廃棄物エネルギーはゼロウェイストを妨げる? 私たちに希望を与えてくれる「地球温暖化の教科書」 vol.1

地球温暖化の教科書

ELEMINISTでは全5回にわけて、地球温暖化について網羅的に解説している『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』に書かれている内容について紹介。第1回目はエネルギーについて。

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2021.03.11
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「エシカル」「サステナブル」「SDGs」──いまや、これらはライフスタイルからビジネスまでを語るうえで切っても切り離せないテーマだし、誰もが知識をつけることが求められている。

ここで取り上げるのは、すでに世界12カ国で翻訳されている『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン・編著 江守正多・監訳 東出顕子・訳)。

地球温暖化について網羅的に解説していて、誰もが簡単に理解できるわかりやすい内容になっているので、これから知識をつけようとしている人におすすめだ。また、さまざまな研究者たちの知識が盛りこまれているから、すでに地球温暖化について詳しい人が読んでも、たくさんの発見があるだろう。

ELEMINISTでは全5回にわけて、『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』に書かれている内容について紹介。第1回目はエネルギーについて。

『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』とは?

『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』の表紙

地球温暖化という解決すべき大きな問題について、私たちの「衣食住」にポジティブな変化を加えれば、この地球規模の問題をいい方向に変えられるという「希望」を与えてくれる内容となっている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)をはじめ、世界22ヶ国、約70人の権威ある機関で幅広く学術的経験や専門的経験を積んでいる研究者たちによる、科学的根拠にもとづいたデータをもとに、エネルギーや食、自然など私たちの身近なテーマを切り口に解説。

それだけでなく、今後期待できる地球温暖化問題を改善する新しい技術についても紹介しているから、この問題と向き合うために読んでおきたい1冊だ(ELEMINIST SHOPで取り扱い中)。

長期的な視点を養える「エネルギー」セクション

『DRAWDOWN ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』の「エネルギー」セクション

「エネルギー」のセクションでは、化石燃料のエネルギー生産にとって代わる技術と既存の主要エネルギーから再生可能エネルギーへの転換に向けた戦略にスポットライトが当てられている。

さまざまな国や地域、企業がカーボンニュートラルの実現を目標に掲げるなか、カーボンオフセットのような目先の問題解決だけでなく、あくまでもそれぞれが独自に取り組めるような再生エネルギーの技術開発など、サステナブルな解決策を見いだすことが求められていることがわかるだろう。

なかでも、地球温暖化対策や気候変動対策に欠かせない「長期的な視点を養う」という意味において、廃棄物エネルギーについて言及している筆者の主張は非常に重要なポイントになるはずだ。

次の世代にクリーンな地球を引き継げるのか──。私たちは世代を超えた視点で当事者意識を持って、このテーマに向き合っていく必要があるだろう。

世界中の廃棄物エネルギー施設で起きていること(*本文から引用)

排出されるガスの様子

Photo by Viktor Kiryanov on Unsplash

これ(=廃棄物エネルギー)をソリューション(解決策)と呼ぶ人もいれば、ポリューション(汚染)と呼ぶ人もいます。これは間違いなく後者です。ここでは、無駄の多すぎる社会のためのあくまで移行戦略として廃棄物エネルギーを紹介します。

『ドローダウン』には、私たちが「後悔する解決策」と呼ぶ解決策がいくつかあり、これもそのひとつです。悔いを残す解決策は、総合的な二酸化炭素排出の削減には貢献します。ただし、社会や環境が負うコスト(犠牲や代償、費用)は有害で高くつきます。

本書には橋渡しの解決策として廃棄物エネルギーが含まれます。それは短期的には私たちが化石燃料から脱する助けになりますが、クリーンエネルギーの未来の一員ではありません。最先端の焼却設備はあっても(多くはそうではない)、廃棄物エネルギーはほんとうにクリーンで無害なわけではありません。

スコットランドのダンフリースにあるスコットジェンガス化焼却炉は先進施設のはずでしたが、英国内で最悪の汚染源でありダイオキシン排出源であることが判明しました。英国政府は2013年にここを閉鎖しました。ダイオキシン放出を完全に排除することは技術的には可能かもしれませんが、現実には測定するとダイオキシン許容限界に違反しているという事態が世界中の廃棄物エネルギー施設で起きています。

したがって、廃棄物エネルギー施設に、特に最高水準を満たさない既存の施設に反対する理由はたくさんあります。しかし、私たちがこれを後悔する解決策に入れる理由はもうひとつあります。それは廃棄物エネルギーが埋立地も焼却炉もまったく必要ない廃棄物ゼロを達成する方法の出現を妨げる恐れがあるということです。

山と渓谷社

DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法

3,080円

※2021.03.04現在の価格です。

文/松本唯人 編集/小嶋正太郎

※掲載している情報は、2021年3月11日時点のものです。

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