリーン・ツーリズムの定義と推進の基本方向 https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/pdf/1siryou2_2.pdf
※2 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/

※掲載している情報は、2020年12月31日時点のものです。

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