ELEMINISTでは全5回にわけて、地球温暖化について網羅的に解説している『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』に書かれている内容について紹介。第3回目は建物と都市について。
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「エシカル」「サステナブル」「SDGs」──いまや、これらはライフスタイルからビジネスまでを語るうえで切っても切り離せないテーマだし、誰もが知識をつけることが求められている。
ここで取り上げるのは、すでに世界12カ国で翻訳されている『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン・編著 江守正多・監訳 東出顕子・訳)。
地球温暖化について網羅的に解説していて、誰もが簡単に理解できるわかりやすい内容になっているので、これから知識をつけようとしている人におすすめだ。また、さまざまな研究者たちの知識が盛りこまれているから、すでに地球温暖化について詳しい人が読んでも、たくさんの発見があるだろう。
ELEMINISTでは全5回にわけて、『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』に書かれている内容について紹介しようと思う。第3回目は建物と都市について。
地球温暖化という解決すべき大きな問題について、私たちの「衣食住」にポジティブな変化を加えれば、この地球規模の問題をいい方向に変えられるという「希望」を与えてくれる内容となっている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)をはじめ、世界22ヶ国、約70人の権威ある機関で幅広く学術的経験や専門的経験を積んでいる研究者たちによる、科学的根拠にもとづいたデータをもとに、エネルギーや食、自然など私たちの身近なテーマを切り口に解説。
それだけでなく、今後期待できる地球温暖化問題を改善する新しい技術についても紹介しているから、この問題と向き合うために読んでおきたい1冊だ。
気候変動について考えるとき、私たちは「建物」が与えている影響を忘れがちだ。空調システムや電気配線エレベーター、電化製品など、建物内では常にエネルギー消費が生じている。
気候変動についての政府間パネル(IPCC)によると、建物に関するモノやコトは世界のエネルギー消費量の約3分の1、世界の温室効果ガス排出量の約5分の1を占めているそうだ。ネットゼロな建物を目指す対策は多くあるが、たとえば、天候にリアルタイムに反応する「スマートガラス」を活用すると、冷房のエネルギー効率は23%向上、照明は35%向上されるとのこと(※本書より)。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により自宅で過ごす時間が増えたいま、家をテーマとしたサステナビリティを考えてみてもいいだろう。スマートガラスでなくても、家電や日用品など身近な製品にこだわるだけで無駄なエネルギー消費を抑える方法があるかもしれない。
Photo by Aleksandr Rogozin on Unsplash
エンパイア・ステート・ビルディングは、決して環境にやさしいビルを目指したわけではありませんでした。めざしたのは、高層ビルです。「世界一高いビル」の建設をめざした産業界の大物たちの競争から生まれました。わずか1年余りで完成し、1931年5月1日に正式オープンしました。
オープンのときは、ハーバート・フーバー大統領がワシントンD.Cから儀式的にスイッチを押してビルの照明をつけました。1972年までは「世界一高いビル」の称号を誇っていました。
スチール、花崗岩で表現された力の誇示と強大な力の象徴だったエンパイア・ステート・ビルディングは、今では建築環境のエネルギー効率を高める改修工事の象徴になっています。つまり、建物からどれくらいの暑さと寒さが逃げていくか、入ってくるか、どんな内部システムが居住者を冷暖房しているか、建物の照明はどうなっているかに対処するということです。
地球温暖化は、昼も夜も人類を収容する建物に目を向けなければ対策できません。世界全体では、建物はエネルギー消費の32%、エネルギー関連の温室効果ガス排出量の19%を占めています。米国では、建物のエネルギー消費は全米合計の40%以上です。建物は、電力網や天然ガス配管からエネルギーを引き出して建物内の空間を冷暖房し、照明器具で照らし、あらゆる種類の機器や機械を動かします。その消費エネルギーの80%もが無駄になっています。たとえば、照明や電子機器が使っていないのにオンになっている、建物外皮に隙間があって空気が出入りするといった無駄です。
21世紀に入った頃は、エンパイア・ステート・ビルディングは1日に4万戸の一戸建て住宅に匹敵するエネルギーを消費していました。民間、慈善団体、非営利組織のコラボレーションである改修プロジェクトは、その消費量の40%削減に乗り出しました。エンパイア・ステート・ビルディングは、440万ドル(4.7億円)のエネルギーコストを節約し、10万トン以上の温室効果ガス排出を回避することになります。
6,514個の窓は省エネの鍵でした。1,500万ドル(16億円)以上に相当する無駄とお金を節約するために、窓の改造は現場で行われ、既存の窓ガラスの間に断熱フィルムをはさみました——古いビルでも今やネット・ゼロに迫る改修が実現するようになりました。
山と渓谷社
DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法
3,080円
※2021.03.04現在の価格です。
文/松本唯人 編集/小嶋正太郎
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