1960年代にアメリカで始まったフードドライブが日本でも広がりを見せている。フードドライブは困難な環境にいる人々に安心を届けられることに加え、フードロス削減にもつながる助け合いの輪だ。農林水産省をはじめ各自治体も本腰を入れてアナウンスを行い、一般家庭でも参加しやすい環境を整え始め
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
「フードドライブ」とは家庭で余っている食品や飲料を持ち寄り、必要とする人々に寄付する活動である。「ドライブ」は寄付を意味する。寄付先は地域の福祉団体をはじめ、支援を必要とする施設が多い。発祥のアメリカでは、1960年代から盛んに行われており、現在日本でも多くの人々や自治体が注目している。
消費期限が一定期間以上残っていることや密閉されていることなど、寄付品に対する条件はあるが、寄付する人の参加資格はとくに設けられていない。家庭で生じた余剰食品を届ける意思さえあれば、だれでも気軽に参加できる。集められた飲食品は、自治体やNPOを通じて必要な人のもとへ届けられる仕組みだ。
Photo by 🇨🇭 Claudio Schwarz | @purzlbaum on Unsplash
フードドライブは困難な環境にいる人々を支援する目的のほか、フードロス(食品ロス)を減らす効果も期待されている。フードロスが深刻な環境問題につながる事実は多くの人が知るところだ。フードドライブに参加することにより、一般家庭から気軽に環境問題改善へ協力できる意味は大きいと言えるだろう。
似た性質を想起させる活動の一つとして、「フードバンク」もよく知られている。フードバンクはフードドライブとの親和性、協調性が高い活動だ。発祥はやはり1960年代のアメリカである。
フードバンクの活動内容はフードドライブと変わらない。余剰食品を困難な環境にいる人々へ届けることだ。フードロスの削減へ結び付く一面もフードドライブと同様である。
両者の大きな違いは参加対象だ。フードドライブの参加者が一般家庭の人々であることに対し、フードバンクは企業が参加する団体である。なお、企業には農家も含まれる。
フードバンクでは一般家庭よりも多量の寄付が行われるため、輸送の問題が生じがちだ。それに対し、農林水産省が輸送費を補助しているが、フードドライブでは、送料や交通費は、各家庭で負担する。
また、フードドライブと違うもう一つの点は、消費期限が過ぎてしまった未使用の食品や食材の再生利用も活動内容に組み込んでいることである。消費期限の問題で寄付が難しい状態になった飲食品を原材料にして、飼料や肥料に再生するのだ。フードロス解消の一助だけではなく、再生利用事業者の活躍の場を生み出す効果もある。
Photo by Fabiola Peñalba on Unsplash
農林水産省が本腰を入れたことにより、各自治体でもフードドライブに対する意識の高まりと取り組みへの熱意が高まっている。
東京都では数多くの自治体がフードドライブを手がけている。自治体が環境イベントを主催し、訪れる一般家庭の人々が気軽に寄付できる環境を提供し、啓発につなげている。また、フードバンク普及のため、食品を取り扱う企業がフードバンク団体と交流する「フードバンクマッチングセミナー」も行っている。
横浜市はフードドライブ普及のため、フードバンク団体と連携した活動を行っている。開催イベントでのフードドライブの実施や小売店店舗で気軽に寄付ができる環境づくりに前向きだ。また、フードドライブを実施したい市内の企業や学校に対し、のぼり旗や食品回収ボックスなどの必要な物品を貸し出している。
大阪市でもフードドライブに力を入れている。連携事業者の募集や市内施設におけるフードドライブコーナーの常設に積極的だ。また「食品ロス月間」の実施により、市民の意識が環境問題に向けられ、ひいてはフードドライブ認知の広がりへとつながっている。
ELEMINIST Recommends