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ISO(国際標準化機構)は、建物のカーボンニュートラルに関して、新しい国際規格を2022年に発表する予定だ。これまで曖昧だったカーボンニュートラルの定義と、ネットゼロとの違いを明確化し、グリーンウォッシュを防ぐことが狙いだ。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
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さまざまな分野の国際的な基準を定める「ISO(国際標準化機構)」が、建物のカーボンニュートラルを認証する国際規格を2022年に発表すると報じられた。
カーボンニュートラルとは、CO2排出量を抑制するための概念だ。CO2排出量と吸収量を同じにして、排出量を実質ゼロにすることを言う。
カーボンニュートラルという言葉は、これまで国際的に定義されていなかった。とくにネットゼロと混乱する人が多い。
国連によると、ネットゼロとは「新たな温室効果ガス(CO2)を大気中に放出しないこと」を指す。仮に排出しても、同じ量の温室効果ガスを植林などで吸収することで相殺する。
カーボンニュートラルとネットゼロのどちらも、可能な限りCO2の排出量を削減し、排出された分については吸収量で相殺することを言う。
日本では、経済産業省資源エネルギー庁のウェブサイトで、カーボンニュートラルとネットゼロをほぼ同義と説明している。またイギリス政府が設立した環境コンサルタント企業のカーボントラストは、カーボンニュートラルとネットゼロの違いを説明することは難しいと認めている。
このようにカーボンニュートラルの定義が曖昧だったことから、カーボンフットプリント(製品の製造から流通・廃棄までのライフサイクル全体を通したCO2排出量)について、根拠のない主張をする企業がいるなど、グリーンウォッシュの例が数多く見られている。
そこで、カーボンニュートラルの意味やネットゼロとの違いを明確にするため、今回の新しい規格を制定することになったという。
今回の規格制定で議長を務めるイアン・バーンによると、新しいカーボンニュートラルの規格が、建物のライフサイクル全体のCO2を対象とするか、まだ決定していない。どの時点からどの時点までのCO2排出量を考慮するかが、議論のポイントとなっている。
また木材を、CO2排出量より吸収量の方が多い「カーボンネイティブ」な素材としてみなすかどうかも、議論されている。多くの建築家は、木材に含まれる炭素をサプライチェーンの他の場所で発生するCO2排出量から差し引くことができると主張。
しかしバーンは、「木材に含まれる炭素を差し引くことはできない」とし、新規格ではこれを認めない可能性が高いと述べている。カーボンネガティブな素材とするには、使用した木材が再生されることを証明しなければならないという。
最近は、アメリカ・カリフォルニア州でリサイクルマーク利用の厳格化法案が可決されるなど、環境用語や表示の利用に関して見直しが進んでいる印象だ。
環境用語のなかには、人々にとって馴染みがないため、誤って使用されやすい言葉がある。そのような言葉は、グリーンウォッシュを助長しかねない。
それを防ぐためにも、定義の明確化が必要となるだろう。企業も消費者も、言葉の定義をきちんと理解し使用することが、サステナブルな社会実現のためには重要だ。
※参考
New ISO standard will create international guidelines for carbon-neutral buildings and products|Dezeen
https://www.dezeen.com/2021/09/17/iso-standard-international-guidelines-carbon-neutral-buildings/
The race to zero emissions, and why the world depends on it|United Nations
https://news.un.org/en/story/2020/12/1078612
「カーボンニュートラル」って何ですか?|経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html
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