ベルリン在住のイラストレーター・KiKiが、サステナブルな価値観に基づいたベルリンの暮らしをつづるコラム(月1日更新)。今回から「とりあえず、やってみよう!」という意気込みで新連載を開始。自身が育てたコンポストの土を使い、いよいよ畑で野菜を育てる。
KiKi
イラストレーター/コラムニスト
西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、…
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自作コンポストの下に広がるのが、今回の舞台になる友人のお庭
2020年年10月から執筆を開始した「日本の小さな村がベルリンにもあった」シリーズ。連載で筆者が感じた日本とベルリンのサステナブルな取り組みを紹介することによって、「読者の方々には日本に昔から根付いていたサステナブルな習慣の魅力に気づき、小さくても行動を起こすきっかけにしてほしい」と思いながら執筆していた。
しかしそれだけでなくこの連載は、実は筆者自身の生活にも、改めて強い影響を与えていたのだ。
始まりは、多くの方に読んで頂けた「Vol.6 自作コンポストなら材料選びから 愛情芽生える土の育成の一部始終」だった。容器や基材などの環境を工夫して一から準備し、愛情たっぷり込めて育てたこの土で、春になったら野菜を育てたいと考えるようになったのだ。
コンポストに取り掛かったのは、冬まっただなか。土ができあがった頃には気温も1、2度。吹きも降る。野菜を育てる環境に適していないのはわかっていたが、待ちきれずにリボベジに挑戦した。
育てるのは、自室の暖房近く。万全の環境とは言えないが、野菜たちは、たくましい成長を見せてくれた。その時の様子については「最終回 愛情で育てた自作コンポストでリボベジにチャレンジ!」に書いている。
リボベジに取り掛かると、今度は畑で種や苗の状態から野菜を育ててみたくなった。そんななか、友人とお茶をしながらリボベジ奮闘記の話をすると、「4月から私の庭で野菜を育ててみる?」と提案してくれたのだ!
彼女の庭は、筆者もふだんから見ている。コンポストの実験を始めた頃、窓の外の出っ張っている部分に容器を置いていたのだが、窓の下にはいつも彼女の庭が広がっていたからだ。
コンポストに挑戦していた頃は仲良くなる前で「あれはズッキーニやトマトに、あれは唐辛子かなあ。あの庭の野菜たちは野生的で生き生きしているなあ。行ってみたいな……」と眺めながらぼんやりと思っていた。その約半年後、まさかそこで野菜を育てることになるとは。
連載を続けるなかで、生まれた思いが筆者の現実世界での経験やできごとと一本筋がピンッと通ったようにリンクし、不思議なご縁がつながってきたのだ。
今回の記事からの数回で、「とりあえずやってみよう!」を合言葉に、とにかく始めてみることの魅力を伝えていきたいと考えている。
「畑をやる」「畑づくり」と聞くと、土の様子、気温や天気、植える野菜たちの相性などまで細かく考えて行うイメージがある。読者のなかにも、「畑をやってみたい!」と考えているけれど「難しそうだから……」と手を止めてしまっている人もいるだろう。
たしかに農業には難しそうなイメージがある。農家だった祖父も、温度を測ったり、毎日の天気を気にしていたり、繊細で細かい仕事をしていた。しかし、それは商品として出荷するための野菜だったからだ。植物は本来は、人の手を加えなくても、たくましくコミュニティを形成し、勝手に育っていく。その様子を、筆者は間近に見ながら育ってきた。
野菜も同じように、細かく手をかけなくても、のびのびとおいしく育ってくれるだろう。何より、植物の生命力を頼りにすれば「とりあえずやってみよう」という気持ちでもきっと大丈夫だ。
筆者が挑戦したいのは、自然の力を信じて、伸び伸びと自由に野菜たちが育つ畑づくり。「自然と共存して、そのおすそ分けをいただく」という感覚で取り組んでいきたい。
そう考えれば気負うプレッシャーもないし、たとえ失敗しても、「それが自然なのだ」と落ち着いて見守ることができる。改善したいことがあれば試行錯誤して、植物たちと一緒に解決していくスタイルで現在進行中だ。
何より「難しそうだから……」と頭で考えて何も行動を起こさないより、まずは行動してみて見えた課題を解決していく方が、よりリアルで勉強にもなる。味わい深く、奇想天外で楽しくもある。これは畑に限ったことではなく、人生も同じだと思う、というのが筆者の持論でもある。
Photo by KiKi
「自然と共存して、おすそ分けをいただく」ことのほかにも、小さな畑づくりを始めるにあたって、ルールを3つ決めた。それは、「新しく買わない・あるものを工夫して使うる・助け合い」だ。
ごみ問題など、地球環境を強く考えて生活していかなければ、未来につながらない現代。「ないのなら、新しいモノを買えばいい」という考えは、もはや古いと思う。
むやみに消費せず、いまあるものを活用し、人とのつながりと助け合いをしながら、どれだけクリエイティブに、新しいものや価値観を生み出せるかどうか。それが人にも地球にもやさしい、最先端な暮らしだ。実際、さまざまな企業の商品開発において「サステナブル」がトレンドになっている。
4月からは実際に友人の庭の一角で、このルールのもとに小さな畑を「サステナブルガーデン」と勝手に命名し、こっそりベルリンで始動し始めた。
その様子を、これから紹介していきたいと考えている。これもまた、筆者の気づきの記録と読者の気づきのきっかけとなったら、とてもうれしい。
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